(本記事は、ピョートル・フェリークス・グジバチ氏の著書『Google流 疲れない働き方』SBクリエイティブ、2018年3月16日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

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Google流 疲れない働き方
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

フロー状態に入ると生産性が2倍になる!

高いアウトプットを出すためにはどうすればよいか?

実は答えは単純で、「集中」すること。

人間の脳は、1度にたくさんのことを認識するようにはできていません。「今この瞬間」しか認識できないのです。

今ではない、過去、未来のことを思い浮かべると、あっという間に意識がそちらにいってしまう。横から話しかけられたり、仕事を言いつけられたりしても意識は揺れ動いて、集中が乱されてしまいます。

雑念に惑わされず、よそ見をせず、今この瞬間に集中することがアウトプットを上げるためには絶対に必要であり、それこそが究極の仕事術といえるでしょう。

「そんなのは当たり前だ、昔から『集中しろ』と言われるじゃないか」。そう言いたくなるかもしれませんが、こうした脳の働きが科学的な研究対象となり、成果やメカニズムが明らかになりつつあります。

職場での仕事に限らず、趣味や何かの作業に没頭していて、気づくと何時間も経っていた。そんな経験をしたことは誰にでもあるでしょう。

この状態のことを、心理学用語で「フロー」と呼びます。意識が最適化されて最高のパフォーマンスを発揮できるようになり、同時に心の充実感を感じられる。

「フロー」という用語の提案者、ミハイ・チクセントミハイ博士は、「 (フロー状態に入れば)どんなに難しいと思うことでも可能になる。我を忘れ、時間を忘れ、何か自分より大きなものに繋がっている感覚になる」と語っています。

フロー状態に入った人間の出すパフォーマンスは圧倒的です。

「フロー」を学際的に研究しているシンギュラリティ・ユニバーシティのFlow Genome Projectによれば、フロー状態に入ることで、

・創造性・課題解決能力は4倍になる
・新しいスキルの学習スピードが2倍速になる
・モチベーションを高める5つの脳内物質(ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン、アナンダミド、オキシトシン)が放出される
・痛みや疲労を感じなくなる

としています。辛い辛いと感じながら長時間働いていては疲れますが、フロー状態に入ることで「疲れずに」「短時間で」「高いアウトプット」を得られるようになるのです。

日本ではフローというと、以前はアスリートが大きな結果を出す時の状態として紹介されることが多かったのですが、現在では、ビジネスでも注目されています。

たとえば、マッキンゼーの調査によれば、経営者がフロー状態を経験することで、その会社は5倍の生産性を発揮できるようになるという結果も出ています。要はフロー状態ですごくポジティブなエネルギーを出しているから、社員も共感でき、経営もよくなる、ということです。

したがって、大胆な価値・結果を生み出すためには、個人レベルだけでなく組織レベルでもフロー状態が不可欠です。

また、フロー状態の効果は、その場限りの短期的なものではありません。ハーバード大学のテレサ・アミアブル博士の研究によって、「フローに入った次の日の創造性はさらに高まる」ということがわかってきました。フローには、長期的に創造性を高める効果があるのです。

1日1時間30分フローに入れれば、生産性は2倍になる

Google流 疲れない働き方
(画像=Stokkete/shutterstock.com)

いいことずくめのフロー状態ですが、いったんフロー状態が途切れると、戻るには最短でも15分間かかることもわかっています。

これは皆さんも経験的におわかりだと思います。せっかく「ノって」仕事をしているのに、別の仕事を言いつけられてリズムを崩されるということはよくあります。

プログラマーなどをはじめとした現代の知識労働者は、1日のうち30~50%は邪魔の入らない時間を持つことが理想だとされています。

しかし、これも皆さん普段感じられていることでしょうが、そんなふうに集中できる時間はなかなかとれていないのではないでしょうか。

Flow Genome Projectのスティーブン・コトラー博士の研究によれば、平均的なビジネスマンは1日のうち5%程度しかフローに入っていないそうです。1日の勤務時間が8時間だとすると、30分弱しかフロー状態がないということになりますね。いや、30分も集中できていないよ......という方も多いでしょう。しかも、米マイクロソフトの調査によると、人間の集中力持続時間の平均は、2000年には12秒だったのが、2013年には8秒になっているそうです。

スティーブン・コトラー博士は、仮に1日のうち15%(8時間勤務なら1時間半程度)、フロー状態に入ることができれば、5%の場合に比べて、「仕事の生産性は2倍に上がる」と述べています。

したがって、いかにして邪魔されずフロー状態に入れる状況をつくれるかが、私たちの生産性を高めるために大事なことになってくるのです。

ピョートル・フェリークス・グジバチ
ポーランド生まれ。2002年よりベルリッツにてグローバルビジネスソリューション部門アジアパシフィック責任者を経て、2006年よりモルガン・スタンレーにてラーニング&ディベロップメントヴァイスプレジデント、2011年よりグーグルにて人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。現在は独立し、プロノイアとモティファイの2社を経営。著書に『0秒リーダーシップ』(すばる舎)、『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』(SBクリエイティブ)。