(本記事は、伊藤亜紋氏の著書『ちょうどいいお金持ちのすすめ やりたいこと・ほしいものが手に入る賢者のお金の常識』セルバ出版の中から一部を抜粋・編集しています)

お金が貯まる人は財布ではなく貯金箱を大切にする

貯金箱
(画像=Dmytro Flisak/Shutterstock.com)

●「非合理的な思想」でお金持ちを漠然とイメージしている

「長財布を持つと、お金が入ってくる」とか、「黄色い財布が幸運を呼ぶ」とか……、本当に信じていますか。

私の知る限り、お金持ちと呼ばれる人たちは、現金よりもカードを好むため、カードケースを使い、仮に現金を持っていたとしても、札束を輪ゴムで止めてカバンに入れたりしています。クレジットカードは、会社の経費用と個人用、そのほかはムダには持ちません。

ところが、お金持ちとは縁遠い人ほど、財布や支出への執着があり、日々懸命に家計簿をつけて、財布の中にはポイントカードやレシートがあふれかえっています。

家計簿を正確につけたとしても、収入が増えるわけでもなく、資産が増えるわけでもありませんから、家計簿や財布への執着は、ちょうどいいお金持ちへの道とは関係性の低いものといえます。

その上、お金と上手に付き合えない人に限って、投資はギャンブル、賃貸住宅は損、車などの耐久消費財は財産、消費は必要経費、浪費は治らない癖、借入れは悪、税金や社会保険料は取られるものという、お金が逃げていく風説を鵜呑みにしています。

当然ながら、その解釈は間違っているわけですから、お金に余裕ができるはずもありません。

●損益計算書よりも「貸借対照表」を大切にする

ちょうどいいお金持ちは、利子・配当・不動産所得のもとになる預金、債券、株式、不動産、投資信託などを資産として保有しているため、貸借対照表の資産を十分に理解し管理しているのです。運用で失敗したという話を聞いた人は、失敗する資産運用を教える人とお付合いしているのです。

簿記の勉強をされた方はご存じだと思いますが、お金の管理を行う代表的な帳票には(1)収入と支出を管理する損益計算書と(P/L)(2)資産運用と資金調達を管理する貸借対照表(B/S)が存在します。

損益計算書を家計に代用すると、年間に入ってきた所得と年間で支払った費用を書き出すことになり、一般的には給与所得や事業所得をいかに使ったかという家計簿を管理することで、収入と支出の比較を行います。

それに対して、ちょうどいいお金持ちの場合、給与や事業所得以外にも利子所得、配当所得、不動産所得などの「稼ぎ口」が複数あるため、単に家計簿のみの管理とは少々異なります。

損益計算書を財布、貸借対照表を貯金箱に例えるならば、財布へのこだわりよりも、どんな資産で、どのような所得を得るかという貯金箱へのこだわりに重きを置いているのです。

《コツ》
・ちょうどいいお金持ちになるには、財布よりも貯金箱を重視。

一括払いと分割払いの上手な使分け

●「一括払い」よりも「金利の低い分割払い」を上手に活用する

「借りたお金は早く返さなければ」、そう考えている人は少なくないと思います。そこには、分割払いすると利息分が損になるという「損得勘定」が働いて、まんまとお金にゆとりができる法則から外れた道を歩む原因になっているのです。

一方で、お金持ちは、財布ではなく貯金箱を上手に管理するわけですから、「一括払いをすると貯金箱から資産が減少する」と考えるのです。資産が働く仕組みを活用しているのですから、一時金を払い出すようなことはしません。

例えば、次の2種類から選択するとしたら、皆さんはどちらの生活を目指しますか。

(1)どんなに水を飲んでも、どんな天候下でも干上がることのないダムがある生活

(2)たらいに水をためて飲み、なくなりそうになったら飲むことを制限する生活

定年までに2000万円を貯めて、そのお金を徐々に取り崩しながら生活しなければならないとしたら、きっと残高が減っていく恐怖と不安を味わい続けるでしょう。それが、たらいに水をためて飲む人生です。

将来のお金の不安や悩みを払拭するには、「お金を貯めるのではなく、不労収入を積み上げること(枯れることのないダム)」が大切なのです。

●「積立」よりも「一時金」を上手に活用する

お金の使い方を(1)収入を生み出すもの、(2)今の生活に必要なもの、(3)支出や財産形成を平準化するものの3つに分類しました。

(1)の収入を生み出すものに資産を設定し、(3)の支払いを平準化することで、自ずと手元資金の流出を防ぎ、ジワジワとちょうどいいお金持ちへステップアップするのですが、そうでない方々は、資金の流出を急ぎ(一括支払いや繰上返済)、財産形成を積立のみで何とかしようとします。さらに、せっかく積み上げた資金を「貯めて使う」という風習で台無しにしてしまいます。

同じ支出でも、平準化できるものとできないものに仕訳して、ライフ・イベントを管理すると、住宅の頭金、お子様の結婚援助金、先進医療費などは分割支払いが困難であるのに対し、そのほかの費用はほとんどが平準化できるようになっています。

このように、できるだけ貯金箱から資金の流出を防ぐために一括払いを避け分割払いを活用することと、なかなか貯金箱に積み上げられない積立を行うことで、将来の不安を解消したように錯覚しないことが貸借対照表を管理し、不労所得を形成するカギとなります。

《コツ》
・一時金の資産化と支払いの平準化がゆとりの生活を生み出すポイント。

・積立をしていることで不安を解消した気にならないこと。

ムダ・ムラ・ムリを省く

●「公助・共助」を活用して自助努力

「社会人になったら貯蓄しなさい、保険も自分で掛けなさい」と言われたことがある人は少なくないと思います。

私が、これからの社会人に伝えるとしたら、「社会保障制度を理解し、企業保障制度も確認し、リタイアまでの年数を活用して、ずっと蓄えるペースを設定しなさい。財産形成のペースが決まったら、最後に足らずを保険で補いなさい」と伝えます。

人には長所と短所があり、共通の目的に向かって、長所を生かし短所を補い合える人たちを「仲間」と呼びます。

広義の金融にも、長所と短所があり、それらをうまく生かして補い合えば、ムダもムラもムリもせずに済みます。

ところが、社会保険は難しい、企業の福利厚生は会社には聞きづらいなどという不都合な常識が、個人の家計のムダ・ムラ・ムリを発生させる要因となっています。

●「総合家」の必要性(専門的分業の弊害)

人口が増加した時代、日本は、分業して各々が専門家になっていくことで、すべての人が働ける環境を整えてきました。

半面、専門的分業を推し進めるうちに、異なる専門間の調整であるとか、専門性が他へ与える影響だとかを考えにくい複雑な状況を産むことにもなってきました。

社会保障と企業保障、企業保障と個人の準備、社会保険と生命保険、生命保険と損害保険、貯蓄と運用、ローンと貯蓄、それらに関する税金。これらすべてを従業員が自分で判断し選択する自由があるというのは逃げ口上で、これは自由ではなく「放任」といえます。

企業は、業績向上や経費削減・資金繰りに興味はあっても、社内研修や福利厚生の説明会など、従業員の能力向上や待遇改善に関することには消極的です。

その証拠に、厚生年金基金や適格退職年金という従業員の退職後の生活を支える仕組みにおいて、保険会社や信託銀行が運用の失敗をしたにもかかわらず、その積立不足という大問題を、従業員側に押し付けるかのように、拠出型企業年金(従業員の皆さまが運用の責任を負う制度)へ切り替えてしまいました。

資産運用の知識を与えず、「形だけ整えて」従業員の福利厚生だと言っても、従業員が有効活用できる環境を整えない限り、公助・共助・自助努力のバランスがとれない状況は、これからも続くことでしょう。

《コツ》
・社会保険、企業保障、生命保険、損害保険、資産運用、資金調達、さらに受取時の税金も、すべてのバランス調整が必要。

金融取引の基本

●「金融」とは

一言でいうと「お金の融通取引」です。お金を今使わない人が、お金を今使いたい人に融通する資金移動をいいます。

例えば、預金という文字から見失いがちですが、私たちが銀行に対して資金を預けるのではなく貸し出すのです。預けるのであれば、銀行に保管手数料を支払うことになります(貸金庫)。実際は、貸し出しているので、利子所得を受け取ることになります。

また、金融取引とは、お金を貸すほうとお金を借りるほうの、資金の異なる時点間の交換取引ですから、時間差を伴います。

例えば、誰かがあるときお金を借りてから、将来のあるときに返す約束をすることや、銀行などで住宅ローンを組むこと、企業が社債を発行して10年後に返済するなど、これらはすべて金融取引で時間とお金が共存しています。

●「金融取引」の特徴

金融取引には、たとえ預貯金であろうとも、例外なくリスクが伴います。ここでいうリスクというのは、「危険」という意味ではなく、「不確実性」と訳すほうがしっくりくると思います。

お金には「保蔵機能=使うまでの時間」があるため、モノやサービスに交換するまでの間に、物価が上昇するかもしれないという不確実性が存在します。

また、預貯金や債券など、お金を貸した相手が金利の支払いや元金の返済をしないかもしれない信用リスクも存在します。

さらに、国内外の金利が変わるかもしれない、逆にせっかく高金利で貸していたのに満期を迎え継続して貸すときには金利が下がる満期リスクがあります。

不動産など、換金したくても買い手がつかない売買リスク。株式や不動産など、価格の変動が起こるリスク。円と外貨の交換レートの変動による為替リスクもあります。あるいは、取引先が破綻してしまうリスクもあるでしょう。

これらのほかに、何ら行動せず、せっかくのチャンスを逃してしまう時間逸失リスクなど、多くの不確定な要素を抑え、所得につくり替えていくことを資産運用といいます。言い換えれば、資産運用とは、10種類の不確実な要素を様々な所得につくり替える金融取引だと言えます。

巷でよく聞く、「リスクがあるのものは怖い」とか、逆に「儲け話を聞いて、結果損をした」ということ自体、基本を知ることなく取引に臨んだり、臨まなかったりしたことが原因なのです。

《コツ》
・金融とはお金の融通取引。10種のリスクを抑え、7つの金融所得を得る仕組み。

ちょうどいいお金持ちのすすめ やりたいこと・ほしいものが手に入る賢者のお金の常識
伊藤亜紋(いとう・あもん)
1967年生まれ。北九州市出身。株式会社人財コンサルティング代表取締役。大学卒業後、大手生命保険会社にて、東京で特別法人部・法人部・財務部・支社業務、その後広島で支部長を経験。29歳で退職。保険中心の日本では珍しい「所得づくりを支援するファイナンシャル・プランナー」として独立開業を果たす。1997年「ライフ&マネーネットワーク」(人生とお金と人とのつながり)を創設。2000年お金の総合学習講座「ワンズのお金の学校」創設。2001年「お金の学校プロ養成講座」開設。2005年日本ファイナンシャルプランナーズ協会主催、FPフェアにて講師を務める。2006年生存時・死亡時に加え、就労不能時の分析を可能にしたライフプランソフトを開発。2016年20周年を機に、後進に事業を譲り、単身、株式会社人財コンサルティングの業務に専念する。

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ちょうどいい お金持ちのすすめ ーやりたいこと・ほしいものが手に入る賢者のお金の常識
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