本業を中心に1社数千万円~数億円の新会社を次々に設立し、日本で最も事業多角化に成功しているオーナー経営者・ヤマチユナイテッド代表の山地章夫 氏。父の会社を引き継ぎ倒産寸前となるも、現在では50社超の会社を次々と作り上げ、グループ総売上160億円企業、利益10億円、毎年10%以上の成長を続け、実質無借金経営という、卓越した経営手法が注目されている。

連邦・多角化経営
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本記事は、幹部の反乱・社内クーデター、新事業の失敗、縦割り組織の弊害など、自らの経験から、試行錯誤の末、導きだした多角化の経営ノウハウをあますところなく提示する著書『連邦・多角化経営』(税込14,850円、日本経営合理化協会出版局)の第3章、P111-117から一部を抜粋・編集して掲載しています。

目次

  1. 社員の独立を支援する
  2. 波夛野社長の夢
  3. シムテム経営の導入を始める
  4. 書籍詳細
    1. 連邦・多角化経営

社員の独立を支援する

上司力
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

不動産建設会社の(株)リヴは、1998年、波夛野賢社長が30歳の時に京都市西京区で創業した会社である。

その5年前、波夛野氏は京都で不動産仲介会社をすでに経営していたが、友人が社長をしていた工務店が倒産して、その工務店をM&Aする形で新たにリヴを創業したのである。

じつは、それは波夛野社長の望むところでもあった。というのは、それまで建売住宅の販売をおこなっていて、その質の悪さを問題視していたからである。倒産したとはいえ工務店をM&Aして、自社で家を建てられる建設会社として新たにスタートすることは、波夛野社長の夢の一つだったのだ。

どこの会社でも、創業時はトップダウンのワンマン経営である。創業時の経営はそれが当たり前、リヴの場合も波夛野社長が部下に細かい仕事の指示を出し、会議は最初から最後まで社長一人が話して、社員はただそれを黙って聞いているという典型的なワンマン経営であった。そんな波夛野社長の手腕のもとでリヴは順調に成長していったが、次第に、建設期間中に仮住まいするための賃貸物件の仲介や、完成した自宅に似合う家具やインテリアのコーディネイトなど、いわゆるお客様が家を建てるところから引っ越しまで、そしてその後の修理やリフォームまで、さまざまな不動産周辺のビジネスを取り込めないかと考えはじめた。

これは、事業の上流と下流を狙う、典型的な多角化戦略の一つであるが、波夛野社長の特徴は、上流と下流のビジネスを取り込んで、子会社としてリヴが支配するのではなく、社員を次々に独立させていったことである。

現在、リヴから巣立っていった元社員が構成するリヴグループは12社。グループ全体の売上は30億円、全グループ従業員数約130人になっている。

波夛野社長の夢

お金,夢
(画像=PIXTA)

以前、私は波夛野社長に、「子会社にしなかったら、リヴさんのメリットがないのでは?」と訊ねたことがあった。

波夛野社長は「じつは私も25歳で独立する時に、働いていた会社の社長に支援してもらったんです。私もそうだったように、不動産業界はいつか一旗揚げてやろうと一攫千金を狙って入ってくる人が多い業界です。自分がそうだったように、いつか独立して自分の会社をつくりたいという社員の夢を後押ししてあげたい。そこのところは山地さんと考え方が違っています。しかしそれはリヴにもメリットがあって、リヴが子会社からいくらかの経営指導料や役員手当をもらうよりも、独立した社員の会社から家を建てたいお客様を紹介してもらうほうがはるかにメリットが大きい。

そうはいっても、昔一度、100%子会社をつくったことがあります。社員を社長に据えましたが、残念ながら、社長といっても名ばかりで、うまくいきませんでした。それ以来、100%子会社をつくって、リヴが支配するというやり方はやっていません。

じつは、私の夢はリヴから創業社長を21人つくることなんです。今のところはまだ12人で、資本関係がある所とない所がありますが、社員が独立する時、資金が足らなければ、リヴから提供します。そして毎年10%ずつ株を買い取ってもらって、はやく50%を超えて、社員がオーナーになるよう促しています。

リヴグループでは結束を固めるために、12人の社長でグループの理念をつくりました。経営計画書も12人が毎年一緒に合宿してつくり、12社合同で経営計画発表会を開いています。さらにリヴグループの役員会と称して、月に1度、会費制で会議を開いて、グループが年4回発行する情報マガジン『リヴぐる』の企画や、今後どのようにそれぞれの会社を成長させるかについて話し合っています。

一応、私がグループの代表ということになっていますが、経営はあくまでもそれぞれの社長が采配をふるい、私が支配することはありません。

なぜこういう形にしたかといえば、長くこの業界で仕事をしてきて、社員が独立する際に、お客さんを取った、取られたで、オーナーとモメて喧嘩別れするケースを多く見てきたからです。

加えて、これまでトップダウンで経営をやってきて、その弊害を強く感じるようになっていました。ワンマン経営を続けていたら、経営者的人材が育ちません。私は今年50歳ですが、将来、私の代わりに会社を率いる人がいなくなって会社がなくなるようなことにでもなれば、家を建ててくださったお客様に迷惑をかけてしまいます。息子に会社を継がせる考えはないので、会社の継続性を真剣に考えた時に、この先はワンマン経営ではダメだと思ったのです。

そういったことを一人で悩んでいる時、たまたま取引先の人に『波夛野さんがやりたいことをすでにやっている社長の講演会があるよ』とすすめられて、山地社長の講演を聞きに行きました。今でもあの日のことは忘れません、講演の当日、すごい大雨で、やっとのことで開始時間ギリギリに間に合った私は、一番前で山地社長の話を聞いて、『私が求めていたのはこれだ!』と思い、鳥肌がたちました。そのあとすぐ日本経営合理化協会主催の『連邦・多角化セミナー』を申し込み、山地さんが多角化実践塾を開講すると知って、第1期生として参加させていただいたのです」

シムテム経営の導入を始める

賃貸住宅経営
(画像=adragan/stock.adobe.com)

現在、グループの中核会社である波夛野社長率いるリヴがシステム経営の導入をすすめている。

波夛野社長の考えでは、まずはリヴで成功させて、他のグループ会社が望めば、導入してもいいという判断のようだ。ただ社員の委員会活動については、グループ内の社員の交流を促すために、新人歓迎会や忘年会、社員の家族を招待しておこなうグループ交流会、さらに年2回のグループの結束を固めるキックオフを開催している。

会社が別々だから、会社をまたいで強制的なことはできないが、グループの社長だけが交流するのではなく、グループの社員も交流したほうがいいという判断でやっているようだ。

そして2017年12月に、リヴは本社ビル「SU・BA・CO」を完成させた。

私も一度見学に行ったが、「SU・BA・CO」という名前が示すとおり、リヴから多くの人が巣だってほしいという波夛野社長の夢を実現した、素晴らしい西日本初の地上5階建ての木造大型商業ビルだった。

2階にリヴの本社事務所があり、1階には地域子育て支援NPO法人をテナント誘致している。隣には、地域の住民も利用できるお洒落なカフェスペース、そして50名収容できる多目的の明るいバンケットルームをつくり、4階には、独立した社員や一般の起業家が利用できるシェアデスクの賃貸スペース、3階、5階は賃貸オフィス、さらに屋上は、ガーデンパーティーが開けるルーフガーデンなどがある。

次々と自分の夢を形にしていく波夛野社長だが、あと10年もすれば、そろそろ次世代に経営をバトンタッチしなければならない年代にさしかかる。

波夛野社長は、「私もあと10年で60歳です。グループ社長の中にも同じ年代の社長がいますが、私たちが引退する年齢になった時にそれぞれ後継者がいなければ、グループ内で合併するかもしれません。あるいはホールディングスにする可能性もあります。そういうこともすべてグループの社長全員で話し合って決めていきたいと思っています」と。

世の中は常に変化していく。変化する状況に応じて、会社を分けたり、あるいは合わせたり、柔軟に会社の形を変えていけることが、多角化のメリットの一つである。

書籍詳細

連邦・多角化経営

連邦・多角化経営
山地 章夫(やまち・あきお)
ヤマチユナイテッド代表
葡萄の房のように、本業を中心に1社数千万円~数億円の新会社を次々に設立する「連邦・多角化経営」を実践。日本で最も事業多角化に成功しているオーナー経営者。
父の会社を引き継ぎ倒産寸前となるも、本手法で札幌を中心に住宅・建材・インテリア・貿易・メディア関連・イベント会社・WEB制作・英会話・介護会社など、50社超の会社を次々と作り上げる。グループ総売上160億円企業の代表。利益10億円、毎年10%以上の成長を続け、実質無借金経営。
現在の氏は、修行僧のようにストイックに働く社長とは対照的に、イキイキと自主的に働く社員に囲まれ、時間に余裕をもちながら、人生も経営も心から楽しむ生活をおくっている。
そんな氏の卓越した経営手法を学びに、全国から伸び悩んでいる企業の社長や、幹部が育たないと嘆く社長、社員が楽しく働ける会社を作りたい社長などが、我社でも実践したいと連日教えを乞う。
とくに、幹部を育成する仕組みと経営技術。若手をやる気にさせる手法。グループ子会社の任せ方。儲かる新事業の見つけ方…など目からウロコの経営手法として注目されている。
■2015年度グレートカンパニー大賞受賞(船井財団主催)
■日経新聞北海道就職希望ランキング11位(2014年)
■札幌市注文住宅年間着工棟数第2位(2014年)を立ち上げ、顧客の習慣化による事業成長の仕組みづくりを実践している。


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