【連載 経営トップに聞く】第23回 〔株〕オクト代表取締役社長 稲田武夫

オクト,稲田武夫
(画像=THE21オンライン)

現在、日本全国で人手不足が叫ばれているが、建設・建築業界においては、とりわけ深刻な問題になっている。また、建設・建築業界は、今も電話やFAXでのやり取りが中心のアナログな世界だ。そこで、2014年創業のベンチャー企業・〔株〕オクトは、ITによって建設・建築業界の生産性を向上させ、人手不足を解消することに取り組んでいる。創業社長の稲田武夫氏に話を聞いた。

アナログな現場をコミュニケーションアプリで働きやすく

――御社は「&ANDPAD(アンドパッド)」というアプリを提供しています。ユーザー数はどれくらいですか?

稲田 導入していただいている法人数は1,600社を超えていて、6万人ほどのユーザーにお使いいただいています。

――どういう人が、どのように使っているのでしょうか?

稲田 住宅や商業施設、オフィスなどの建築現場で、コミュニケーションのために使っていただいています。一番多いのは住宅で、新築だけでなく、リフォーム、商業建築、ハウスクリーニングの現場でも使っていただいています。

施工現場には、大工さんなどの職人や現場監督、専門工事をする会社の方、流通の方など、着工から完工まで、いろんな方々が関わるのですが、そのコミュニケーションはほとんど電話やFAXで行なわれていて、手間になっているんです。そこを、クラウドを使って効率化するのが「&ANDPAD」です。

――施工現場で行なわれるコミュニケーションとは、どういうものなのでしょう?

稲田 図面や工程表、仕様書などの共有や、「どの建材をいつ届ければいいのか」といった相談、あるいは、「リフォームの現場で屋根を開けてみたら水漏れが見つかった」というような報告などがあります。資材などの発注や見積もりの議論もありますね。

――そうしたコミュニケーションがすべて「&ANDPAD」上で行なえるわけですね。様々な会社の人たちが使うということですが、御社に料金を支払うのは誰なのでしょう?

稲田 料金は工事の元請け会社からいただいています。ご家族で経営されている工務店もあれば、数千人の職人さんをパートナーにしていらっしゃるハウスメーカーもあります。

他のユーザーは、元請け会社から「&ANDPAD」への招待を受けて、ゲストIDで利用する形です。

案件を作成したり、人を招待したりすることは、料金をいただいているユーザーだけができる仕様にしています。

――ユーザーの反応はいかがですか?

稲田 初めは慣れないという声もあるんですけど、LINEくらい簡単に操作できますし、慣れれば喜んでいただいています。一番多いのは、いちいち現場監督に電話をしなくても最新の状況を「&ANDPAD」で確認できるようになったのが便利だという声ですね。

現場監督からは、以前は「とりあえず現場に行こう」ということが多かったけれども、「&ANDPAD」を使って職人さんのほうから報告が入るようになったので、必要がなければ足を運ばなくてもよくなったと聞きます。

現場監督は、日中は現場をいくつも回って、夜、オフィスに戻ってから事務仕事をするのですが、「&ANDPAD」を使うとオフィスに戻る必要がなくなり、残業時間も減ったそうです。

その他、工期が遅れなくなったという声も聞いています。「もう『&ANDPAD』がないと仕事が回らない」と言ってくださる方もいて、すごく嬉しいですね。

――人手不足の解消にもつながりそうですね。

稲田 我々はそのつもりでやっています。地方だと、職人さんが足りていないので、契約から着工まで半年くらいかかってしまうことがあります。現場監督や職人さんの働き方を効率化して、一人で担当できる現場の数を増やす、つまり生産性を上げることで、それを解消したいと思っています。

また、「&ANDPAD」を導入することで労働環境が改善されれば、建設・建築業界に就職する若者も増えるだろうと思います。建設・建築に興味があっても、労働環境が不安で、就職を避ける人も少なくなりませんから。