不動産投資において、地震による建物の倒壊リスクが気になる人も多いのではないでしょうか。今回は、東日本大震災や熊本地震の被害状況から、どの程度、地震のリスクを考慮すべきかを検討します。地震のリスクについて正しく知り、投資判断に生かしましょう。
東日本大震災と熊本地震で被害を受けた建物は?
地震のリスクを考慮し、不動産投資を断念する人は実際にいます。日本が地震大国だという認識も、その判断を後押ししているのでしょう。しかし、正しくリスクを認識せずに投資の選択肢を狭めてしまうことは、チャンスを逃すことに他なりません。
「融資を受けて不動産を購入したのに、地震で不動産そのものが損傷を受けてしまった。修繕のために莫大な費用がかかり、支払いに追われる羽目に」。地震に対するリスクのイメージというと、およそこんなところでしょう。
しかし、実際の地震においてどの程度、不動産に被害が出たのでしょうか。メディアなどで報道されるのは、基本的に被害の大きかった地域です。リスクを正しく認識するためには、統計の数値に注目することが重要です。
東日本大震災におけるマンションの被災状況について、社団法人高層住宅管理業協会が「東日本大震災被災状況調査報告」を発表しています。
同報告書は、8万5,798棟、429万5,636戸の東日本大震災における被災状況を、大破0棟、中破61棟(0.071%)、小破1,070棟(1.247%)と発表しています。
小破とは、壁や階段などにひび割れが見られる程度の軽微な損傷を指します。つまり、調査対象となったマンションのうち98.682%はほぼ損傷がなかったことがわかります。
また、熊本地震におけるマンションの被災状況については、一般社団法人マンション管理業協会がデータを公表しています。このデータによると、同協会は九州7県7,610棟のマンションを管理しており、震度7を記録した熊本県には572棟がありました。
回答があったマンションのデータを整理すると、大破が1棟(0.02%)、中破が5棟(0.08%)、小破が151棟(2.53%)でした。つまり、97.37%はほぼ損傷がなかったことがわかります。
東日本大震災・熊本地震の被災状況を実際の数値で確認すると、マンションの損傷は意外にも多くはないことがわかります。少なくともマンション投資においては、地震へのリスクヘッジは成されていると考えられるでしょう。
もちろん現実は何が起こるかわからないため、地震を含めたリスクを考慮することは大切です。しかし、過度にリスクを恐れるあまり投資のチャンスを逃すのは得策ではありません。
耐震基準を満たした物件なら過度にリスクを恐れる必要はない
耐震基準は、これまで災害が起こる度に見直されてきました。まず、1948年に発生した福井地震を受け、1950年に建築基準法が制定されました。その後、1978年には宮城県沖地震が発生したことから、1981年に建築基準法が大幅に改正されました。
建築基準法の改正によって、1981年以前の耐震基準は「旧耐震基準」、1981年以降の耐震基準は「新耐震基準」と呼ばれるようになりました。
阪神・淡路大震災においても、大きな被害が発生したのは新耐震基準の導入以前に建築された建物です。旧耐震基準の建物は約30%が大破以上の損害を受けましたが、新耐震基準の建物で大破以上の損害を受けた建物は10%未満です。
こういった背景を踏まえると、新耐震基準のマンションに投資するのであれば、地震のリスクは相当低く抑えられることがわかります。
リスクを正しく認識して投資判断をすることが大切
不動産投資において、リスクは決してゼロにはなりません。未来は誰にもわからないため、誰も想像し得ないような大地震が日本を襲う可能性もゼロではないでしょう。
しかし、不動産に限らず、すべての投資においてリスクはつきものです。他の投資方法とフラットに比較し、リスクについて正しい認識を持ったうえで、投資判断をすることが大切です。
不動産投資は、ほったらかしでも長期的に資産を形成していくことが可能な優れた投資方法です。災害リスクを過度に恐れるあまり、投資判断を誤らないよう注意しなければなりません。(提供:マンション経営ラウンジ)