起業後にこそ問われる「応援される力」
会社の立ち上げに成功しても、存続は難しい。組織の規模が大きくなるにつれ、起業家に求められる能力は変化するからです。その変化に対応できず、失敗する起業家を私は数多く見てきました。
では、起業の成功と失敗の分岐点はどこにあるのでしょう。それは、「周りから信頼される人」になれるかどうかに尽きると感じています。
起業は、すべてが順風満帆にいくわけではありません。むしろ、思うようにいかないときのほうが多いでしょう。
そうしたとき、これまで懸命に積み上げてきた自分の「信用残高」を切り崩しながら、社員やビジネスパートナーの力を借りることになります。だからこそ、日頃から信用残高を高めておくことが必要になるのです。
そのためには、当然のことながら常に約束を守ることと、隠しごとをしないことが大切です。
社員には、会社の状態をオープンに報告し、助けが必要なときは助けてほしいと正直に伝える。「社長だから報告する必要はない」といった独りよがりな態度だと、社員の心は会社から離れてしまいます。
また、自分の夢や自己実現のために周囲を利用しないこと。経営者の願望を実現するコマとして働く社員やビジネスパートナーなどいません。
ただ、凡人起業を実践されている方からこうした独裁者は生まれにくいのではないかと思っています。
夢や自己実現をモチベーションとするのではなく、社会に求められている商品やサービスを軸に、仕事をしているからです。そこでは、周囲の助けがないと生きていけないことは、十分に理解しています。
ただ、それではやりがいを感じられないのではないかという意見の方もいるでしょう。
ですが、私はそうは思いません。なぜなら、自己実現は、社員や取引先、顧客といったステークホルダーが求める商品やサービス、環境を提供し、彼らから感謝されることで、結果的に満たされていくものだからです。
とはいえ、成功すれば凡人も有頂天になり謙虚さを忘れがちです。経営者としての謙虚さ、これが凡人起業家の最も大切なポイントと言えるでしょう。
小原 聖誉(おばら・まさしげ)
起業家/エンジェル投資家/〔株〕StartPoint代表取締役
1977年生まれ。ベンチャー企業勤務を経て、2013年、35歳のときにスマホゲームのマーケティング支援事業を柱とした株式会社AppBroadCastを創業。立ち上げたメディアは2年で400万ダウンロードを超えた。2016年、大手通信会社グループに同社をバイアウト。現在は自らの創業経験をもとにIT企業の支援・投資活動を行なう。著書に『凡人起業』(CCCメディアハウス)。(『THE21オンライン』2019年10月24日 公開)
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