株式市場が激しい変動を見せています。現在の市場環境で、投資を行っている人の中には、評価損が発生している方もいると思います。しかし、長期積立投資を行っている方は、投資を止めず、継続していただきたいと考えています。そこで今回は、下げ相場での長期積立投資について書きます。

長期投資,トウシル
(画像=トウシル)

投資対象の価格が最終的に上がるなら、下落局面での投資ほどリターンは大きくなる

下のグラフをご覧ください。 

グラフ1 積立投資のそれぞれの月に投資したお金の直近までのリターンと海外株価指数の推移

図表1
(画像=※海外株価指数(左軸)は、MSCIコクサイ指数(為替ヘッジなし)を1998年9月末を1として指数化。直近までのリターン(右軸)は同じ指数を使い、計算(=直近株価÷投資した時点の株価)
※MSCIコクサイ指数とは、日本を除く先進国株式投資の物差し(ベンチマーク)となる株価指数)

積立投資は、毎月決まった金額を投資していきますが、グラフ1はそれぞれの月に海外株式に投資したお金が直近までに何パーセントのリターン(利益)を上げたかを、海外株価指数の値動きと並べて表示しています。

折れ線(左軸)は海外株価指数で、棒グラフがそれぞれの月に投資したお金の貯金までのリターンです。具体的には、以下のとおりとなっています。

図表2
(画像=トウシル)

折れ線グラフの株価と、棒グラフの直近までのリターンを比較して見ると、実は、動きが逆になっています。

その理由は、最終的に直近の株価が上がっているため、投資した時点の株価が低いほど、リターンが高くなっているからです。つまり、株価が下がっている局面で投資すればするほど、リターンが高くなっているわけです。

もちろん、株価が下落し続ければ、毎月の投資はマイナスになります。しかし、「世界経済の拡大と歩調を合わせ、金融市場は拡大する」というこれまでのセオリーが継続するのであれば、世界経済の成長の恩恵を受けられるように幅広い資産に長期で分散投資することでプラスリターンを獲得できる可能性が高いと考えられます。

また、繰り返しお伝えしてきているように、分散投資を行なうことが大切です。日本株だけに投資する、あるいはロボット関連などあるテーマやセクターだけに特化して投資するのは、長期的にプラスリターンを得られる可能性が高いとは言えず、お勧めしません。
また長期投資は、筆者の感覚では10~20年の投資です。1年や2年の投資は短期投資であり、投機でしかなく、本気で資産形成を考える人にはお勧めしません。

話を積立投資のリターンに戻しましょう。

投資でリターンを上げるには、当たり前ですが、安く買い、高く売ることが重要です。グラフ1では、直近まで株価が上昇しておりますので、安く投資するほど、最終的な利益が大きくなります。

しかし、積立投資では、機械的に毎月投資するだけで投資タイミングは計りませんし、株価がどこまで上がるかも分かりません。

従って、ただ自分自身が投資を最終的に回収するまでに、株価は上がると信じ、できるだけ安く買えることを期待して毎月投資し続けることになります。
筆者も積立投資をしていますが、「株価の下落局面は安く投資できる局面が来た」と思っており、別に慌てることはありません。むしろ、積立投資で成功するには、下落局面も必要と考えています。

積立投資なら、リターンは平準化される

上記グラフ1を見て、いつもいつもこんなに上手くはいかないだろうと思われる方もいると思います。正直、筆者も直近が投資を開始して以来の最高値であり、出来過ぎだと思います。

必ずしも直近が最高値ということはなく、毎月投資したお金の直近までのリターンは、プラスリターンもあれば、マイナスリターンもあるという風にプラスマイナスのリターンが混在します。

しかし、長期積立投資は、毎月同じ金額を投資し続けますので、プラスマイナスのリターンは平準化されます。マイナスリターンがあっても、それ以上にプラスリターンを上げられれば、全体ではプラスリターンになるわけです。
あとは、全体で満足できるリターンになる局面をじっくり待ち、そのときが来たら、投資を止めてリターンを回収するだけです。待つだけなので、簡単だと思いませんか?

市場動向に一喜一憂せず、じっくり投資しよう

これまで積立投資について書いてきましたが、積立をせず、一括してまとまった資金を投資した場合についても考えてみましょう。

下のグラフ2をご覧ください。

グラフ2 海外株に一括投資した場合の投資リターン(10年、20年)

図表3
(画像=※投資対象の海外株は、MSCIコクサイ指数(為替ヘッジなし)とし、それぞれの時点までの10年、20年の投資リターンを表示。例えば、1990年1月であれば、1980年1月or1970年1月に投資スタートの計算)

グラフ2は、一括して海外株に投資し、横軸の期間まで、10年及び20年の期間で長期投資を行った場合の長期リターンを表示しています。 棒グラフの青は10年の投資リターン、オレンジは20年の投資リターンです。

10年の投資リターンでは、マイナスリターンの期間があります。しかし、全体で見ると、ほとんどの期間はプラスリターンになっています。また20年の投資リターンでは、マイナスリターンの期間はありません。長期で待つことができれば、マイナスリターンにはなっていないわけです。

あくまで世界経済が拡大するならば、株価も概ね歩調を合わせ上昇するという前提が有効でなければなりませんが、少なくても過去の実績ではそのとおりになっています。下げ相場では、評価損がどんどん大きくなりますので、精神的に耐えるのは大変苦しいものですが、長期間待てれば、過去はプラスリターンになっています。

評価損が気になる、耐えられないのであれば、一括投資ではなく、積立投資をすべきです。どうしても一括投資をしたいのであれば、長期間待てる根気と評価損に耐えられる精神力が必要です。

積立投資をするにしても、根気と精神力をもって一括投資をするにしても、「長期」とまず考えてみてください。そうすれば、下げ相場でもそれほど慌てる必要はなく、むしろ投資の好機として考えられるようになります。

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大澤 健吾(おおさわ けんご)
楽天証券 投資運用室 室長 チーフ・ストラテジスト
関西学院大学経済学部卒業。大和証券投資信託委託、日興コーディアル・アドバイザーズ(現・日興グローバルラップ)、横浜銀行などで、ファンドや銀行自己資金の運用に従事した後、現職。国際分散投資が専門で、ロボアドバイザー「楽ラップ」の運用責任者を務める。

(提供=トウシル

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