(本記事は、八木龍平氏の著書『成功している人は、なぜ聞き方がうまいのか?』日本文芸社の中から一部を抜粋・編集しています)

話したい気持ちを抑える

マネジメント,人間関係,リーダーシップ
(画像=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

●話したいのに話せないジレンマ

「聞く」ことを妨げる大きな要素は、「話したい」欲求です。

へたにアドバイスをしようとしたりせず、まずは相手の話を聞くことに専念するべきなのは、すでにご理解いただいているでしょう。

とはいえ、それでも、何かを言いたくなることがあるのは当然です。ただ聞き続けるのはなかなか大変なことですから。

問題は、この「話したい」気持ちにどう対処するかです。

こんな経験はないでしょうか。

Aさん、Bさん、あなたの3人で談笑している。その日はAさんが面白い話をしていて、Bさんとあなたは主に聞きながら笑っていた。

途中から、あなたは「この話題なら、あの話をしたい!」となった。話そうとしたら、Bさんが先に話して、Aさんとの会話が盛り上がった。

あなたはじりじりと、「あ〜、話したい、でも話せない」とジレンマに陥ります。

しばらくして、ようやく話せるタイミングが来たので、話し始めます。「俺も面白い話があるんだよ」とばかりに。

でも、残念ながら、周りは微妙な空気になり、スベってしまった……。

会話の場で「話したいオーラ」が溜まったときに限ってスベるという現象、きっと身に覚えがあるのではないでしょうか?

●メモは話したいことを脇に置くツール

「話したいオーラ」を出したときにスベりやすいのにも理由があります。

何か面白いことを思いついたら、当然話したくなります。けれども、他の人が話しているのをさえぎって話すのは失礼です。

そこで、話したいことがある人は自分が話してもいいタイミングを必死でさぐりつつ、話したい内容が頭の中をぐるぐる回ります。

話すタイミングを判断すること、話したい内容を覚え続けることに、脳のリソースを全部使ってしまうのです。

するとどうなるか。

いま、話している人の話を聞く余裕がなくなります。話の内容を理解したり、空気を読んだりする余裕がなくなるのです。

対話の中での面白い話、スベらない話というのは、これまでの他の人の話がつくってきた流れやリズムにうまく乗っている話です。

自分の話したいことばかりに気を取られて、人の話は上の空だったら、自分が話したときに、これまでのリズムと合わなくてスベるのは当然ですね。

「話したい」という気持ちにとらわれると、それだけで相手の話を聞けなくなります。

だから、自分が話したい気持ちが湧き上がったら、それをいったん脇に置くといいですね。

具体的には、話したいことを思いついた瞬間、

「いけない、これでは相手の話をちゃんと聞けないぞ。いまは聞くことに集中!」

と意識するだけでも、この失敗は避けられます。

メモをとりながら話を聞けるような場面なら、自分が話したくなったことをメモして、「後で話せたら話そう」と忘れてしまうのもいい手です。

メモは相手の話を記録するだけでなく、自分の話したいことを「いったん脇に置く」ためのツールにもなりうることを覚えておきましょう。

「聞いていますシグナル」を出す

●本当に聞いているかよりも大切なこと

聞き方の姿勢は、「何かをする」というよりは「余計なことをしない」方向性であるとお気づきの方もいるかもしれません。

すぐに反応しないで、待つ。気の利いた質問や手助けする質問をせずに聞く。アドバイスや意見、解決策をもとめず、ただ受け入れる。自分の言いたいことは、脇に置く……というようにです。

プロのカウンセラーの世界でも、カウンセリングの技術を使うことよりも、クライアントのまとまらない話をただ聞くことが成功につながっていた、というユージン・ジェンドリンの研究も紹介しましたね。

実際、聞き上手になるために学ぶべき技術は、それほど多くはありません。

あえて言えば、「ちゃんと聞いている」と伝えることが9割です。

「私はあなたの話を聞いていますよ」と、相手にわかってもらうことが、聞き上手になる最も大事な技術です。

たとえば、話しているときに相手がうなずいていれば、「この人は私の話を聞いてるな」と思います。話を聞きながらメモを取ってくれているのも、「ちゃんと聞いている」シグナルと感じられるでしょう。

聞き手になるときには、こういうシグナルを意識的に出して、相手に「ちゃんと聞いています」と伝えることが大切です。

極端に言えば、本当に聞いているかどうかよりも、「聞いていますシグナル」を出すことのほうが大切、と言ってもいいくらいです。

●正確な記憶や理解は必要ない

聞き上手になることを目指すワークショップなどでは、しばしば参加者が2人ひと組になってお互いの話を聞くワークをします。

そのときに、ちゃんと話を聞けているかをチェックするために、聞き取った相手の話の内容をまとめて発表したりもします。

これができるようにするには、話を正確に記憶(あるいは、メモなどで記録)していなければいけません。

これはこれで悪い練習法ではないのでしょう。

しかし、私たちが目指す「聞き上手」像からすると、相手の話を正確に記憶することは実はそれほど重要ではありません。

むしろ、記憶・記録に必死になって、話し手とリズムやテンポを合わせる余裕がなくなってしまうのはまずい。

しっかり内容を記憶・記録しようとすると、「尋問モード」が出てしまうこともあります。

「それはいつですか?」「それ誰のことですか?」「それってどれですか?」「さっきの話、もう一度お願いします……」

聞き上手であるためには、つまり相手が安心して話せるようにするためには、「話の内容」よりも「話しているその人」に向き合うことのほうが大事なのです。

いま話してくれている内容を、正確に覚えておく必要はない。共感する必要もないし、すぐわかった気になる必要もない(ネガティブ・ケイパビリティです)。

ただ、「ちゃんと聞いているよ」というシグナルだけは伝えよう。

そんな気楽な姿勢で聞くほうが、相手にとってリズムの合う話しやすい聞き手になれるのです。

逆に、いくら話の内容を記憶していても、相手が「ちゃんと聞いてくれている」と感じられないような態度では、聞き上手にはなれません。

話を聞くときは、うなずく、あいづちを打つ、といったリアクションをちゃんと返すようにしましょう。まずはそのことを心がければ十分です。

リアクションがいまいちうまくいかなかったとしても、最後に「話してくれてありがとう」「いいお話でした」といったポジティブな感想を述べるだけでも、相手は「よく聞いてもらえた」と感じることもあります。

とにかく、なんらかの形で「ちゃんと聞いているよ」と伝えることが大事です。

成功している人は、なぜ聞き方がうまいのか?
八木龍平(やぎ・りゅうへい)
1975年京都府生まれ。武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・兼任講師。北陸先端科学技術大学院大学で博士号(知識科学)を取得。富士通研究所にて「聞き方のメソッド」を開発後、作家に転身。

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