(本記事は、岩田昭男氏の著書『キャッシュレスで得する!お金の新常識』=青春出版社、2018年7月15日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
「えっ、日本ではペイウェーブが使えないの?」
いま日本政府はキャッシュレス化を強力に推進しています。
東京オリンピックが開かれる2020年までに海外との"キャッシュレス格差”を少しでも縮めたい、日本にやってくる外国人観光客にお金を使ってもらいたいという思いなのです。
先日、オーストラリアに住む私の知人が日本に帰ってきて嘆いていました。
オーストラリアでは広く使われているキャッシュレスの決済手段である「Visa payWave(ビザペイウェーブ)」が使える店がほとんどないのだということでした。
2012年のロンドン・オリンピックでは、VISAが短期間に14万カ所の加盟店にペイウェーブの読み取り端末を配って、外国からやってくるカード利用客に対応しました。
それをきっかけに、イギリスをはじめヨーロッパはICカード時代に入ったといわれています。
日本でもようやく、フィンテック(FinTech=金融とテクノロジーを組み合わせた造語)の進展によってこれまでの決済のかたちが大きく変わり始め、キャッシュレス化の新しい波がいたるところに押し寄せています。
詣のお賽銭もキャッシュレスに?!
たとえば、初詣で、小銭を賽銭箱に投げ入れ、一年の無病息災を祈るという光景も、見られなくなるかもしれません。
お賽銭をスマホ決済や電子マネーで払える神社があるのです。
東京・港区の愛宕神社には普通の賽銭箱とは別に、初詣期間の特定の日に限ってだが、電子マネー専用の“賽銭箱”が置かれています。
2018年にはスマホ決済サービスによるお賽銭も可能になりました。
そこには
「楽天ペイでのお賽銭はこちら 楽天ペイアプリでQRを読み取りください」「楽天Edyでのお賽銭はこちら 使い方 壱、金額を入力し、確定ボタンを押す 弐、カードをタッチしてください」
といった手書きの説明が添えられています。
楽天ペイは2016年から楽天が始めたスマホ電子決済サービスで、スマホでQRコードを読み取り、金額を入力するだけ。電子マネーなら、読み取り機のテンキーに金額を入力し、楽天Edy(エディ)のカードをかざします。
使えるのは楽天ペイと楽天Edyだけで、ほかのスマホ決済サービスや電子マネーはNGです。なぜかというと、楽天の三木谷浩史会長兼社長が毎年、愛宕神社に初詣に来ているという縁からきています。
ほかに似た例として、茨城県にある鹿島神宮は三越伊勢丹グループのエムアイカードと提携した「鹿島神宮カード」を発行しています。
このカードを利用して貯まったポイントは神社のお祭りや文化財保護に寄付されます。
神社とクレジットカードのコラボレーションは、キャッシュレス化の進展を象徴する出来事のひとつといえそうです。
「現金お断り」のファミレスも登場!
最近ではファストフード店の多 くで電子マネーが利用できるようになっています。
たとえば、牛丼チェーンのすき家では楽天EdyのほかにQUICPay(クイックペイ)、iD(アイディ)、さらにはSuica(スイカ)などの交通系電子マネーが使えます。
吉野家はWAON(ワオン)だけだが、 ハンバーガーチェーンのモスバーガーでは楽天Edyのほかに、やはりSuicaを筆頭 にした交通系電子マネーが使えます。
さすがに“アメリカ生まれ”のマクドナルドはキャッシュレス化が徹底していて、iD、 楽天Edy、WAON、クイックペイ、nanaco(ナナコ)、さらにSuicaなどの交通系電子マネーと、ほぼすべての電子マネーに対応しています。
海外で使われているビザペイウェーブやマスターカードコンタクトレスなどのタイプA/B型の非接触型IC決済(日本では、ソニーが開発した非接触型ICカード技術フェリカを使った電子マネーが普及している。)の電子マネーにも対応する機能を搭載しています。
しかもマクドナルドは、電子マネーだけではなく、VISAやマスターカード、JCBなどに加えて、NTTドコモのdカードといったクレジットカードにも対応しているのです。
さらには「現金お断り」のレストランも現れています。
2017年11月に東京・中央区の馬喰町にオープンした、ロイヤルホールディングスが運営する実験店舗「GATHERING TABLE PANTRY (ギャザリング・テーブル・パントリー)馬喰町店」では、前述した楽天のEdyや楽天ペイ、Suica、nanaco、クイックペイなどの電子マネーと、クレジットカード決済に限られ、現金は使えません。
店内のテーブルにはiPadが置かれていて、注文はiPadで行います。食事が終わったらiPadの支払いボタンにタッチし、店員が持ってきた読み取り端末などを使って電子マネーやクレジットカードで支払いをすませる。
会計のためのレジはありませんし、現金を電子マネーにチャージすることもできません。
競馬場から馬券がなくなる日
街ナカなどでは電子マネーが使えるタイプの自販機が増えていますが、スマホの電子決済サービスに対応するものも出てきています。
伊藤園では2017年12月から中国の「We Chat Pay(ウィーチャットペイ)」と「LINE Pay(ラインペイ)」で決済ができる自販機の設置を開始しました。さらに同社は、2018年1月から、りそな銀行の一部の支店内にGMOフィナンシャルゲートと共同開発したマルチ決済対応自販機を設置。現金のほかにVisaデビットカードでお茶やコーヒーが買えるようになったのです。
ここにきて、QRコードをスマホで読み取る中国の「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」 が使える店がコンビニ(ローソン)、デパート(髙島屋)、家電量販店(ヤマダ電機)など を中心に急増しています。
ただし、いまはあくまで日本を訪れる中国人観光客に対応するためですが、近く日本人向けに“オープン化”される予定ともいわれています。
また2018年秋からはなんと競馬場でもキャッシュレスで馬券(勝馬投票券)が購入できるようになります。
非接触型ICカード・JRA?UMACAを専用のキャッシュレス券売機にかざすと馬券の代わりにレシートが出てくるというもので、JRA(日本中央競馬会)は2018年9月の東京競馬場を皮切りに、全国の競馬場に順次このシステムを導入していく予定です。
地方競馬の東京シティ競馬では、一足先に2015年からプリペイドカードのTCKプレミアムカードを発行し、競馬が楽しめるようになっています。
ギャンブルがらみでは、10月からはドリームジャンボや自治体宝くじなどの宝くじがパ ソコンやスマホを使ってクレジットカードで誰でも24時間自由に買えるようになります(ナンバーズやロトはすでに購入可能)。
現在はみずほ銀行に口座があればドリームジャンボなどの宝くじを買うことができますが、政府は地方自治体の財源確保を理由に、このしばりをなくすつもりです。