偶然が生み出した格言

この格言が生まれた背景には2つの理由が考えられている。1つめは、1953年3月のスターリン暴落である。この前年の1952年、日本は戦後復興に沸いていた。特に1950年からの朝鮮戦争特需によって1952年までの3年間における契約額は、10億ドルとも言われバブルと言っても過言ではない状況だった。

ところが、その最中1953年3月5日、当時ソ連の指導者であったスターリン死亡のニュースが飛び込んできて、状況は一変する。スターリンの死亡が朝鮮戦争の終結を彷彿させ、これまでの朝鮮戦争特需もともに終わってしまうとの憶測が流れたのだ。軍需関連株を中心に売りが売りを呼び、日経平均株価は34年後の1987年のブラックマンデーまで破られることのない10%の下落率となったのだった。その後、反発はあったものの 月末にかけ下落率は21%超を記録している。

そして、もう1つは1971年8月のニクソンショックである。これは当時の米国大統領リチャード・ニクソンによって8月15日(日本時間8月16日)電撃的に発表された方針転換によってもたらされた。

ベトナム戦争や貿易赤字が膨らむ中で、米国が通貨危機を回避する政策として「金とドルの交換禁止」「輸入課徴金」「賃金や物価の凍結」などがその大まかな内容だった。1ドル360円の時代はここに終わりを告げ、この月の下落率は13%を超えたのだった。
しかし、これらの出来事が『2日新甫』だったことは検証してみても分かるように、ただの偶然だったと言わざるを得ない。


分散投資で荒れ相場を味方にする

他にこの格言が生まれた背景として考えられるのは “月曜日の株安”の影響だろう。投資家からすると『2日新甫』という格言の持つ言葉のイメージは月末よりも月初の方が高く、その2日新甫の最初に月曜株安の影響があれば安いと記憶に残った可能性は否定できない。
また2日が月曜日のため、この月は必ず13日が金曜日ある。不安から13日までに売却するとの意見もありますが何とも言えない。何にせよ、荒れ相場・下落相場での行動がその後の投資成果に大きく影響することは間違いない。

投資の世界において損を避ける上で一番有名なのが分散投資だろう。よく使われるのが卵の例である。1つのカゴに10個の卵を入れて落とした場合10個全てがダメになってしまう。しかし、2つのカゴに5個ずつ分けていれると1つのカゴを落としても5個は無事に残る。卵を資金として、カゴを銘柄にすればその意味が分かるだろう。「卵10個相当の多額の資金がない、卵は1個しかないぞ」という投資家の声が聞こえるかもしれないが、その場合は投資信託がある。

また株式投資でよく言われるのが損切りの大切さである。損切りできず買ったときよりも大幅に下落。こういった含み損で保有している株式を塩漬け株という。お金を生み出すためにお金を預けたはずなのに塩漬け株は、そのお金を他の運用にまわすことができなくなってしまう。損切り株を作らないことが株式投資の基本であり、投資家は欲に負けない決断が求められる。


アノマリーであってもリスク管理はすべし

「彼岸底」「12月の株安」「月曜の株安」などを参考に、現代ポートフォリオ理論の枠組みの下にある資産価格形成モデルでは説明されないような、経験的な規則性のあるアノマリーでリスク管理をすることも可能だ。しかし、株式市場は突然荒れる。下落する際は売りが売りを呼ぶのでチャートの形から『崖』とも呼ばれ、その下落の早さは凄まじいものがある。現物株式であれば、まだ投資資金がゼロに近づくだけだが、信用取引や先物取引などをしている方はさらに支払いが必要になる場合もでてくる。

また、先ほどの卵の例で言うと少し違った見方もできる。10個同時にダメにする可能性があるということは、10個同時に雛にかえる可能性もある訳だ。分散投資して5個が雛にかえるより、10個が雛にかえった方が大きい利益を手にすることができる。
しかし、市場が好調なときに大きな利益に目が奪われ、分散投資には目もくれず資金をつぎ込み、その銘柄が大暴落して株式市場から退場した人は数えられない程いる。また、これが一つの退場パターンとも言える。

今回の「2日新甫が荒れる」が実態のないアノマリーであっても「荒れる」と聞いたときに、分散投資や損切りなどのリスク管理はどうかと自分自身に聞き返すきっかけにしてほしい。

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