(本記事は、冨田和成氏の著書『稼ぐ人が実践している お金のPDCA』KADOKAWA、2018年5月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

近年、メルカリやヤフーオークションなどセカンダリーマーケット(中古市場)が急成長しています。そのおかげで、個人のさまざまな資産にいくらの価値があるか可視化され、一般の人でも気軽に資産を換金できる時代となりました。これらの資産を売却すれば、不足している金額の穴埋めにも使うことができます。

では、一般の人が売却可能な資産にはどんなものがあるのでしょうか。たとえば、iPhoneを使っているのであれば、相当古い機種でない限り、売却可能資産と見なしていいでしょう。その他、PCや古本、腕時計なども売却可能資産です。要するに、身の回りの物品で、広く世の中で使われているものはすべて当てはまります。

お金のPDCA
冨田和成(とみたかずまさ)
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。
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稼ぎ力を高める「リターン」の概念 50万円と8.5万円の腕時計どちらがおトク?

お金のPDCA,冨田和成
(画像=PIXTA)

セカンダリーマーケットの発達により、「リターン」という概念に触れる機会も今まで以上に広がっています。セカンダリーマーケットが充実してくると、あらゆるモノに値段が付くので、個人の資産が可視化されやすくなります。

セカンダリーマーケットにおいて、本当に価値があるモノが評価されていくようになるのです。稼ぎ力が高い人は、これからセカンダリーマーケットを大いに活用していくことになるでしょう。

例を1つ紹介してみましょう。50万円のロレックスと8万5000円の国内メーカーの時計があったとします。どちらかを購入しようと思いますが、2つを比べたとき、いったいどちらを購入したほうがより多くのリターンを得られるでしょうか。

50万円の時計を買った場合、購入者にはどんなメリットがあるか考えてみます。まずは、 50万円もする高級時計を身に着けることで、自信や自尊心が得られたり、周囲からの見られ方が変わったりといったメリットはあるでしょう。

高級時計ならではの機能性を堪能できるというプラス側面も体験できるはずです。これらのメリットは、8万5000円の時計を身に着けるよりも大きいと考えられます。

次に、50万円と8万5000円の時計を購入し、3年間使用した後に売りに出した場合、それぞれがどのくらいの価値になっているか考えてみましょう。

8万5000円の時計を3年間使い、その後売却しようとすると2万5000円でした。次に50万円のほうは、3年経って41万円の価値があったと仮定します。

この場合、8万5000円の時計に対しては実質6万円を支払ったことになり、 50万円の時計には9万円を支払った計算になります。単純な金額ではロレックスの下落額のほうが大きいですが、3万円の差であれば、ロレックスを選ぶ人が多いでしょう。

もちろん価値観にもよりますが、精神的な満足度や機能性などを考慮すれば50万円の時計を買ったほうが大きなリターンが得られたという結論に至る人も少なくないはずです。また一般的に、資産価値が下がりにくいのは高級時計です。

実際にロレックス社は製品自体の供給量をコントロールすることで知られています。そのため、圧倒的に値崩れがしにくく、ときには、3年経った後に値上がりして売却できることすらあると言います。

こういう仮説はいくらでも考えられます。額が大きい買い物をする際には、セカンダリーマーケットの存在を意識しておくほうがいいでしょう。

「資産価値が高まる」モノにお金が向かう

セカンダリーマーケットが充実することで、あらゆるモノに値段が付き、資産が可視化されていけば、モノの価値ベースで購買が行われるようになります。

ということは、モノの価値が下がりにくいもの、あるいは上がっていくものにおカネが向かいやすくなると思います。結果として、さらに資産価値を重視した製品がもっと出てくることでしょう。

以前は、新品と中古の価格差が結構ありました。これは売り手と買い手の間に入る業者がそれなりの額の仲介料を取っていたからです。しかし最近では、メルカリやヤフオクなどネットを通じた買い手と売り手の直接取引も増え、価格がかなり透明化されてきました。その結果、売却金額の予測も立てやすくなっています。

この傾向は、時計やバッグなどの小物だけに限りません。たとえば、トヨタのレクサスに5年間乗って、その後売却した場合は買取価格がいくらになるのかシミュレーションすることも可能です。

1000万円の高級車が3年後に700万円で売れるケースと、500万円の車が3年後に200万円で売れるケースがあったとき、コストがどちらも300万円であれば、1000万円の高級車を手に入れるという選択もできます。

フェラーリやマセラティのような高級車の場合、もしかしたら数年後には価値が上がっていることもあります。次から次へと車を買い替えている人の中には、こうした計算をしっかりとした上で行っている人も多いのです。

さらに金額が大きな不動産を買う際にも、この考え方は応用できます。不動産を購入する際、「駅近を買え」とよく言いますが、それは駅近物件が値下がりしにくいからです。こういう考え方を身に付けておくと、スマホや貴金属など、あらゆるモノを買うときにいろいろと考えてから購入するようになるでしょう。

新品よりも中古やレンタルが勝る理由

ぜひ何かを買う際には、そのモノが売却可能資産になり得るか考えてみてください。これを習慣付けられたら、その次は「新品を買うのではなくて、中古とかレンタルじゃダメなの?」という発想を働かせます。このように選択の幅を持たせてみるのです。

法人においても、PCを1台1台購入しているところとリース(レンタル)しているところの両方があります。前者であれば、資産計上し、徐々に減価償却をしていきます。

法人はB/S(貸借対照表)をなるべく身軽にしておきたいので、なるべくモノの所有を減らしたいと考えます。そのため、実際には最後まで使い切るなら購入してしまったほうが安いのが実情ではありますが、リースができるのであれば、そちらを選択することで身軽さを保つなどの方法を考えるわけです。

バブル崩壊後や金融危機の際に、たくさん不動産を保有している法人が倒産に追い込まれたように、資産を抱えすぎることは、変化に対して弱くなるというリスクがあります。

また、不動産もそうですが、基本的に新品には“プレミアム”が付いていると考えていいでしょう。したがって、購入して使っていない、ほぼ新品の状態でも1~2割は値段が下がるのが現実です。新品は、大量の広告宣伝費、モデルハウス、店舗、営業人員などの販促費や人件費などが乗った価格だと考えるとわかりやすいかもしれません。

このように、新品を買うのでなく、中古またはレンタルが勝る理由はいくらでもあるのです。

もちろん、買い物にはいろいろな意味が込められており、そのモノを所有すること自体が自信や癒しにつながることもあります。人によっては、「フェラーリを所有している」という事実が、やる気を奮い立たせる原動力になっていることも考えられます。

ただ、仮に新車を買うとなれば、100万円単位のおカネが必要になります。自動車の購入を検討する際には、本当に買うべきなのか、それともレンタルや中古ではダメなのかをじっくりと考えてみるといいでしょう。

お金のPDCA
冨田和成(とみたかずまさ)
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。
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