本業を中心に1社数千万円~数億円の新会社を次々に設立し、日本で最も事業多角化に成功しているオーナー経営者・ヤマチユナイテッド代表の山地章夫 氏。父の会社を引き継ぎ倒産寸前となるも、現在では50社超の会社を次々と作り上げ、グループ総売上160億円企業、利益10億円、毎年10%以上の成長を続け、実質無借金経営という、卓越した経営手法が注目されている。

連邦・多角化経営
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本記事は、幹部の反乱・社内クーデター、新事業の失敗、縦割り組織の弊害など、自らの経験から、試行錯誤の末、導きだした多角化の経営ノウハウをあますところなく提示する著書『連邦・多角化経営』(税込14,850円、日本経営合理化協会出版局)の第1章、P17-24から一部を抜粋・編集して掲載しています。

目次

  1. 儲かっている会社は多角化で業績を底上げしている
  2. 地方豪族が頭角をあらわす時代
  3. ヤマチユナイテッドのザ100ビジョン
  4. 人生100年時代の多角化
  5. 書籍詳細
    1. 連邦・多角化経営

儲かっている会社は多角化で業績を底上げしている

わからなくなる
(画像=ra2 studio/Shutterstock.com)

「あの会社は本業以外の事業に手をだして、いま大変らしいぞ」というのは、経営者ならよく耳にする話である。そのせいか「多角化は失敗するもの、本業に専念するのが一番だ」と、思い込んでいる経営者が少なからずいる。

銀行の担当者も、多角化をすすめる会社の社長に「御社はじつにいろんな商売をやりますねえ...」と、暗に多角化を批判するような言い方をする。

しかし、いま伸びている会社をよく見ると、本業だけでなく、柔軟な発想で絶妙な多角化をすすめ、したたかに業績の底上げをはかっていることがわかる。

たまたま本業が資金の回収に時間がかかる場合、資金繰りを楽にするために、もう一つ回収の速い事業をやるとか、資金を他社に流失させないように多角化をはかりグループ会社内で資金を回すとかは、よくある多角化のパターンだが、なかには経営を複雑にしないために、携帯電話の販売代理店、ビルの掃除、人材派遣など、月額課金の事業に絞って多角化をすすめ、上場した会社がある。また駐車場、レンタルオフィス、賃貸マンションというように、借りているものをさらに貸すという事業に絞って儲けている経営者もいる。こういう会社は、一見、手掛けている事業がバラバラに見えるが、実は管理を複雑にしないように考え抜かれた、したたかな戦略があるのだ。しかし、このような多角化で儲けている中小企業の話がなかなか表に出ないために、未だに多角化のイメージが悪い。だから、私が講演で多角化の話をすると、参加された経営者から「聞いてよかった。自分のやっていることに自信がもてました」と感謝されたり、「社員から『また社長が新しいことを始めた』と蔭で嫌味を言われてましたが、山地社長の話を聞いて、胸をはって説明できます」と、元気になって帰っていかれる。

私なんかは新しいことをやっていない会社を見ると、逆に「この会社、本当に大丈夫か」と心配になるが、そう思わない人がたくさんいるようだ。

地方豪族が頭角をあらわす時代

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(画像=PIXTA)

私は現役の社長でありながら、多角化をすすめる経営者の応援団長になりたいと思っている。そのために本を書いたり講演をしたり、勉強会を主催したりしているが、地方で事業マインドに溢れる社長たちが、多角化によって確実に事業を拡大し、新たな地方豪族として頭角をあらわしつつある。

そういう地方豪族が日本各地に誕生すれば、縮小する地方経済を盛り上げ、ひいては日本経済を土台から支える存在になると信じている。

要するに、多角化は「成功した会社」と多角化に「失敗した会社」があるだけで、多角化それ自体が悪いのではない。

変化の激しい、顧客の多様化がすすむ今のような時代は、その変化に合わせて事業を展開し、「新規事業」と「構造改革」を繰り返す「変化こそ常道」の経営こそ、持続的に成長できる経営スタイルである。

よく言われる「本業に徹する」とか「選択と集中」という考え方は、最後の手段でリストラするときの戦略である。日本経済の実質成長率が1%前後の時代に、本業一つだけやって成長していくのは、下りのエスカレーターを逆に上るようなものだ。

ただし、多角化をすすめるには、経営人材を育てなければならない。また零細企業が集まったようなチマチマした会社や、横の連携がないバラバラした会社にならないために、多角化に適した経営をやらなければならないのだ。

ヤマチユナイテッドのザ100ビジョン

ビジョン
(画像=Sean Pavone/Shutterstock.com)

私は父親が北海道で創業した建材商社山地商事の二代目だが、もし父親から受け継いだ建材卸を専業としてやり続けていたとしたら、会社は確実に衰退し規模が縮小していただろう。

いや、縮小で済むならいいほうで、おそらく北海道拓殖銀行の破綻の影響を受けて潰れていたと思う。

現在、山地商事は多角化を積極的にすすめていった結果、ヤマチユナイテッドとなり、札幌を中心に17の子会社をもち、約50の事業を手掛け、グループ売上は160億円、従業員数約610名の実質無借金の会社となっている。

2007年には、「ザ100ビジョン」というグループビジョンを掲げた。

ヤマチユナイテッドの「ザ100ビジョン」とは、

1.100の事業を成功させる
2.100人の経営者を創出する
3.100事業×利益1億円=利益100億企業になる
4.100年以上続く良い会社を創る

の4つのビジョンが含まれているが、今後もこの「ザ100ビジョン」の実現を目指して、ぶどうの房のように売上数千万円から数億円規模の事業や会社を生み出し、育て、それをあたかも一つの会社のように運営する経営を、社員とともに成長しながら楽しくやっていきたいと考えている。

人生100年時代の多角化

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(画像=Daniel Tadevosyan/Shutterstock.com)

一般的に、多角化をはかるメリットをあげれば、

①規模拡大の近道になる
②事業リスクを分散できる
③社員の成長を促すことができる
④社長業に余裕が生まれる

などが挙げられるが、それに加えて、多角化は人生100年時代に適した経営法だと考えている。

私の父親は現在97歳であるが、今も元気に毎日会社に顔を出す。これといった仕事はないが、毎日会社に来ることが元気でいられる秘訣の一つになっている。

私が父親と同じように元気で長生きできるかどうかはわからないが、専門家の研究では、世界各国の平均寿命が右肩上がりで伸びていて、日本では2007年に生まれた子どもの半数が107歳より長く生きると予想されている。この数字は今も伸びていて、2014年に生まれた子どもは、その半数が109歳より長く生きるという。

まさに日本は、人生100年時代に確実に近づいているのだ。そして、人生100年時代は、経営者の生き方にも大きな影響を与えるだろう。第1図は、私が発案した「オーナー経営者の100倍楽しい経営人生モデル」である。この図は、縦軸が「年齢」で、横軸が「仕事のウエイト」だが、たとえば、40歳から50歳にかけては、マネージャーとしての仕事が減って、プロデューサーとしての仕事がメインとなり、スポンサーの役割も少し入ってくることをあらわしている。

人生100年時代に、オーナー社長が楽しい経営人生をおくるためには、年齢が上がるにつれて、「タレント」から順に「マネージャー」「プロデューサー」「スポンサー」へとステージを昇っていき、一番上の教育者や社会事業家となる「超タレント」へとステージを昇るのが理想ではないだろうか。

第1図 オーナー経営者の 100 倍楽しい経営人生モデル
(画像=第1図 オーナー経営者の 100 倍楽しい経営人生モデル)

今までオーナー社長は社長職を譲ったあと、会長や相談役になるものの、半ば引退生活に入るのが一般的だった。しかし人生100年時代になると、社長職を譲った後の人生をより充実させなければ、人生を楽しむことができない。

上のステップに上がっていくためには、オーナー社長はいつまでもトップダウンで経営の指揮をとっているわけにはいかないのだ。じつはこのことは、社員の人生にも当てはまる。社員も人生100年時代になれば、上の

ステージへ昇っていくことが豊かで楽しい人生をおくるための条件となる。じつは、多角化をすすめる会社の社長と社員は、ともに上のステージに昇っていきやすい。

私が現役の社長でありながら多角化の応援団長として活動できるのも、仕組みをつくって自分の仕事の大部分を幹部に担ってもらっているからだ。社員も、多角化によって増える経営ポストで仕事をして経営人材へと成長し、ステージを昇っていくことができる。まさに多角化は人生100年時代にも適した経営法といえる。

もちろん、多角化にはデメリットもある。管理が複雑になるとか、チマチマ病、バラバラ病に陥るなどが挙げられるが、私の経験では、多角化に失敗する大きな原因は、つまるところ、人の問題である。

本書では、4章以降で多角化を成功させる「システム経営」について述べるが、多角化のデメリットを最小にし、メリットを最大にする仕組みがあれば、成功の確率が格段に高まるのである。次からは、多角化をすすめてきたヤマチユナイテッドの軌跡を述べるなかで、私が経験したこと、失敗したことを話そう。

書籍詳細

連邦・多角化経営

連邦・多角化経営
山地 章夫(やまち・あきお)
ヤマチユナイテッド代表
葡萄の房のように、本業を中心に1社数千万円~数億円の新会社を次々に設立する「連邦・多角化経営」を実践。日本で最も事業多角化に成功しているオーナー経営者。
父の会社を引き継ぎ倒産寸前となるも、本手法で札幌を中心に住宅・建材・インテリア・貿易・メディア関連・イベント会社・WEB制作・英会話・介護会社など、50社超の会社を次々と作り上げる。グループ総売上160億円企業の代表。利益10億円、毎年10%以上の成長を続け、実質無借金経営。
現在の氏は、修行僧のようにストイックに働く社長とは対照的に、イキイキと自主的に働く社員に囲まれ、時間に余裕をもちながら、人生も経営も心から楽しむ生活をおくっている。
そんな氏の卓越した経営手法を学びに、全国から伸び悩んでいる企業の社長や、幹部が育たないと嘆く社長、社員が楽しく働ける会社を作りたい社長などが、我社でも実践したいと連日教えを乞う。
とくに、幹部を育成する仕組みと経営技術。若手をやる気にさせる手法。グループ子会社の任せ方。儲かる新事業の見つけ方…など目からウロコの経営手法として注目されている。
■2015年度グレートカンパニー大賞受賞(船井財団主催)
■日経新聞北海道就職希望ランキング11位(2014年)
■札幌市注文住宅年間着工棟数第2位(2014年)を立ち上げ、顧客の習慣化による事業成長の仕組みづくりを実践している。


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