「上下関係も、売上目標も、予算もない」「従来のアプローチの限界を突破し、 圧倒的な成果をあげる組織」--。

こんな惹句のビジネス書が売れている。12カ国語・20万部を超えるベストセラーになったフレデリック・ラルー氏の『Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness』だ。その邦訳『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版)も2700円と比較的高価にかかわらず、売れている。

「Teal」(ティール)とは「鴨の羽色」を意味する英語で、青緑色のことだ。同書が提案する「ティール型」組織とはどんなものなのだろうか。その背景には、米国の代表的な現代思想家として知られるケン・ウィルバー氏の提唱する「インテグラル理論」があるという。

ティール組織,管理職,経営者
(画像= Matej Kastelic/Shutterstock)

「意識のスペクトラム」をベースに

インテグラル理論は、様々な視点がある中で「どれが最も正しい」と考えるのではなく、それぞれの視点が認識している真実間の相互関係を理解することが大切とするものだという。ウィルバー氏は、インテグラル理論の基本として「意識のスペクトラム」という概念を説く。

スペクトラムは「分布範囲」ないしは「分布状況」という意味を持つが、人間の成長は肉体的衝動を行動論理にしている段階から出発して、やがては自己責任に基づいて行動する段階へ、さらには「瞑想」に代表されるような、個人としての存在から時空間を包み込む「目撃者」としての存在へと移行していく。インテグラル理論ではこうした過程を「意識のスペクトラム」としてとらえているのだ。

組織を5段階の色で表す

「ティール組織」の教科書とも言える著書を著したラルー氏は、この「意識のスペクトラム」をベースに「組織」を5段階の色で表している。

最も原始的な段階は「レッド」だ。レッド組織は例えてみればオオカミの群れのようなもので、特定の個人が力で支配する組織がこれにあたる。代表例として、マフィアやギャングの組織を挙げることができるだろう。

この「レッド」を包み込むような形で、第2段階の「コハク」がある。コハク組織は軍隊のイメージで、上意下達の明確な指示命令系統によって運営されている。レッド組織のように短絡的ではなく、中長期的な計画を重視する。また、特定の個人への依存が減少する分、多人数を統率することが可能となる。政府や教会など、階級的なヒエラルキーを優先する組織がこれにあたる。

さらに「コハク」を包み込むのが、第3段階の「オレンジ」だ。オレンジ組織は機械のイメージで、社長や管理職、従業員といったヒエラルキーを保ちながらも、成果を上げればそれが評価され、出世につながることになる。一方で数値管理が重視されるあまり、あたかも機械のように働かされる場合もある。

「コハク」を包む第4段階は、「グリーン」だ。グリーン組織は家族のイメージで、オレンジ組織よりもずっと人間らしく、各個人の多様性が尊重されることになる。風通しの良い組織運営が可能となる反面、メンバー間での合意形成に時間を要する場合もあり、万一合意が形成されない場合には、最終的に社長の意思決定に委ねるといった事態も生じる。

「ティール」はすべてを包含する組織の形

そして「グリーン」をも包含し、「レッド」を中心に置いた5層の同心円の外郭を描いているのが、他ならぬ「ティール」だ。

ティール組織は生命体に例えられるような組織で、メンバーは常に進化する「組織の目的」を実現し続けるために、互いに共鳴しながら関わり合っている。ティール組織の特性を象徴するのは、「崇高な目的」、「意思決定の分散」、「個人の全体性」、「自己管理」、「進化を続ける目的」といったキーワードだという。

組織づくりの実践では、一足飛びにティール組織をつくろうとしても難しい。ただ所属している組織の特性を客観的に分析するためには、このスペクトラムをもとにした色の考え方は役に立つ。的確な分析の先にこそ、的確な選択があるのだ。(ZUU online 編集部)