本業を中心に1社数千万円~数億円の新会社を次々に設立し、日本で最も事業多角化に成功しているオーナー経営者・ヤマチユナイテッド代表の山地章夫 氏。父の会社を引き継ぎ倒産寸前となるも、現在では50社超の会社を次々と作り上げ、グループ総売上160億円企業、利益10億円、毎年10%以上の成長を続け、実質無借金経営という、卓越した経営手法が注目されている。

JR新大阪駅から歩いて10分ほどの所に本社を構えるドクター・リセラ(株)は、「美容」「健康「」地球環境」の3つを事業領域とするビジネスを手掛けている。グループ売上は55億円、従業員数270名の会社である。

創業者の奥迫哲也社長は、島根県出身で、薬学関係の専門学校を卒業後、薬局チェーンに就職。独立して自分の薬局を開業するために、5年間毎朝、中央市場でアルバイトして開業資金を貯め、1993年29歳の時に、大阪の茨木市に、漢方を専門とする相談薬局を開業した。

しかし、主婦がスリッパを履いて、買い物かごをさげて歩くような下町で開業した奥迫社長のサロン風の薬局は、まったく流行らず、閑古鳥が鳴く日々が続いた。悪いことは続くもので、故郷の島根で大工をしていた父親が腰をいため、父親の借金1000万円、そして親戚の借金の連帯保証1000万円、加えて開業資金の借金1000万円の計3000万円の借金を独立直後に背負うことになってしまった。

奥迫社長は、薬局の留守番を妹に頼み、自分は外に営業に出かけて、仕入れたアメリカ製のダイエット食品をいろんなお店に売りにいった。それが次第に軌道にのって、5年後にはすべての借金を返済するとともに、さらに数年で3000万円の事業資金をつくり、有限会社をつくって次のビジネスを模索したのである。

最初は、貯めた資金で何か自社のオリジナル商品をつくろうと、いろんな人を訪ねて話を聞いてみたが、これというものがなく、結局、アメリカの肌再生プログラムの代理店となって、肌再生の化粧品をエステに卸すビジネスを始めた。

そもそも奥迫社長が漢方の相談薬局を開いたのは、「結果を出して喜んでもらいたい」という、こだわりがあったからだ。だから、アメリカの肌再生プログラムの化粧品を扱っていたが、やはり自社で本物の商品をつくりたいという思いは強く、2001年、100%ナチュラル成分にこだわった「アクアヴィーナススキンケアシリーズ」を開発、2年後には「ADSシリーズ」を発売して、たちまち「結果が見える化粧品」と評判を呼び、今では全国2601店舗のエステティックサロンで使われている。

3つの事業領域を深掘り

コミュニケーション
(画像=PIXTA)

この頃から奥迫社長は、自分がやりたいのは「美容」「健康」「地球環境」の3つの事業領域であると意識し、これらの3つをカラダの外からも内からも極めようと、事業の深掘りを始めた。

2004年、故郷の島根に、奥迫社長の弟さんが中心となってグループホーム「ひのき」を開所、のちに「ひのき」は(株)コンティアとして分社。これは地方のお年寄りが健康で暮らすためのホームであり、人と地域社会に役立つ事業として立ちあげた。この事業はさらに発展して、同じ島根で認定こども園を開所するに至っている。

2013年には、奥迫社長の妹さんが中心となって、こだわりのハチミツやショウガ、青汁をつくる農業生産法人リセラファームを設立。

2015年には、こだわりぬいた食材を料理するビューティーレストラン「リセラリナーシェ」を大阪の福島にオープン。自然の環境の中で放牧で育てられた牛肉や、無農薬のBLOF農法でつくられた栄養価の高い野菜を使った料理は、美容プロのドクターリセラがこだわってつくったレストランとして、とくに女性に人気となり、2店舗目のブラッスリーリナーシェも大阪の堀江にオープンさせた。

そして同年、私の会社が本部運営する「きたえる〜む」のFCにも参加された。これはお年寄りの健康を増進するための事業であり、同社の社員が責任者となって現在8店舗運営している。その同じ社員の発案で、お年寄り以外の世代の健康も支援しようと、24時間営業のフィットネス事業も始め、これも15店舗になっている。

奥迫社長は4人兄弟の長男で、兄弟全員が、同じグループで仕事をしている。連邦・多角化のメリットの一つは、親子、兄弟が同じグループの一員として、共通の価値観、同じビジョンの実現を目指すことができるところである。

現在も事業領域の深掘りによる新プロジェクトや新事業の開発は進行中で、本書が出版される頃には、さらに新しい事業がスタートしていることだろう。

奥迫社長いわく「私は多角化をはかろうと思って、いろんな事業を始めたのではなく、事業領域にこだわりをもって仕事をした結果、振り返ると多角化になっていたというのが正直なところです。今までは、出会った人とのご縁を大切にして新しいことに挑戦してきました。また故郷の島根に貢献したいという思いが強く、島根でも事業を興してきました。最近はうれしいことに、社員からこういう新しいことをやりたいから、話を聞いてほしいと言ってくるケースが増えました。社員のプレゼンを聞くと、当社の理念にそって目的が明確で、事業計画もしっかりしている。今後は社員発案の新事業が増えていくと思います」と。

100人の経営者がいれば、100通りの経営があるように、「振り返れば多角化」という経営もあるのだ。

全員がやり甲斐をもって働ける仕組み

30代,人脈
(画像=PIXTA)

私と奥迫社長との出会いは、私が書いた本『年商100億の社長が教える、丸投げチームのつくり方』がきっかけである。この本を読まれて、その内容に興味をもたれたという。

引き寄せの力が働いたのか、ある人の紹介で、私は奥迫社長とお会いすることになった。

その後、奥迫社長は社員を連れて、「多角化実践塾」に参加され、システム経営を学ばれたのである。奥迫社長は塾に参加された理由を次のようにおっしゃっている。

「結果的に多角化になっていた自分の会社の運営を今後どうするか。みんながやり甲斐をもって仕事ができる仕組み、グループとしての強みを発揮する運営の仕方が知りたかった。とくに、社長になった人への報償の出し方、どこまで権限を委譲すればいいのか。そのへんのさじ加減が知りたかった」

その後さっそく、これまでやってきた早朝勉強会と啓蒙活動に加えて、委員会制度、フレッシャーズキャンプに取り組み、社内に教育部もつくった。2年前から一人当たりの生産性を基準にした管理会計も導入していて、成果分配はいよいよ今年から始める。管理会計を入れてから、社員が割り掛けられる経費に敏感になったという。

ただし、奥迫社長は社員に数字を意識してもらう会計制度を導入したからといって、数字を目的とする経営は今後もしないだろう。

仕事を通じて、人様のお役に立つことを第一に考えている同社では、「売上」のことを「お役立ち」と呼んでいる。去年より今年の売上が上がったら、それは去年より今年のほうが人様のお役に立てたからという解釈である。

ゆえに「売上」はあくまでも結果、奥迫社長にとって管理会計を含むシステム経営の導入は、「幸せの輪を広げる」ためのものである。

ドクター・リセラは従業員の7割が女性。多くの女性社員を率いる奥迫社長は、

「女性は本当に優秀ですよ。女性に長く働いてもらうために社内に託児所などを設置して、結婚出産後も女性が働きやすい環境を整えています。会議室も里山をイメージして、緑が多い水の流れる空間にしています。仕事は女性であろうが男性であろうが、いい提案をした人には、思い切って仕事を任せます。私が細かい指示を出して、その人のヤル気を削ぐのはよくないと思っています。社員が自分で考えて、自分で行動して成功するのが一番です。任せることによって、人が育ちますから」と笑顔で話された。

包容力と思い切りのよさを兼ね備える奥迫社長、その存在自体が社員に良い影響を与えているのであろう。

書籍詳細

連邦・多角化経営

連邦・多角化経営
山地 章夫(やまち・あきお)
ヤマチユナイテッド代表
葡萄の房のように、本業を中心に1社数千万円~数億円の新会社を次々に設立する「連邦・多角化経営」を実践。日本で最も事業多角化に成功しているオーナー経営者。
父の会社を引き継ぎ倒産寸前となるも、本手法で札幌を中心に住宅・建材・インテリア・貿易・メディア関連・イベント会社・WEB制作・英会話・介護会社など、50社超の会社を次々と作り上げる。グループ総売上160億円企業の代表。利益10億円、毎年10%以上の成長を続け、実質無借金経営。
現在の氏は、修行僧のようにストイックに働く社長とは対照的に、イキイキと自主的に働く社員に囲まれ、時間に余裕をもちながら、人生も経営も心から楽しむ生活をおくっている。
そんな氏の卓越した経営手法を学びに、全国から伸び悩んでいる企業の社長や、幹部が育たないと嘆く社長、社員が楽しく働ける会社を作りたい社長などが、我社でも実践したいと連日教えを乞う。
とくに、幹部を育成する仕組みと経営技術。若手をやる気にさせる手法。グループ子会社の任せ方。儲かる新事業の見つけ方…など目からウロコの経営手法として注目されている。
■2015年度グレートカンパニー大賞受賞(船井財団主催)
■日経新聞北海道就職希望ランキング11位(2014年)
■札幌市注文住宅年間着工棟数第2位(2014年)を立ち上げ、顧客の習慣化による事業成長の仕組みづくりを実践している。


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