(本記事は、菊地正俊氏著書『No.1ストラテジストが教える 日本株を動かす外国人投資家の儲け方と発想法』日本実業出版社、2017年12月10日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【関連記事 『No.1ストラテジストが教える 日本株を動かす外国人投資家の儲け方と発想法』より】
・(1) 外国人投資家は「どのような」日本株を「どれくらい」買っているか
・(2) トランプ氏、レイ・ダリオ氏――著名投資家発言から相場動向を読みとるには
・(3) 日銀の出口戦略「40年かかる可能性」も ポートフォリオにはボロ株ばかり残る?
・(4) フィンテック時代に銀行が生き残るカギ 駅前の地価が高い場所に本当に必要?
・(5) 外国人投資家が注目する「元村上ファンド」丸木氏が経営するアクティビストとは?

No.1ストラテジストが教える 日本株を動かす外国人投資家の儲け方と発想法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

外国人投資家の日本株の売買シェアは約7割

No.1ストラテジストが教える 日本株を動かす外国人投資家の儲け方と発想法
(画像=Thinkstock/GettyImages)

株価形成に影響を与えるのは、株式の保有ではなく、売買です。株式をいくら大量に保有していても、売買しなければ、株価への影響はありません。

近年、東証1部における外国人投資家の売買シェアは6~7割で推移しており、2割強が個人投資家です。「外国人投資家の売買シェアが高い」というと、回転売買の外国人投資家が多いような印象を与えますが、外国人投資家にはヘッジファンドやHFT(HighFrequencyTrade)も含まれる一方、長期保有のロングオンリーの投資家も多くいます。ただ、ロングオンリーとはいえ、大手外国運用会社は運用金額が大きく、1回当たりの注文金額が大きいので、売買代金は大きくなる傾向があります。

これに対して日本勢はといえば、2割強の個人に続き、公的年金による売買が反映される信託銀行の売買シェアは3%程度に過ぎません。また、事業会社の自社株買いは日銀のETFと並ぶ株式需給の安定要因になっていますが、その売買シェアは1%に過ぎません。

株式需給はゼロサムゲームで、誰かが売らないと、他の投資家は買えません。外国人が買い越し基調のときに、外国人投資家からは「国内投資家はなぜ自国株を売ってばかりいるのか」と聞かれることがありますが、それに対しては「あなたが買っているからだ」と答えたくなります。メディアなどでは、外国人投資家の大きな日本株売買を喧伝しながら〝外国人投資家にうまくやられている?といった報道がなされることがありますが、多くの外国人投資家が買い基調であれば、日本勢(とくに個人投資家)が売るしかないわけですから、結果としてそのようになっているだけだともいえます。

このように、日本の株式市場は、外国人投資家と個人投資家がキャッチボールしているような市場なのですが、完全にどちらかが買って、どちらかが売っている関係ではないことにも注意が必要です。というのも、個人投資家はIPOへの応募が多いので、IPOへの応募を考慮すれば、市場内取引データが示すほど売り越していないケースもあるからです。たとえば、2016年に個人投資家は市場内で3.3兆円の売り越しでしたが、IPO調整後は2.2兆円の売り越しでした。

私は外国人投資家から、個人投資家の動向以外に、事業会社の自社株買い、GPIFなど公的年金の資産配分、日銀のETF購入など、外国人にわかりにくい日本の株式需給に関する質問を多くもらいます。

日銀のETF購入は市場外で行なわれ、事業会社の自社株買いも市場から自ら買うことがある以外に、市場外取引や信託銀行経由で行なわれる場合があります。公的資金の多くの売買は信託銀行に含まれます。そうした日本の株式需給についての実態を年に1回ほど、長いレポートにまとめていますが、外国人投資家に好評です。また、年2回の欧米アジアの外国人投資家訪問を終えると国内機関投資家にその反応を伝えていますが、海外訪問中に他国の外国人投資家の日本株へのスタンスを聞かれることもよくあります。

ケインズは株式投資を美人投票にたとえましたが、投資家は誰もが他の投資家が何を考え、どんな投資行動を取っているか気になるのです。

著名な外国人投資家の発言から動向を読む

日本の機関投資家からも発言が注目されている著名外国人投資家が何人かいます。著名外国人投資家の予想もいつも当たるわけではなく、ポジション・トークだったりすることもありますが、一貫した意見や独特の切り口が相場を考えるうえで役立ちます。

私はツイッターでトランプ大統領の発言を見ていますが、最近株式市場に影響を与える発言が少なくなっています。一方、運用資産1500億ドル(約16.5兆円)を持つ世界最大のマクロヘッジファンドであるブリッジウォーターの創業者のレイ・ダリオ氏のコメントのほうが相場の方向性を見るのに役立つかもしれません。

2017年8月にレイ・ダリオ氏は、「リターンはあるが、リスクもある。リスクは上昇しているが、低リスクが織り込まれている」と述べました。また、ダリオ氏は、米国で株価が急落して不況に突入した1937年のような危機に陥るリスクがあると指摘しました。ダリオ氏は1937年のように、米国が経済・社会的に大きく分断されており、内部および外部のコンフリクトが高まり、ポピュリズムが台頭し、民主主義が脅されて、戦争も起こり得ると、トランプ大統領の政策に警鐘を鳴らしたのです。

ダブルラインという運用資産810億ドル(約9兆円)の債券ファンドの経営者であるジェフリー・ガンドラック氏も、そのマクロ的な見方が他の投資家から注目される著名投資家で、ビル・グロス氏に代わる新債券王と呼ばれています。

ガンドラック氏は2017年7月に、「金価格が転換点にきている。200日、50日、100日の移動平均をすべて上回ってきた。5年間の下落トレンドが変わった可能性がある」と述べた後、8月には「強気のドル年末予想のコンセンサスがこれほど間違っていたことはない。大きく売られ過ぎた後、小幅に上げた。こうした強気が残っているのは良いサインではない」と指摘しました。

世界最大の債券ファンドであるピムコの創業者だったビル・グロス氏は、経営権争いからピムコを辞めて、ジャナス・ヘンダーソンに移り、「ビル・グロスの投資見通し:いかに儲けるか」という月次見通しを会社のWebに掲載しています。

また、「ZeroHedge」というWebサイトでは、市場に影響を与えるさまざまなニュースに加えて、ヘッジファンド・マネジャーの見方などを知ることができます。ほかにも、英語が苦手な個人投資家であれば、日本語で書かれた「フィナンシャル・ポインター」というサイトが、内外の著名投資家や学者の見方をまとめてくれています。

菊地正俊(きくちまさとし)
みずほ証券エクイティ調査部、チーフ株式ストラテジスト。1986年東京大学農学部卒業後、大和証券入社、大和総研、2000年にメリルリンチ日本証券を経て、2012年より現職。1991年米国コーネル大学よりMBA。日経ヴェリタス・ストラテジストランキング2017年1位。インスティチューショナル・インベスター誌・ストラテジストランキング2017年1位。