観念論や定性的な評価だけで、それをあたかも「一般的な事実」かの如くに語る人は多い。代表例が「みんな○○だから」と使う「みんな」という枕詞だ。具体的に「みんなとは誰と誰?」と問い質すと、良くて片手、少なければ2〜3例しか出て来ないことが多い。投資信託の販売シーンならば「みんな、良い投信だと言ってますよ」などというセールストークだ。ただこの「みんな」という枕詞を真に受けて投資判断をしていたらファンドマネージャーなどという職業は務まらない。

筆者は性善説なので人が言うことを信じ易いタイプではあるが、見通しや評価には客観性を求める。これは投資判断や金融商品を選定する上では極めて重要な原則だ。きちんとデータの裏付けを取ることこそ肝要なのだ。

数字は決して嘘をつかない

投資信託,選び方
(画像=freeangle / pixta, ZUU online)

筆者が運営するFund Garageの人気コンテンツに『世界の新型コロナウイルス感染動向・国別データの分析』がある。米ジョンズ・ホプキンズ大学がリアルタイムで公表している世界の新型コロナウイルスの「感染者数累計」「死亡者数累計」、そして「回復者数累計」の国別データを使った数値分析だ。国別前日比、総人口を加味した比率、或いは「感染者数累計-死亡者数累計-回復者数累計」という計算式で「ACTIVEな陽性患者数」を算出し、毎日の動向を追っている。

結構毎朝手間暇かかるが、数値でパンデミックの状況を正確に把握して貰うにはこれが一番良い。巷間、理性的とは思えないヒステリックな議論が繰り広げられ、それに触発されて市場変動が起こる中、「みんな○○」とか「爆発的な」という定性表現は不要な予見を与えるだけだ。だが数字は嘘をつかない。どう料理するかはデータサイエンティストの能力に依存するが、どんなに誇張しようが、どんなに婉曲話法を使おうが、大声で叫ぼうが、誰にとっても数字の1は1だ。

また本来なら変化率で示すべきものを絶対値表記してみたり、「徹底的な」などと定量評価出来ない誇張表現を利用したりするのが、メディアやマーケティングの常套手段なら、賢明な投資家はその裏をかくべきだ。つまり数字で把握する。今年3月下旬の株価急落時点で底打ち判断を伝えたのも、リーマン・ショック前に「急落に備えよ!」と題したストラテジー・レポートを出稿出来たのも、エモーショナルな判断をする前に、「数値を読む」姿勢を貫いてきたからだ。

887本中に僅か5本…そして「残高減少」の謎?

さて、前回のコラムではトップ・プライベートバンカーが「信頼を寄せて頂いているお客様に提案出来る投資信託が無い」と言う現状認識を裏付け、3年前に始まった金融機関の「FD宣言」と、その精神である「顧客本位の業務運営」の真骨頂が発揮されているかの確認を目指した。利用するのは誰もが使えるインターネットだけ。

ただ残念ながら調査対象と思えたのは、直近3年間で新規設定された全公募投信887本中、僅かに5本だった。更に今回、D投信は既に残高条件で僅かこの2週間で対象から外れてしまった。念のため下記にリストを再掲する。