1990年代にバブルが崩壊後、頻繁に企業の倒産のニュースが流れるようになった。ただ「民事再生」「会社更生」といった2つのキーワードを耳にすることが増えても両者の違いや手続内容をしっかり理解している人はあまり多くない。そこで今回は再建型の倒産手続である「民事再生」と「会社更生」の2つの内容を解説しつつ両者の違いについても触れていく。

企業の平均寿命は23.9年!倒産は他人事ではない

民事再生,会社更生,違い
(画像=Billion Photos/Shutterstock)

株式会社ファンケルの創業者の言葉に「企業は常に倒産する方向に向かって進んでいる」というものがある。すべての企業が必ず倒産するとはかぎらないが長寿だとも言い切れない。東京商工リサーチの調査によれば2018年に倒産した企業の平均寿命は23.9年だった。2000年の全国企業の倒産件数は1万8,769件に対して2018年は8,235件と落ち着いている。

しかし今後の少子高齢化による人手不足や後継者問題、参考構造の劇的な変化などを考えると今後企業倒産が再び増える可能性は十分にあるだろう。見方を変えると経営している企業や勤務先企業が現時点で好況だとしても、ある日突然倒産するリスクは常に抱えているのだ。倒産はどんな人にとっても決して対岸の火事ではないため、現役世代ならば誰でも倒産に関する知識は備えておいたほうがよい。

倒産とは何か?3つの条件のいずれかに当てはまる場合

そもそも倒産とは具体的にどういったことだろうか。倒産という用語は法律により規定されたものではない。一般的には「企業経営が行き詰まって債務超過になり弁済にあてる現預金が不足し弁済不能になった状態」を指す。具体的には、以下の3つのいずれかに該当すると認められる場合に「倒産」といわれる。

銀行取引停止処分を受ける 私的整理をする(会社の代表者が倒産と認めたとき) 裁判所に「破産手続」「特別清算」「民事再生」「会社更生」のいずれかの手続きの開始を申請する

倒産時の法的整理は「破産」だけではない!「民事再生」「会社更生」もある

倒産時の対処として多くの人が最初にイメージするのは「破産」だろう。しかし上記で示したように実際は「特別清算」「民事再生」「会社更生」といった選択肢もある。「破産」「特別清算」「民事再生」「会社更生」といった4つの違いを大まかに確認しておこう。

●「破産」「特別清算」
会社が消滅する。裁判所の監督下で会社の財産が処分・配当される「清算型」の倒産手続。

●「民事再生」「会社更生」
会社が存続する。裁判所の監督下で事業の立て直しを図る「再建型」の倒産手続。

まとめると破産と特別清算は会社を解散してゼロに戻してしまう手続きだ。一方、民事再生と会社更生は会社を維持したまま1からやり直す手続きである。

民事再生とは?

民事再生とはどのような制度なのだろうか。ここでは民事再生の制度内容について詳しく見ていく。

民事再生の制度内容

民事再生は、再建型の倒産手続であり2000年4月に制定された民事再生法に基づいている。それまでは、民事再生に相当する手続きとして和議法に基づく和議手続があったのだが利便性が低く批判が絶えなかった。そこで和議手続きのメリットを活かしつつ使い勝手の良い手続きとして民事再生が登場した。

民事再生は、民事再生法第1条によると「債務超過などにより経済的に窮境にある債務者を裁判所認可の再生計画に基づいて救済し事業や経済状況の再生を図ること」が目的だ。また民事再生においては、法的な処分よりも債務者の主体的な再生計画や手続きの遂行と債権者の同意が重視されている。

民事再生の開始申立の要件とは?

民事再生は、以下のいずれかの場合に利用できる。

破産手続開始の原因となる事実(具体的には「支払不能」「支払停止」「債務超過」のいずれか)が生ずるおそれがある場合 事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合

●民事再生の対象となる債務者
民事再生の対象となるのは個人・法人である。

●民事再生の対象となる債権者
金融機関や取引先が対象となる。

民事再生で経営権・株主はどうなる?

経営陣の交代が必須とされていないため、原則としてそれまでの経営陣が経営を継続することができるただし裁判所の選任した管理委員による監督などを受けることが必要だ。粉飾決算など自主的な経営が適当でないと認められる場合には、裁判所の命令により管財人に経営権が移されることがある。株主の変動も必須要件となっていないため、基本的に株主の地位に変動が生じることはない。

ただ再生計画により減資されることとなった場合は、株主の地位を失う可能性が生じる。

●民事再生における債権回収
申立の時点で存在する債権全部について一時的に弁済が不可能となる。その後、再生計画の中で平等に債権の一部が減額。この場合、一定数以上の債権者の同意を得ることが必要だ。

●民事再生における財産の状況
一定の財産保有を維持することは可能だが管理権は旧経営陣から更生管財人に移る。また再生計画に向けて財産の評定が必要だが評定基準は処分価格(清算価値)とされている。

●民事再生における担保権の行使
民事再生において担保権者は一般債権者と区別される。そのため担保権は再生計画による債務免除や債務減額の影響を受けない。担保権者は会社の財産の競売を申し立てて債権を回収することが可能だ。

民事再生の手続5ステップ

民事再生の手続きの流れは以下の6つだ。

・再生手続の申立
・再生手続の開始決定
・財産目録・貸借対照表や債権認否書の提出
・再生計画案の提出
・債権者集会の開催および民事再生の決議
・再生計画の遂行および終結

1. 再生手続の申立

民事再生の申立は、個人・法人を管轄している裁判所で申立書類を提出し予納金を納付することで行う。申立書類には民事再生の申立書のほか「保全処分の申立書」「定款の写し」「債権者一覧表」などが必要だ。また予納金は法人と個人で異なる。法人の場合、200万~1,300万円の間で負債額に応じて金額が決まる。

個人は15万円~となっているが個人再生委員をどうするかによって金額が変動する。

再生手続の開始決定 申立から約2週間後に民事再生手続が開始する。これと同時に財産の保全処分が行われるため、債務弁済が止まる。また各債権者に対して裁判所から「再生手続開始の通知書」「債権届出の書類」が郵送される。債権者は回収が困難な債権について債権届出の書類を裁判所に提出しなくてはならない。

2. 財産目録・貸借対照表や債権認否書の提出

再生手続の開始決定から約1ヵ月後、会社の財務や負債額の計算のため、財産目録や貸借対照表を裁判所に提出しなくてはならない。これらの書類には、民事再生にいたるまでの経緯や今後の見通しなどに関する報告書も添付する。また2の債権届出の書類に記載された債権の有無や金額を確認したうえで債権認否書を裁判所に提出することが必要だ。

3. 再生計画案の提出

再生手続の申立後2~3ヵ月で再生計画案を裁判所に提出する。再生計画案に記載すべき事項は主に以下のような内容だ。

・どの程度の債務を免除するか
・手続後の債務の返済方法・期間

この再生計画案の作成に当たっては、債権者の同意が必要だ。また必然的に債権総額の占める割合が大きい債権者に配慮しながら計画案を練ることになる。ただ特定の債権者のみを優遇するなど債権者間の公平さを害することは許されない。

4. 債権者集会の開催および民事再生の決議

再生計画案を裁判所に提出した後、債権者集会を開催し債権者全員から再生計画に関する決議を得なくてはならない。この集会での多数決をもとに民事再生の可否を決定する。民事再生に基づき再生計画を実行するには、出席した債権者の過半数の同意かつ債権総額における2分の1以上の債権者の同意が必要だ。

なおここで再生計画について承認が得られた後、裁判所の認可が下りれば減額された債務の弁済を含め会社の再建が始まることとなる。

5. 再生計画の遂行および終結

再生計画が確定した後、債務者は弁済など計画の遂行に着手。再生計画の履行の完了した場合または再生計画認可決定確定後3年経過した場合、再生手続が終結する。

民事再生の期間

手続きが比較的簡便であるため、5ヵ月程度で完了することが多い。

民事再生の過去の事例

過去、民事再生手続を行った事例として以下の企業が挙げられる。

・洋菓子のヒロタ(2001年)
・ライブドア(旧法人、2002年)
・タカラブネ(2003年)
・東ハト(2003年)
・草思社(2008年)
・ダイア建設(2008年)
・リーマン・ブラザーズ証券(日本法人、2008年)
・安愚楽牧場(2011年)
・スカイマーク(2015年)
・第一中央汽船(2015年)
・ニュートンプレス(2017年)
・学校法人森友学園(2017年)
・タカタ(2017年)

会社更生とは何か?

会社更生とはどのような制度なのだろうか。ここでは民事再生の制度内容について詳しく見ていく。

制度内容

会社更生とは、再建型の倒産手続だ。会社更生の基盤となる会社更生法は民事再生法以前から存在していたが状況を鑑み2002年に全面改正された。会社更生法第1条では、会社更生の目的を「窮境にある株式会社が更生計画の策定・遂行により、取引先などの利害関係者との利害を調整し、株式会社の事業の維持更生を図ること」としている。

会社更生法は、事業の自主的な再建以上に企業の倒産による社会的な悪影響の防止に重きを置いている。なぜなら会社更生法の対象は株式会社だが、なかには債権者が多かったり取引規模が大きかったりするなど社会的な影響力をもつ企業が少なくないからだ。そのような大企業が経営に行き詰まり破産手続をとってしまうと1社の問題では収まらず社会的な問題になる可能性が高い。

規模の大きい企業の再建を図ることで社会的な悪影響を防ぐのが会社更生という手続きの目的だ。会社更生そのものは対象を大企業に限定しているわけではない。しかし実際の運用においては、かなり複雑かつ厳格な手続きを債務者に要求するため上場企業あるいは非上場の大企業に制度の活用が事実上限定されている。

会社更生手続で再建手続を主体的に進めていくのは債務者ではなく裁判所によって選任された更生管財人だ。

会社更生の開始申立の要件は?

会社更生の開始申立の要件は、民事再生と同じだ。

●会社更生の対象となる債務者
会社更生の対象となるのは株式会社のみだ。つまり個人だけでなく法人であっても合名会社・合資会社・合同会社など株式会社以外の形態は対象外となる。

●会社更生の対象となる債権者
民事再生と同じく金融機関や取引先が対象だ。

会社更生で経営権・株主はどうなる?

会社更生では、原則として経営陣全員の交替が求められる。旧経営陣に代わって経営権を掌握するのは、裁判所が選任した更生管財人だ。ただし「主要取引の金融機関が反対していない」「粉飾決算等の不正を行っていない」といった場合には、旧経営陣が更生管財人に選任され経営を継続することが可能な場合もある。

また会社更生法では必ず減資が行われる。結果、株主は地位を喪失することとなる。

●債権回収
民事再生と同じだ。

●財産の状況
財産の処分権は更生管財人が行う。民事再生と同じく会社更生においても財産の評定が必要だが、こちらの評定基準は時価とされている。

●担保権の行使
民事再生と異なり担保権も会社更生法の適用対象だ。つまり担保権も更生計画の中で担保評価がなされる。担保権者をその権利を自由に行使することはできず財産の評定額の範囲内で配当を受けることとなる。

会社更生の手続6ステップ

会社更生の手続きは以下の6つだ。

・手続開始の申立および財産保全命令、更生管財人の選任
・会社更生手続の開始決定
・財産の評定および財産目録・貸借対照表などの提出
・関係人集会の開催および債権調査
・更生計画案の作成・提出・審議
・更生計画案の遂行・終了

1. 手続開始の申立および財産保全命令、更生管財人の選任

債務者が裁判所に対し、会社更生の手続開始の申立を行う。申立が受理されると速やかに裁判所から財産保全命令が下され保全管理人が選任される。債務の任意弁済などによる財産の流出が防ぐためだ。

2. 会社更生手続の開始決定

申立から約1ヵ月後、会社更生手続の開始決定が裁判所から出される。これに伴い更生管財人も裁判所により選任。更生管財人はこの後、経営・財産管理のみならず債務者のスポンサーを探す役割を担うこととなる。このほか会社の債権者は開始決定からおよそ2ヵ月以内に自己の債権や担保権について裁判所に届け出ることが必要だ。

3. 財産の評定および財産目録・貸借対照表などの提出

更生管財人は、再生手続の開始決定が出たら速やかに会社に属するすべての財産について更生手続開始時における価額の評定を行わなくてはならない。評定が完了したら財産目録や貸借対照表を裁判所に提出することになる。このほか更生手続にいたった事情や会社の業務や財産に関する経過・現状などを記した報告書も裁判所に提出しなくてはならない。

4. 関係人集会の開催および債権調査

更生管財人は、開始決定後から約2ヵ月以内に会社の債権者や担保権者、株主等を集めて関係人集会を開催しなくてはならない。関係人集会では、更生管財人が手続経過や今後の見通しなどについて報告し債権者から会社の業務・財産管理などについて意見を集める。債権調査では更生管財人が届出のあった債権について調査をし、その認否を発表。

5. 更生計画案の作成・提出・審議

更生管財人は、4における関係人集会の1回目開催の後から約10ヵ月以内(裁判所により定められた期間内)に更生計画案を作成・提出・審議しなくてはならない。更生計画案の作成にあたっては、会社財産や債権内容の調査、事業計画の検討を行う。また更生計画案には利害関係人の権利の処理と会社事業の維持、再建の条件などを記載が必要だ。

6. 更生計画案の遂行・終了

更生計画案に基づき更生管財人が経営の立て直しや債務の弁済を行っていく。最終的に債務の弁済が終了あるいは終了することが確実と裁判所が認めた場合には、裁判所により更生手続の終結決定が出され会社更生は終了。逆に裁判所が認めなかった場合には、更生手続が廃止され会社の清算である破産手続に移行する。

期間

通常、完了まで1~3年は必要だ。大企業向けの制度である会社更生の手続自体が煩雑であることが背景にある。

更生計画案はどのように決まる?

更生計画案は関係人集会で以下のように関係者ごとの組に分かれて審議され議決をとる。

●更生債権
 総議決債権額における2分の1以上の債権者の同意

●更正担保権
 ・期限の猶予を定める更生計画案
  総議決債権額における3分の2以上の議決権者の同意

 ・減免等を定める更生計画案
  総議決債権額における4分の3以上の議決権者の同意

 ・事業の廃止を求める更生計画案
  総議決債権額における10分の9以上の議決権者の同意

●株式
 株主の議決権数における過半数の同意。ただし債務超過の場合、株主の同意は不要。

関係人集会で更生計画案の可決がされた後、債務者は裁判所の認可決定を待つこととなる。この認可決定は通常可決の即日だ。裁判所の認可決定が下りれば更生計画案が確定し、この計画に基づいて債務が弁済される運びとなる。

会社更生の過去の事例

過去、会社更生手続を行った事例として以下の企業が挙げられる。

・長崎屋(2000年)
・マイカル(民事再生手続から変更、2001年)
・ハウステンボス(2003年)
・NOVA(2007年)
・穴吹工務店(2009年)
・日本航空(2010年)
・武富士(2010年)

民事再生と会社更生の違いとは?会社更生より民事再生の方が簡単で早い

民事再生と会社更生はどちらも「再建型」だが、再建型といっても倒産手続の一つであることには変わりない。そのためどちらの手法を用いても取引先など利害関係者からの信用はかなり低下する。ただこの2つの手法の間には「会社更生は大企業しか使えないけれど民事再生は中小企業や個人も活用できる」という違いがあるのだ。

会社更生は手続きが複雑だ。経営や財産管理を更生管財人に一任しなくてはならない。手続きにはばくだいな費用がかかったり完了するまでに年単位の時間を要したりする。こういったことから制度自体は株式会社を対象としているものの実際には時間的・経済的コストに耐えうる上場企業や非上場の大企業だけが活用しているのが一般的だ。

一方、民事再生は裁判所の監督下での手続きであるものの原則として既存の経営陣と支援先の金融機関、大口取引先が主導して行う再建手続だ。手続きが会社更生ほど複雑でなく終了までにあまり時間がかからない。取引先や下請け企業などへの影響を最小限に抑えられることから中小企業や個人事業主にも活用しやすい制度となっている。

こういった違いが影響しているためか民事再生のほうが圧倒的に多く活用されているのが実情だ。帝国データバンクの調査によると2018年度の企業倒産件数は8,063件だった。このうち民事再生手続きを適用したのが252件(約3.1%)であるのに対し会社更生はたったの2件(約0.02%)のみという結果だ。今後もこの傾向は変わらないものとみられる。

文・鈴木まゆ子(税理士・税務ライター)

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