(本記事は、大前研一の著書『大前研一 稼ぐ力をつける「リカレント教育」』プレジデント社2019年6月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

若手社員には徹底的な鍛錬を施す

社員
(画像=Robert Kneschke/Shutterstock.com)

最後に社員の育成について、「20代から30代」「40代から50代」「定年後(60代以 降)」の3つのフェーズに分けて考えてみたい。

20代から始まる20年間は、その仕事に全力を注ぐ必要がある。若手社員の先輩を指導役につけ、実務を徹底的に覚えさせるとともに、サイバーエージェントの新卒社長制度のような仕組みをつくり、事業を生み出す視点を育てるのだ。

20代で入社した社員は、大学や大学院で教育を受けているだろうが今の大学の教育が変わらない限り、これからの時代を生きるビジネスパーソンとしては使い物にならない。大学で学んだことには期待を持たず、会社でしっかり再教育する決意が求められるのだ。

人材育成は30歳までが勝負だ。最も吸収力の高い20代という年齢を無駄にしないためにも、徹底した意識づけを行うべきである。

私がマッキンゼーにいた頃は、会社に入ってくる新卒者に対して、「35歳までに社長になることができなければ、一生なれない」と毎日のように言っていた。

もちろん、35歳を超えて社長になる人はいくらでもいるが、マッキンゼーに入ってくる人材は、20代にしてクライアントである経営者にアドバイスをしなくてはならないので、高い意識を持って仕事を行ってほしいという思いがあったのだ。

そのように毎日意識づけを行っていたせいか、実際に彼らは起業家としての素質を持つに至った。私の後輩には、ディー・エヌ・エーの南場智子氏や、エムスリーの谷村格氏、オイシックス・ラ・大地の高島宏平氏らがいて、若くして起業家として成功している。

こうした結果を生み出すことができたのは、徹底した意識づけにより、彼らの目標を「見える化」していたからだ。私は、アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)という起業家養成学校を20年にわたりやってきた。8000人の卒業生がいて800もの会社を興している。上場企業も12社出てきている。人は刺激と出会いでいろいろなきっかけを掴むのだという何よりの証拠なのではないだろうか。「30歳を超えても成長できていない社員はどうすべきか」という質問については、2つの答えが考えられる。

ひとつは厳しく成果を問うて、強いプレッシャーをかける方法だ。いわば恐怖のどん底に突き落とすことで、本人の奮起を促すのだ。逆に金銭的にけた違いのインセンティブを与えるという方法もあるだろう。

30代までに徹底的に鍛え直さなければ40代からのキャリアを十分築くことはできないという認識を持ち、企業も社員も必死になりキャリア育成に取り組まなくてはならない。

「コア人材」と「ノンコア人材」を分けて育てる

30代までの訓練が終わると、その時点で経営幹部になりうる「コア人材」と、そうではない「ノンコア人材」の振り分けもできる。経営をスリムにするには、コア人材を使いこなすことができる人材を育てるとともに、コア人材を除いては外部のプロフェッショナルを活用するなどして、「アウトソース化・自動化・省力化」を組み合わせる必要がある。

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(画像=©BBT Research Institute All rights reserved.)

コア人材の育成については、「既存事業を伸ばす」「新規事業を立ち上げる」「コストダウンを徹底する」の三つの課題を与えてみてはどうか。これ らは会社の業績に直結するもので、コア人材が将来的に経営陣として真剣に取り組むべき課題だからだ。

これらの仕事は、人によって得手不得手があり、新規事業を考えるのは得意でも、コストへの意識が希薄といったこともあるだろう。社員の性格(キャラクター)を押さえておくことは、将来的な人材配置にも役立つ。

一方、ノンコア人材については、会社の本来の業務ではないところで彼らの可能性を探らなくてはならない。

私が提案するのは「年齢+勤続年数=75歳」をノンコア人材の定年と考えるルールだ。たとえば大学卒業後23歳で入社した人は、49歳のときに定年を迎えることになる。

その上で、定年までに新たな道筋を踏ませることが大切だ。たとえば新規事業へチャレンジさせたり、労働時間の15〜20%を社会貢献や自己啓発に割り当てさせたりといったサポートを行うのだ。

ITなど新しいツールが不得手な社員には、リバースメンター制度も効果的だ。これは、若手社員が古株の社員に対してマンツーマンでITツールなどの使い方を教えるというもので、資生堂でも2017年1月にリバースメンター制度を全社展開し、成果を上げている。

コア人材にせよ、ノンコア人材にせよ、40代以降の20年間は、それまでに磨きをかけたスキルを活用する期間で、定年後の生業をつくる準備期間でもある。スキルや知識だけではなく、人脈形成も生涯現役を目指す上で欠かせないため、この点も意識しておきたい。

本気で仕事を合理化すれば、労働時間を3割程度減らしても成果を維持することができる。浮かせた時間で定年後の働き方を研究し、早くから実践・実証してみることが必要なのだ。

大前研一 稼ぐ力をつける「リカレント教育」
大前研一(おおまえ・けんいち)
早稲田大学卒業後、東京工業大学で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得。
日立製作所、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、現在、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長。著書に、『「0から1」の発想術』『低欲望社会「大志なき時代」の新・国富論』(共に小学館)、「日本の論点」シリーズ(小社刊)など多数ある。

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