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(画像=Freer / shutterstock.com ※2018年1月撮影)

目次

  1. 中国金融界のキーマン、アリペイ
  2. 銀行のイメージ悪化
  3. 銀行とアリペイの4つの差異
    1. (1) 資金の出処の違い
    2. (2) アリペイは銀行ではない
    3. (3) 監督管理当局が異なる
    4. (4) サービス提供の範囲の違い
  4. 衝突から共存へ、人民銀行の采配に注目

中国金融界のキーマン、アリペイ

中国アリババグループの支付宝(アリペイ)は日本でも知名度を増しつつある。そのイメージは、中国人訪日客とセットになった、インバウンド向け決済ツールだろう。

当初アリペイは、ネット通販首位・アリババの売り手と買い手の信用をつなぐ決済資金プールとしてスタートした。現在ではモバイル決済に留まらず、実に広範囲な金融活動を展開している。

2018年、「アリペイは銀行に取って代わるのだろうか?」と題する記事をニュースサイト「今日頭条」が掲載した。実現するかどうかはともかく、アリペイが中国金融界のキーマンになっていることに疑問の余地はない。

アリペイと銀行の動きを追ってみよう。

銀行のイメージ悪化

いつのころからははっきりしないが、中国人の銀行に対するイメージはどんどん悪化していった。銀行のサービス、収益、資金の安全、などの神話は大きく傷つき、人々は反感を募らせた。 銀行に寄せられた顧客からの投書を分析すると、手数料が高い28.1%、事務手順を知らない28.1%、事務の手順前後18.8%、合理的解釈ができない12.5%、服務態度に差がありすぎ12.5%、サービス効率の悪さ10.9%、カスタマーサービスに電話がつながらない9.4%、顧客の損失に無頓着6.3%、といった声が上がっているという。

アリペイの登場は、こうした銀行に不満を持つ個人客たちを喜ばせた。銀行のサービスをはるかに凌駕していたからである。

アリペイは、最初から決済の「簡単、安全、快速」の提供を考えて設計されていた。今やその利便性は圧倒的だ。上海のある日系スーパーでは、2017年末の段階でモバイル決済は全体の75%を占めた。残り25%を銀聯カードと現金決済で分け合っているという。

また小口金融、余額宝(MMF)など貸し借りもスマホ1つで自由自在だ。これは多くの人々にとって、新しい金融業のあり方に映った。

銀行とアリペイの4つの差異