要旨

インド,アグリテック
(画像=PIXTA)

現在インドは中国を上回る経済成長を遂げているが、農家は貧困に喘ぎ、成長から取り残されてしまっている。人口の約6割を占める農業・農村の発展の遅れは今年の総選挙の結果を左右する問題となるだろう。

インドは1947年の独立後に食料不足に直面していたが、「緑の革命」により穀物生産が拡大して現在は農業大国となっている。しかし、非農業部門の雇用が不十分なために農業就労者が増え続けていることや農業部門固有の問題により、労働生産性は伸び悩んでいる。インドの農業は、大半が零細・小規模経営であることや機械化・農業知識などの技術面の遅れ、非効率なサプライチェーン、自然環境に左右されやすいといった問題を抱えている。

モディ政権は農業部門の問題解決に取り組み、インターネットを活用した農産物市場の導入によってサプライチェーンの効率化を図るなど一部で進展は見られたものの、成果の出るまでに時間のかかる課題が多く、短期間で貧困に苦しむ農家の負担を和らげることはできなかった。その間に天候要因や景気の悪化により農家の生活は苦しくなっていき、結果としてMSPの引き上げなど従来型の補助金漬けの農業政策に頼らざるをえない状況に追い込まれていった。こうした農家を保護するための補助金は財政の負担であり、農業部門の改革に充てる財源は制限されてしまっているようだ。

本稿では、こうした農業部門と農業政策の現状を整理した上で、今後の農業政策の行方を考察する。