インデックスとは日経平均株価やTOPIX、S&P500などの指数のことで、市場の平均値のようなものだ。資金と時間に制約がある個人投資家にとって、インデックスに連動した動きを目指すインデックス投資は、効率的で人気のある投資法の一つだ。

この記事では、ETFを通して米国を代表するインデックスであるS&P500を丸ごと買う方法や、投資信託を使ったS&P500への投資を紹介する。ETFや投資信託を利用すれば、簡単に米国市場への分散投資が始められる。

潮見 孝幸
潮見 孝幸
金融ライター
山口県生まれ。大学院修了後、システムエンジニアとして金融の世界に入り、投資信託の運用や販売管理システムの開発に携わる。独立系運用会社のさわかみ投信に転職し、直販投信の業務に携わり、企画業務、法改正対応に従事。現在はフリーの金融ライターとして活動。投資信託を中心に、証券税制、社会保障制度などをテーマに執筆。執筆のほか、中国語翻訳、コンサルティングも手掛ける。

ETFとは

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(画像=PIXTA)

ETF(Exchange Traded Fund)は投資信託の一種である。ETFは株式と同様に取引所に上場して取引されており、「上場投資信託」と呼ばれることもある。そのため、個別株式と同じような感覚で市場での売買が可能だ。

ETFには、世界各国の代表的なインデックスに連動したものから、原油や金などのコモディティに投資するものまでさまざまな種類がある。

インデックス投資とはインデックスと同じ動きを目指す投資のこと

インデックス投資とはインデックスと同じ動きを目指す投資のことである。日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)、ダウ平均などをベンチマーク(参考指標)にして、それらの動きと連動した運用成果を目指す運用方法だ。

●インデックス投資のメリット 分散投資が安価にできる

インデックス投資のメリットは、少ない資金を元手に個人では難しい大規模な分散投資を低コストで容易に実現できるところだ。

例えば、個人投資家が日本の株式市場の指標の一つである日経平均株価を構成する225の銘柄をすべて集めて買おうとすると、225銘柄を一つ一つ買わなければならない。各銘柄を最低単元で買うとしても大きな資金が必要となり、かなりの手間がかかる。

しかし、日経平均株価に連動したETFなら最低単元の1口(数千円から数万円程度)を買うだけで、日経平均株価を構成する225銘柄をすべて所有することと同じ効果が期待できる。

インデックスそのものを丸ごと1口単位で買うことができれば、低コストで分散投資が実現できる。広く浅く投資したい場合、インデックス投資が一番簡単だ。統計的にインデックスファンドは多くのアクティブファンドに勝てるという説もあり、根強いファンも多い。

何より難しい銘柄選択が不要なことも、情報を得る時間と労力をかけられない個人投資家にとって大きなメリットである。

●インデックス投資のデメリット 集中投資より期待リターンが低め

インデックス投資にはデメリットもある。例えば、集中投資に比べ大きなリターンを得る可能性が低い点だ。

簡単に言えば、インデックス投資は市場の平均値に投資をする方法だ。大きく負けない投資法である反面、大きく儲ける可能性を捨ててしまうこともある。

例えば、米国Eコマース大手アマゾンの2010年の株価は100ドル台だったが、20年の8月時点では3000ドルを超えている。10年にアマゾン株に多くの資金を投資していれば、元手の何十倍という巨額のリターンを得ることができた。

個別銘柄の集中投資は、長期保有の間にコンプライアンス違反で上場廃止になったり、事業がうまくいかず倒産したりケースもある一方、大きなリターンを得られる可能性もある。

一方で米国の代表的な株価指数であるS&P500は、10年は1100ポイント前後だが、20年8月の時点では3000ポイント台前半で推移しており、約3倍のリターンであった。結果論だが、アマゾン株への集中投資で成功した場合に比べると、少し物足りないと感じる投資家もいるだろう。

米国のインデックス「S&P500」とは

S&P500とは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出している米国の代表的な株価指数の一つだ。ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している銘柄から代表的な500銘柄の株価を基に算出される時価総額加重平均型株価指数である。

工業株400種、運輸株20種、公共株40種、金融株40種の各指数で構成されており、採用銘柄は実に40業種に及ぶ。ニューヨーク市場の時価総額の約75%をカバーし、市場全体の動きを表す指標としても広く利用されている。

●S&P500の魅力とは

S&P500の魅力は、米国株の中でも幅広い500銘柄に分散できる点だ。先述したように、ニューヨーク市場の時価総額の約75%をカバーし、幅広い業種から構成されているため、バランスよく米国市場に分散投資をする場合、S&P500を丸ごと買ってしまえばよいということになる。

●S&P500とダウ平均との違い

一方、米国市場の代表的な株価指数には「ダウ平均(ダウ工業株30種)」もある。こちらは、アップルやナイキ、ゴールドマンサックスなど米国経済を代表する30銘柄で構成されている指数だ。ダウ平均もS&P500と同じくS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出している。

S&P500は「時価総額」を指数化しているのに対して、ダウ平均は「株価の平均値」という違いがある。そのためS&P500は時価総額が大きい大型株の株価に大きく左右され、ダウ平均は株価の高い株の値動きに大きく左右される。

ダウ平均よりもS&P500のほうが、単純に構成する銘柄数と業種が多いため、米国市場に広く分散投資をしたい場合に適していると言える。

海外(米国)ETFと国内ETFの違い

海外に上場されているETFを海外ETF、日本に上場されているETFを国内ETFと呼ぶことがある。同じS&P500をベンチマークとしている商品でも、海外(特に米国)で上場されているETFと日本国内のETFとでは、違いがでてくる。

●米国のETFのほうが流動性が高い

流動性とは、簡単に言えば多くの売り手と買い手がいることで、売りたいときに売れ、買いたいときに買えるかどうかということだ。換金のしやすさとも言える。米国はETFを売買する投資家が多いため、売りたいときに売れ、買いたいときに買いやすい。

しかし日本のETFは、売り手買い手が米国ほど多くないため価格がかい離することも多く、割高で買うことになったり、割安で売ることになったりするケースもある。

流動性の高さは米国のETFのメリットの一つである。

●米国のETFは現地でも分配金の税金を徴収される

米国で上場されているETFの分配金は、米国内で10%の税金が徴収される。さらに、日本国内でも20.351%(所得税、復興特別所得税、地方税)が源泉徴収される。少しでも払った税金を取り戻したい場合は、確定申告で「外国税額控除」を使うことになるが、二重課税となっている税金を取り戻す手間が発生する。

●米国のETFは米ドル建て

米国に上場されているETFを買う場合、米ドルで買うことになる。そのため日本円で買う場合、為替手数料と為替リスクを負うことになる。

米国経済に簡単に投資するならS&P500に連動したETF

米国経済に簡単に広く分散投資するなら、S&P500を丸ごと買うのが簡単だ。S&P500をベンチマークにしたETFは複数ある。代表的な資産運用会社がS&P500に連動したETFを販売・上場しているが、どれを選んでも大差はあまりない。

S&P500に連動した代表的なETFは以下のとおりだ。

●「iシェアーズ・コア S&P 500 ETF」(ティッカー:IVV) 世界最大の資産運用会社ブラックロックが運用

「i シェアーズ・コアS&P500 ETF」は、世界最大規模の資産運用会社ブラックロック・グループが運用するS&P500をベンチマークとする代表的な海外ETFだ。米国市場に上場されており、米国株式と同じ感覚で売買できる。ETFも普通の投資信託と同じく保有していると信託報酬という手数料が発生するが、「i シェアーズ・コアS&P500 ETF」の信託報酬は年0.04%であり、ETFの中でも安価だ。

●「バンガードS&P500ETF」(ティッカー:VOO) 低コスト運用会社バンガードの商品

「バンガードS&P500ETF」は、低コストのインデックスファンドの運用会社として世界的に知られるバンガード社が運用するS&P500をベンチマークにするETFである。米国市場に上場されており、他の海外ETFと同じく米国株式と同じ感覚で取引できる。信託報酬は「i シェアーズ・コアS&P500 ETF」と同じく年0.04%である。

●「SPDR S&P500 ETF」(ティッカー:SPY) 時価総額が大きめ

「SPDR S&P500 ETF」は、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)という米国ボストンの資産運用会社が運用するS&P500をベンチマークにするETF。信託報酬は0.0945%とIVVやVOOに比べると若干高めだが、SPYはIVVとVOOよりも早く上場しており、時価総額が大きく流動性が高いメリットがある。

●「SPDR S&P500 ETF」(証券コード:1557) 円建てで投資できるが流動性低め

「SPDR S&P500 ETF」は、東京証券取引所にも上場している。証券コード1557で株式と同様に取引できる。米国に上場する「SPDR S&P500 ETF」と同じETFが日本円で購入できるのだ。経費率(信託手数料)は0.0945%。だが、東京証券取引所は米国市場よりもETFの売買の出来高が小さい。円建てで取引できるが、流動性が低いことがデメリットだ。

●「上場インデックスファンド米国株式」(証券コード:1547) 日興アセットマネジメントが運用

「上場インデックスファンド米国株式」は、日興アセットマネジメントが運用する円換算したS&P500に連動しているETFである。日本で上場されており、円建てで購入できる。信託報酬は0.165%。日本円で気軽にS&P500に投資ができるが、米国のETFに比べると、やはり流動性は低めだ。

国内外に上場されているS&P500のETFは、いずれも日本の大手オンライン証券会社から購入することができる。

投資信託でS&P500を購入する

ETFを通してS&P500を購入する方法を紹介した。だが、ETFのように上場されていない普通の投資信託の中にもS&P500に連動させたものが存在する。S&P500に連動する投資信託をいくつか紹介しよう。

●「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」

「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、三菱UFJ国際投信が運用する投資信託である。同社は多様なインデックスファンドを提供しており、eMAXIS Slimシリーズとして販売している。同シリーズの特徴は「業界最低水準の運用コストを、将来にわたって目指し続ける」ことだ。つまり、いつでも業界最安値の信託報酬が期待できる。実際、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の信託報酬は年0.0968%(税込)と業界最低水準を保っている。

また、運用資産の規模が大きい点でも安心感がある。米国市場好調も手伝って、20年8月時点で純資産総額は1400億円を超えるまでに成長している。

個人投資家からの支持が高い点にも注目したい。近年注目を集める投資信託アワード「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2019」で、同投資信託は第2位にランクインしている。米国への投資がこれ1つでできる点や積極的に信託報酬を下げていく姿勢が評価されているようだ。

「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」

「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と並び、低コストで米国株式への投資ができるのが「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」である。世界最大級の運用会社の「バンガード」と日本の大手金融グループ「SBIグループ」がタッグを組み、米国に低コストで投資できるように提供されている投資信託であり、SBIアセットマネジメントが運用している。信託報酬は年0.0938%(税込)程度となっている。

19年9月に設定されたばかりで、運用資産の規模は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」ほど大きくはないが、純資産総額は20年8月時点で600億円を超える規模になっている。

同投資信託は「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2019」では、第10位にランクインしており、個人投資家からの評価も高い。だが、取扱金融機関があまり多くないので注意したい。

●「iFree S&P500インデックス」

「iFree S&P500インデックス」は、大和アセットマネジメントのS&P500に連動させることを目指して運用される投資信託だ。

同投資信託の信託報酬は0.2475%(税込)で、他に比べると少し高い。コスト重視の場合、見劣りするが、非常に多くの金融機関で販売されている。インターネット証券以外に各地の地方銀行でも取り扱いがある。

つみたてNISAの対象商品から選ぶことも

S&P500に投資できる投資信託を3つ紹介した。このほかにもS&P500に連動させることを目指して運用されるものはいくつかある。例えば、以下の投資信託だ。

・つみたて米国株式(S&P500) 信託報酬0.22%(税込)
・NZAM・ベータ S&P500  信託報酬0.264%(税込)
・農林中金<パートナーズ>つみたてNISA米国株式 S&P500信託報酬0.495%(税込)
・米国株式インデックス・ファンド 信託報酬0.495%(税込)

ここで紹介した7本の投資信託はすべて「つみたてNISA」の対象商品となっている。つみたてNISAの対象商品は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託だけが選ばれており、手数料などの条件をクリアしているものばかりだ。

積立投資でコツコツとS&P500に投資し、長期保有の予定であれば、これらの投資信託は適していると言えるだろう。

ETFと投資信託の違い

紹介してきたように、ETF以外に投資信託でもS&P500を購入することができる。ここで、ETFと投資信託の違いを整理しておきたい。

●ETFのほうが投資信託より信託報酬が安い

S&P500に連動したETFの手数料は0.04~0.16%程度であった。しかし、投資信託はどうだろうか。確かに、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の信託手数料が年0.0968%(税込)、「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」は年0.0938%(税込)とETF並みに低い信託報酬を実現している。

だが、「iFree S&P500インデックス」の信託報酬は年0.2475%(税込)であり、「米国株式インデックス・ファンド」は0.495%(税込)である。ETFよりも投資信託の信託報酬のほうが全体的に高い傾向にあることが分かるだろう。

近年、投資信託の信託報酬は激しい競争の中、かなり引き下げられてきたが、仕組み上の問題もあり、今後もETFと同レベルにまでは下がらないだろう。運用コストの点からみれば、長期で保有する際にETFのほうが有利ということになる。

●ETFはタイミングを見計らって好きなときに売買ができる

ETFは市場が開いているときなら、好きなタイミングで売買できる。これは、ETFの大きなメリットだ。一方で投資信託は1日1度算出される基準価額で購入しなければならない。売買タイミングを自分で決めたい投資家はETFを選ぶほうがよいだろう。

●ETFのほうが購入単位が大きい

ETFは市場価格により1口単位で買うことになり、数千円から数万円程度の単位で取引することになる。一方、投資信託も通常1口単位だが、1口数円である。そのため、少額の積立投資をする場合は購入単位が小さい投資信託のほうが向いているとされる。

●S&P500を買えば広く米国市場に分散投資できる

S&P500の動きをベンチマークにしたETFは国内外で上場されている。日本に上場されているS&P500ETFは円建てで購入できるが、流動性が低い。米国に上場されているETFは流動性が高く取引しやすい反面、ドルで購入する手間がかかるなどの違いはあるが、国内外のS&P500に連動したETFは日本の大手証券会社から購入できる。

また、投資信託でもS&P500を買うことはできる。購入単位が小さく、つみたてNISAという最新の税制優遇制度の活用もできるが、信託報酬の低さではETFに劣っているのが現状だ。特に長期投資では運用コストが不利に働いてしまう。

ETFと投資信託にはそれぞれ、メリット・デメリットがある。どちらも気軽に米国市場に広く浅く投資ができるので、自身の状況に合わせて使い分けていきたい。米国市場の成長に期待するのであれば、これらを通して米国市場の500社をまとめて一気に買い付けることが可能だ。