プライベートカンパニーを設立してとにかく節税がしたいという人は考えを改めたほうがいいかもしれない。コンサルタントという本業の傍ら、自身でも多くの不動産を所有し、複数のプライベートカンパニーのオーナーでもある石川貴康氏はこう語る。
「プライベートカンパニーとは、自分でお金の流れをコントロールできるための箱です。箱だけ作ってもお金が入ってくる仕組みが作れなければ意味がありません。また、単に税金を払いたくないということが目的でもありません。税金はきちんと払ったうえで、お金の流れをコントロールする力を手に入れることが目的なのです」
不動産投資でプライベートカンパニーを持つまでの具体的な事例や、配偶者や親をプライベートカンパニーの代表にするメリットとデメリット、あるいは老後のセーフティネットとしての意義までを余すところなくご教授いただいた。特集第2回では、プライベートカンパニーの設立を検討する際、向く人と向かない人、それぞれの特徴を具体的に聞いた。(聞き手:ZUU online編集部)
まず身につけるべきは会計・税務の知識。お勧めは「確定申告を自分でやること」
――一般的に「不動産経営」などと言うくらいですから、不動産を持つには経営者に近い視点を持つ必要もあるのだと思います。石川さんが最初に不動産を持たれたとき、どのようなプロセスで身につけていったのかを教えていただけますか?
私は元々会計事務所にいました。そのためにお金、つまりキャッシュの流れが分かるし、その知識が元々ありました。
――なるほど。そういった会計などの経験の無い方は何から身につけるのがよろしいでしょうか?
「簿記会計」ですね。もしくは、一度でいいので自分で確定申告をしてみることです。それが一番手っ取り早い。売上があり、経費があり、残った利益に対して最後に税金がどれくらになるか。文字通り「身銭を切る」のです。そうすることで、それまでまったく興味の無かった人でもP/L(損益計算書)やB/S(貸借対照表)を自分で勉強するようになるでしょう。
そういう大事なビジネスの話を学校教育の中では一度も教わりませんよね。世の中はお金で回っているのに教えない。私の考えですが、学校では世の中の仕組みを学ぶことはできません。だから独立したあとに知識不足から破綻してしまって、立ち直ることも二度と起業することもなく借金だけ背負って一生がおかしくなってしまう。そういった悲惨な状況になる方を減らしたいという思いもあり、最初に簿記会計と税務の知識を身に付けましょうと伝えています。
――その知識を身に付けた上で、資産の有無や年収の多寡、独身既婚などに分類したとすると、プライベートカンパニーを持つべき方の境界線はありますか?
これも実はあまり関係がありません。メリットの有無ではなく、本来は全員が自分のビジネスとして設立するほうが様々な意味でいいと考えています。独身だから、既婚だからなどは関係なく、資産の有無も極論ですが関係ありません。開始年齢の目安や制限も特にありません。
ただ、特に資産がある方は累進課税や相続税で多くのお金を納税しなければいけないので、事業のスキームを使ってきちんとお金の管理ができるようにしておいたほうがいいのです。その結果として、節税につながるということです。動機は何でもいいですが、そこに至る道にお手軽な方法はありません。それがあれば皆やっています。
――では「どういう価値観を持っている方が、プライベートカンパニーを持ち続けるのに向いているのか」という観点ではいかがでしょうか?