(本記事は、ピョートル・フェリークス・グジバチ氏の著書『Google流 疲れない働き方』SBクリエイティブ、2018年3月16日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

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Google流 疲れない働き方
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

マインドフルネスの習慣で「フロー」に入りやすくする

普段からの習慣づけによっても、フローに入りやすいように心と体のバランスを調整することは可能です。

そのキーワードとなるのが「マインドフルネス」です。

近年、グーグルやフェイスブックなどが取り入れたのをきっかけに、アメリカで次々に導入され、日本でも注目されています。

マインドフルネスの効果は科学的に実証され、

・注意力・集中力を高める
・感情で行動することを抑える

などの、メリットがあるといわれています。

優秀なトレーダーはマインドフルネスを活用している

Google流 疲れない働き方
(画像=Benny Marty/shutterstock.com)

マインドフルネスは、今起こっている現実をそのまま受け入れる心の持ちようのことで、「瞑想」とほぼ同じだと考えて間違いないでしょう。

僕が最初にマインドフルネスと出会ったのは、モルガン・スタンレーで働いていた時です。モルガン・スタンレーといえば、世界的な金融機関で、大勢のトレーダーが日夜、金融商品のトレーディングを行なっています。トレーディングルームでは、株価や為替など、リアルタイムに変動するチャートがいくつものディスプレイに映し出され、トレーダーはそれらのデータを瞬時に分析し、売買しています。

トレーディングには膨大な金融知識や思考能力、経験が必要ですが、それだけで業績を上げられるわけではありません。

トレーダーにとって重要なのは、意外なことに「直感」だったりするのです。

特に優秀なトレーダーは、一つのチャートにとらわれるのではなく、マーケット全体の動きを直感的にとらえることができるのです。そうやってマーケットの流れをとらえた上で、ほかの人がやっていないような手を、誰よりも早く打ちます。

いろいろ調べていくと、圧倒的なパフォーマンスを出して成功している優秀なトレーダーの多くは、マインドフルネスを取り入れていることがわかってきました。

そこで僕は、トレーダーの教育カリキュラムの中に、集中、フォーカスのトレーニングを取り入れました。今でいうところの「マインドフルネス」です。といっても、「座禅を組んで、瞑想しろ」ということではありません。「落ち着いて深呼吸し、自分の周りの出来事を周辺視野で認識しましょう」といったことをトレーニングしたのです。

ちなみに、空手家の早野勇輝さんも瞑想を大事にしているそうです。戦う相手の攻撃にひるんだり、痛みを不安に思っていたら、相手に勝てません。どんな状態でも、冷静な判断で動くために心を整えているそうです。

ピョートル版マインドフルネス瞑想

瞑想にもいろんな手法や流派があって、厳密な手順を決めているものもあります。

でも、僕が考えるマインドフルネス瞑想は「こういう手順でしなければいけない」というものではありません。自分なりにいろいろなやり方を試行錯誤して、しっくりくるものを日常的に実践するのが一番でしょう。

僕がよく意識しているのは、「落ち着いて深呼吸し、自分の周りの出来事を周辺視野でとらえましょう」ということです。

一般的な瞑想では、手を楽に膝の上に置いて、リラックスして、目を閉じるか、もしくは少し目線を下げ、そして、呼吸に意識を集中させる、というものが多いようです。

僕は、それに加えて「周辺視野」というものを意識する方法も取り入れています。目をつぶったり、何か1点に集中するのではなく、全体に視野を広げてものを見ます。たとえば、山を見る時にその山頂を見るだけでなく、その裾野や周囲の雲など広い視野でとらえるような感じで、何か一つに集中するのではなく、意識を全体に広げて見ているような状態です。やってみるとすぐ自身の感覚が変わってくるはずです。

僕も満員電車や疲れた時に行ないますが、ほかの瞑想のように何十分と時間をかけなくても、短期間で、自分の心の状態が整うように感じます。

ほかに「ボディスキャン」という方法もあります。

深呼吸をしながら自分の体の感覚を、頭から足先まで、足先から頭まで、感じます。余計なことは考えずに、筋肉の感覚や呼吸を意識するのです。吸う息が体全体に回っていくことを感じることで、体の各パーツの緊張をとり、解放させていくことを目的としています。

・瞑想はどこでもできる

慣れてくれば、瞑想はどこでも、どんな時でもできます。最近、僕は歩きながらボディスキャンをしています。

背筋をしゃんと伸ばし、顎と下の筋肉を緩める。深呼吸しながら、体の感覚だけを感じ、頭の中を空っぽにして歩いてみてください。どこか1点を凝視するのではなく、視界に入ってくる情景を周辺視野で何となくとらえるようにします。

そうすると、面白いことが起きます。

たとえば、朝夕の通勤ラッシュの時間帯。大きな駅はものすごい人混みで、みんなピリピリしています。早く行かなければと焦って人混みをかき分けて進もうとすると、誰かにぶつかってしまってうまく進めなかったりするでしょう。

ところが、ボディスキャンをしながらゆっくり歩くと、抵抗なくスムーズに人混みに入り込み、人の流れに乗ることができるのです。そしてもちろん、満員電車など、他に何もできない時なども、恰好の「瞑想タイム」にすることができます。

・会議の前にも3分間瞑想する

グーグルでよくやっていたマインドフル瞑想の具体的な使い方を紹介しましょう。

ある地域の会議では、会議に入る3分間、必ず全員で瞑想の時間をとっていました。

これをすることで、会議への集中力が格段に違ってきます。

全員でやるのが難しければ、自分だけでやってもいいでしょう。

たとえば、会議や打ち合わせの予定があるのなら、時間ギリギリになって慌てて会議室に行くのではなく、マインドフルネスの時間をとるようにします。

椅子に座ってでも何でもよいですが、最低でも3分ほど瞑想する習慣をつけておけば、頭がすっきりするのが自覚できるようになってくるはずです。

グーグルでは、自分のヨガマットを会社に持ち込んで、疲れを感じたら、瞑想をはじめる社員もいました。無理して仕事を続けるよりも、リフレッシュして仕事に向かったほうが、よい結果が出るのは明白です。

ピョートル・フェリークス・グジバチ
ポーランド生まれ。2002年よりベルリッツにてグローバルビジネスソリューション部門アジアパシフィック責任者を経て、2006年よりモルガン・スタンレーにてラーニング&ディベロップメントヴァイスプレジデント、2011年よりグーグルにて人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。現在は独立し、プロノイアとモティファイの2社を経営。著書に『0秒リーダーシップ』(すばる舎)、『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』(SBクリエイティブ)。