経済は「生き物」のように新陳代謝を繰り返す。時代の変化とともに急成長する業界がある一方で、衰退する業界もある。近年はアマゾンに象徴される「消費のEC化」が加速する中で、家電量販店は「構造不況」に陥るのではないか、との見方もあった。筆者もその一人である。

もっとも、そうした見方とは裏腹に健闘している家電量販店があるのも事実だ。たとえば、業界2位のビックカメラ <3048> である。同社は今期の予想営業利益で過去最高益となる見通しを示し、株価も年初来の高値を更新するなど投資人気を集めている。今回は「構造不況」という逆風の中でも成長を続けるビックカメラの秘密に迫ってみよう。

家電量販店の業界は「再編の歴史」

ビックカメラ,株価
(写真=Thinkstock/Getty Images)

家電量販店の歴史は文字通り「再編の歴史」でもある。1970年代に業界トップだった第一家庭電器(第一家電)はバブル最盛期と崩壊を経て2002年に経営破綻した。1979年に同社に代わり業界1位となったベスト電器もその後は紆余曲折を経て現在はヤマダ電機 <9831> の傘下となっている。さらに1997年にベスト電器を抜いて家電量販店の売上高で日本一を達成したコジマ <7513> も、2012年にビックカメラの子会社となっているのである。

ちなみに、現在の家電量販店の売上ランキングは、1位がヤマダ電機、2位ビックカメラ、3位ヨドバシカメラ、4位エディオン、5位ケーズホールディングス <8282> となっている。ビックカメラはコジマだけでなく2006年にPC関連小売大手のソフマップも子会社化している。こうしてざっと見ただけでも家電量販店は「再編の激しい業界」であることが理解できるだろう。

株価は年初来高値を更新する

冒頭でも述べた通り、近年は「消費のEC化」が加速する中で家電量販店は「構造不況」に陥るとの見方もあった。もともと「再編の激しい業界」ということもあり、どちらかといえば悲観的に見られがちな面があったことは否めない。しかし、現実にはビックカメラなどの業績はしっかりとしている。

具体的に見てみよう。10月12日、ビックカメラが発表した2017年8月期決算は、本業の利益を示す営業利益が1%減の219億円と会社予想の230億円を下回った。もっとも、第4四半期については29%の営業増益で、第3四半期の15%増益をさらに上回っている。インバウンドの免税売上や任天堂スイッチ関連などの売上増が寄与していると見られる。

さらに注目されるのは2018年8月期の予想である。それによると売上が5.0%増の8300億円、営業利益14.0%増の250億円、営業利益率3.0%が見込まれている。もし、今期の予想営業利益を達成すると、2016年8月期の220億円を抜き過去最高益となる見込みだ。

ビックカメラが期初に営業利益で2桁の増益予想を示すのは珍しいこともあり、10月13日の株価は31円(2.4%)高の1361円に上昇、さらに18日には1376円と年初来高値を更新している。

時代の変化に合わせて進化

筆者が実際にビックカメラの店舗に足を運び、まず驚いたのは生活家電を中心としたPB(プライベートブランド)がずらりと並び、お洒落なディスプレイでショーアップしていることだ。家電量販店もずいぶんと雰囲気が変わったものだと素直に感心してしまう。製品を見たり、手にとったり、実際に試したりできるのはリアル店舗ならではの楽しみ方であるが、そうした楽しみを満喫できる空間がそこにある。

ビックカメラはリアル店舗だけではなく、EC化にも積極的な取り組みをみせている。もともとビックカメラは、都心を中心に駅周辺等で展開しているのが特徴で、競合他社が郊外や地方のロードサイド、モールを主力としているのとは一線を画している。ただ、そのために利益率の高い冷蔵庫や洗濯機といった通販では買いづらい大型の生活家電の比率が低く、ECと競合するゲーム機等の売上比率が高いという問題点があった。その問題を解決する施策がPBとEC化だった。

ちなみに、2014年8月期と2017年8月期を比較すると、PB比率は1%から5%に、生活家電比率は25%から31%に、EC比率は8%から10%程度にまで高まっている。今後もPBとオムニチャネルで採算の改善を目指す。加えてコジマとの統合により、物流面で合理化のスケールメリットを発揮できることも採算の改善要因として期待される。

今年4月、ビックカメラは一部店舗でビットコイン(BTC)決済を試験的に導入し、その後すべての店舗でも使うことが可能となった。1会計につき10万円相当分までだが、BTC決済でもビックカメラポイントを10%もらえる。時代の変化を見据え、進化を目指すビックカメラの今後に注目したい。

平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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