40代になったら「便利屋」からの脱却を
それを意識せず、「会社や上司が求めている成果を出し続ける」ことに注力すると、何が起こるか。得意なものではなく「余計なもの」が回ってくるのです。いわば「便利屋」です。得意でないものをいくらこなしても便利屋としての評価が上がるだけで、全体の評価にはつながりません。
できる40代は余計な仕事をやらず、自分の評価につながる仕事だけをやる。これがポイントなのです。
そのためにはまず、小さくてもいいので「〇〇さんは××が得意」というイメージ作りからスタートしましょう。さらに、出している成果をきちんとアナウンスする癖もつけましょう。まずは「比較的これなら強い」「比較的できるほう」というレベルで問題ありません。例えば「トラブルが起きたときの火消しならDさん」といったものでも、十分強みになります。
私のよく知る人物に「ダメ営業パーソンを引き受け、再生させる」ことに関して無敵の実績を誇る営業管理職がいます。彼のチームは営業成績としては平均的なのですが、この強みにより、彼は社内で極めて高い評価を得ています。
このように自分の強みを明確にしていくと、次第に得意な仕事ばかりが自分に舞い込んでくるはずです。そこで実績を上げれば、社内のエキスパートとしての地位を確立することができますし、万一、転職することになった場合も「自分の強み」として明確にアピールできるのです。
ブルーオーシャンは「掛け合わせ」で探せ
ただし、あなたの強みが「他の人も持っているもの」だと、埋もれてしまう危険性があります。マーケティングでいうところの「レッドオーシャン」ではなく、誰もいない「ブルーオーシャン」を目指すべきなのです。
テレビでおなじみの東進ハイスクールの林修先生は、学生時代から「数学」が得意で、最初は数学の講師だったそうです。ところが、当時の東進には大物数学講師がたくさんおり、どの科目ならトップに立てるかを考え、「現代文」を選んだそうです。
これぞまさにブルーオーシャン戦略です。自分の会社の中で誰もやっていないことは何か、独自性が出せる分野は何かという視点でぜひ、探してみてください。
この際、最も手っ取り早いのは、「合わせ技で一本」を狙うことです。
単独では「独自の強み」というほどのレベルではないけれど、それぞれを二つ、三つ合わせると「誰もやっていない強み」になるものです。歌も踊りも圧倒的ではないけれど、「歌って踊る」ことができればアイドルになれるのと同じです(もっとも最近のアイドルは、もう一つ二つ特技や個性がないと生き残れない時代になっていますが……)。
例えば私は強豪ひしめくコンサルティング業界において、「法人営業分野」に特化するとともに、「新規開拓営業」を得意分野とすることで、差別化を図ることが可能となりました。
意外な組み合わせが強みになることもあります。私の知人に「顧客とネゴれる」「技術者」がいます。技術者は内向的なタイプが多いので、この人は現場で非常に重宝されています。
どうやったら自分は「レア」な存在になれるかといった視点から考えてみるといいでしょう。いわば自分自身の「レアカード化」です。
その際、「自分の職種と一番かけはなれたイメージはなんだろう」と考えてみることが、ヒントになります。「気さくな経理マン」「税理士資格を持つ営業マン」「国際感覚を持つ?酒師」……可能性はいろいろとあるはずです。
「会社に評価される仕事」ではなく、「自分の評価が上がる仕事」だけをする。40代になったらぜひ、そのことを心掛けてほしいと思います。
大塚寿(エマメイコーポレーション代表)
(『THE21オンライン』2020年08月21日 公開)
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