※2018年1月配信記事を再編集したものです。
トヨタ株価「2年ぶりの高値」の理由
2017年12月30日、トヨタ自動車 <7203> の顧問で元代表取締役社長の豊田達郎氏が亡くなった。米国で「ジャパンバッシング(日本叩き)」が吹き荒れた1980年代、その背景にある日米経済摩擦問題を解決するためにトヨタ自動車(以下、トヨタ)が米GMと設立した合弁会社の社長を務めたのが豊田達郎氏だった。1990年代にトヨタの社長として環境問題にいち早く対応すべく「プリウス」の開発を始めたのも同氏である。1995年の東京モーターショーの参考出品車として展示された「プリウス」は新しい時代を象徴するモデルとして注目を集めた。
豊田達郎氏は「自動車業界のパラダイムシフト」を象徴する人物であったように思う。2018年1月、豊田氏への哀悼が号砲となったかのようにトヨタの株価が2年ぶりの高値を付けてきた。
そこで、トヨタ株が上昇した背景を探ってみよう。
新技術で米アマゾン、ピザハットと提携
米ラスベガスでは、毎年1月に世界最大級の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー2018(CES)」が開催される。CESはIoTやドローン、AR・VRなど電機系の新しい技術を発表するイベントなのだが、2018年のメディアの報道ぶりを見ると、まるでモーターショーのようだった。
というのも、この年のCESでは各国の自動車メーカーの新技術の発表が相次いだためだ。トヨタも例外ではなく、自動運転技術を活用したモビリティーサービス専用のEV(電気自動車)を発表した。「イー・パレット」と名付けられたそのEVは宅配サービスや物販、ライドシェア、医療サービスなど多目的に利用することが可能であるという。
トヨタは「イー・パレット」の実用に向けて、米アマゾンやピザハット、中国ライドシェア大手の滴滴出行などと提携し、2020年代前半のサービス実証を目指すとともに、東京五輪・パラリンピックにもこうした技術を搭載した車両を投入する意向も示している。
東京五輪・パラリンピックといえばあと2年である。ここにきてトヨタ株が上昇した背景には、こうした新時代のテクノロジーへの積極的な姿勢が評価された側面も大きいといえそうだ。