2月2日、全国各地で牛丼の吉野家に大行列ができた。店舗によっては牛丼一杯食べるのに1時間待ちとなったほか、郊外でも駐車場待ちで店舗周辺の道路で渋滞が発生したほどだ。背景にはソフトバンクが自社のスマホユーザーに、吉野家の牛丼並盛が1杯もらえる「無料クーポン」を配布したことにある。

株式市場では多くの銘柄が年初来安値を更新する中で、吉野家ホールディングス(HD) <9861> が年初来高値を更新するなど、こちらでも吉野家は「人気化」している。果たして、無料クーポンは同社の業績を後押しする起爆剤になるのだろうか?

SNSで「#superfriday」の投稿が相次ぐ

吉野家,株価
(画像=ZUU online編集部)

ソフトバンクは自社のスマホユーザー向けの特典の一つとして「SUPER FRIDAY」を提供している。「SUPER FRIDAY」は毎週金曜日に全国の飲食チェーン店等で、商品が無料でもらえるクーポンをMMSで配信するキャンペーンだ。これまで吉野家の牛丼のほか、サーティワンアイスクリームやミスタードーナツなどで実施してきた。

さて、今月の「SUPER FRIDAY」は再び吉野家の牛丼が対象となったわけであるが、今回は25歳以下の学生は並盛り2杯を無料としたことでイベント性が一段と高まり、SNSでは「#superfriday」等で牛丼や大行列の画像が投稿されるなどの盛り上がりを見せていた。

ただ、前述の大行列や道路の渋滞は来店客だけでなく、地域住民にも迷惑をかけた一面もあったようだ。これを受けて、吉野家HDは公式Webサイト等で『「SUPER! FRIDAY」に関するお詫びとお願い』をリリース。混雑や渋滞について謝罪するとともに、対策も発表した。希望者には1週間使える無料引換券を配り、当日はクーポン利用以外でもメニューを牛丼、牛鮭定食、牛すき鍋膳等に限定することで混雑の回避に努めるほか、ドライブスルーでの販売を休止することも明らかにしている。

「無料クーポン」でも業績へ寄与するのか?

ところで、株式市場では吉野家HDが年初来高値を更新するなど人気化したわけであるが、実際問題として無料クーポンの「SUPER FRIDAY」は業績にどのような影響を及ぼすのだろうか?

ソフトバンクの「SUPER FRIDAY」がスタートしたのは2016年10月で、その第1弾が吉野家の牛丼だった。この時も話題になり全国の吉野家で行列ができた。筆者も30分ほど並んだが、無料で味わう牛丼は格別な美味しさだった。

その2016年10月における吉野家の既存店売上高は15.1%増で、客数は21.8%増、客単価は5.5%減だった。前月の9月は同2.8%減、1.3%減、1.4%減、翌11月が同0.8%増、0.9%増、0.1%減である。つまり、2016年9月、10月、11月の数字を比較すると既存店売上、来客数で明らかに10月の「SUPER FRIDAY」効果が認められるのだ。単価が下がったのは「ただ取り」客が多かったためと見られるが、それを差し引いても「SUPER FRIDAY」は消費者の吉野家に対する関心を高め、購買行動を起こさせるプロモーション効果を発揮したものと筆者は考えている。「 損して得とれ」はビジネスの王道なのだ。

ちなみに、その後現在に至るまで吉野家の月次の既存店売上が2桁も伸びたことはない。吉野家HD株を保有した経験のある人の中には、当然そうした事情も理解している人が少なくないことだろう。今月の「SUPER FRIDAY」による反響が、吉野家の業績期待をもたらし、株価を押し上げたとしても不思議ではない。

実際、外食チェーン店の株価は「既存店の月次の数字」に反応しやすい傾向がある。ペッパーフードサービス <3053> や日本マクドナルドホールディングス <2702> がその典型例だ。吉野家も同様で、筆者としても今月の既存店の数字がどうなるか気になるところである。

吉野家の今期の既存店売上高は3〜8月の上期が2.5%減だったが、下期の9〜1月は0.1%増とわずかながらプラスに転じている。11月は5.7%増、12月4.5%増、1月6.3%増とトレンドが上昇し始めており、2月が2桁増となれば株価にも良い影響がでる可能性が高そうだ。

「はしご定期券」の復活も期待したい

1月11日、吉野家HDが発表した2018年2月期の第3四半期(3〜11月)決算は売上が前年同期比4.1%増の1464億円、本業の利益を示す営業利益が同2.2倍の25億円となった。通期では売上7.1%増の2020億円、営業利益2.4倍の44億円を見込んでいる。

業績の柱の一つである吉野家では「牛丼」と冬の定番「牛すき鍋膳」のほか、朝食の時間帯の活性化策として「ハムエッグ定食」「釜揚げしらす定食」、夕食時の活性化策として「牛牛定食」「牛鯖みそ定食」などを提供しており、その効果で第3四半期の売上は0.7%増の735億円となった。

もう一つ、業績を牽引しているのが讃岐うどんのチェーン「はなまるうどん」だ。「はなまるうどん」の第3四半期の売上は14.0%増の203億円に達している。

牛丼好き、讃岐うどん好きの筆者にとって忘れられないのが「はしご定期券」だ。2017年9月〜10月に期間限定の300円で発売された定期券で、有効期間中は吉野家とはなまるうどんで何を食べても80円引き、しかも、はなまるうどんでは天ぷら一品が無料だった。筆者のささやかな要望ではあるが、「はしご定期券」は何としてでも復活して欲しい。何度も繰り返すが「 損して得とれ」はビジネスの王道なのだ。

平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。