明かりのあるところを探せ
クラウスは、この立場をさらに推し進め、つぎのように言います。
「暗い夜道で車のキーをなくしたことに気づいた。どこを探せばよいか?」
これに対する物理学者の答えは、「近くの街灯の下を探せ」というものです。なぜなら、そこで鍵をなくしたかどうかはともかく、見つかりそうな場所はそこしかないからです。
この答えは、一見したところ、いかにも乱暴なものと思えます。しかし、よく考えてみれば、合理的なものです。「もし道具が金ヅチしかなかったら、人はどんなものもクギとして使うだろう」というのと同じことです。クラウスは、「明かりのあるところを探せ」という原則にしたがって、既知の道具を用いることにより解かれた多くの物理的問題を紹介しています。そして、つぎのように言います。
物理学においては、新しいアイディアよりは、使い物になるアイディアの方が重んじられるのである。かくして、過去に役だった概念や定式化、テクニック、“描像”をあれこれいじくっては、山のような新しい状況に適用してみることになる。
つまり、「使えるネタはとことん使え。うまくいったら二匹目のどじょうを狙え」というわけです。
ポイント 暗い夜道で車のキーをなくしたら、近くの街灯の下を探すのが最も合理的。新しい問題を解くには、まず古い方法を使う。