組織を考える
エグゼクティブは組織をまとめる立場にある。自身がプレイヤーとして能力を発揮することももちろん重要だが、それだけでは優秀なエグゼクティブにはなれない。ではどうすれば組織をまとめる力が身に付くのだろうか。
そのためには、まず組織の在り方、作り方を知る必要がある。当然理屈通りに事が運ぶとは限らないのだが、理屈を無視した暴走は組織を崩壊させる。組織を崩壊させる管理職には需要がない。
今回【第3回】で紹介するディール組織の概念は広く知られているが、それと同時に定評もある。今一度確認しておくと良いだろう。
「意識のスペクトラム」をベースに
「上下関係も、売上目標も、予算もない」「従来のアプローチの限界を突破し、 圧倒的な成果をあげる組織」--。
こんな惹句のビジネス書が売れている。12カ国語・20万部を超えるベストセラーになったフレデリック・ラルー氏の『Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness』だ。その邦訳『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版)も2700円と比較的高価にかかわらず、売れている。
「Teal」(ティール)とは「鴨の羽色」を意味する英語で、青緑色のことだ。同書が提案する「ティール型」組織とはどんなものなのだろうか。その背景には、米国の代表的な現代思想家として知られるケン・ウィルバー氏の提唱する「インテグラル理論」があるという。
インテグラル理論は、様々な視点がある中で「どれが最も正しい」と考えるのではなく、それぞれの視点が認識している真実間の相互関係を理解することが大切とするものだという。ウィルバー氏は、インテグラル理論の基本として「意識のスペクトラム」という概念を説く。
スペクトラムは「分布範囲」ないしは「分布状況」という意味を持つが、人間の成長は肉体的衝動を行動論理にしている段階から出発して、やがては自己責任に基づいて行動する段階へ、さらには「瞑想」に代表されるような、個人としての存在から時空間を包み込む「目撃者」としての存在へと移行していく。インテグラル理論ではこうした過程を「意識のスペクトラム」としてとらえているのだ。