はじめに
本連載では、人気銘柄の動向から株式投資の奥深さを伝えていく。
【第1回】は、国内外食産業の雄、吉野家ホールディングスだ。吉野家HDといえば老若男女に馴染み深い牛丼チェーンの旗手であるが、近年ユニークなマーケティングを行いSNS上で話題となった。SNSの活用やテクノロジーとどのように融合してゆくかは、もはやテック企業のみならず重要な戦略のひとつとなった。吉牛はいかにして「バズった」のか、売上高や株式市場への影響はどれほどだったのかを解説する。
無料キーポンで大行列が
2018年2月2日、全国各地で牛丼の吉野家に大行列ができた。店舗によっては牛丼一杯食べるのに1時間待ちとなったほか、郊外でも駐車場待ちで店舗周辺の道路で渋滞が発生したほどだ。背景にはソフトバンクが自社のスマホユーザーに、吉野家の牛丼並盛が1杯もらえる「無料クーポン」を配布したことにある。
同時期の株式市場では多くの銘柄が年初来安値を更新する中で、吉野家ホールディングス(HD) <9861> が年初来高値を更新するなど、こちらでも吉野家は「人気化」した。果たして、無料クーポンは同社の業績を後押しする起爆剤になったのだろうか?
SNSで「#superfriday」の投稿が相次ぐ
ソフトバンクは自社のスマホユーザー向けの特典の一つとして「SUPER FRIDAY」を提供している。「SUPER FRIDAY」は毎週金曜日に全国の飲食チェーン店等で、商品が無料でもらえるクーポンをMMSで配信するキャンペーンだ。これまで吉野家の牛丼のほか、サーティワンアイスクリームやミスタードーナツなどで実施してきた。
さて、今月の「SUPER FRIDAY」は再び吉野家の牛丼が対象となったわけであるが、今回は25歳以下の学生は並盛り2杯を無料としたことでイベント性が一段と高まり、SNSでは「#superfriday」等で牛丼や大行列の画像が投稿されるなどの盛り上がりを見せていた。
ただ、前述の大行列や道路の渋滞は来店客だけでなく、地域住民にも迷惑をかけた一面もあったようだ。これを受けて、吉野家HDは公式Webサイト等で『「SUPER! FRIDAY」に関するお詫びとお願い』をリリース。混雑や渋滞について謝罪するとともに、対策も発表した。希望者には1週間使える無料引換券を配り、当日はクーポン利用以外でもメニューを牛丼、牛鮭定食、牛すき鍋膳等に限定することで混雑の回避に努めるほか、ドライブスルーでの販売を休止することも明らかにしている。