「配当金の確定申告は必要なのか?不要なのか?」と迷う方もいることでしょう。

上場株式の配当金に関しては、確定申告は原則として不要です。ただし、総合課税あるいは申告分離課税を選択して確定申告することで、節税になるケースがあります。

この記事では、配当金の確定申告について、節税対策につながる申告方法を解説します。

配当金の確定申告は、すると有利になるケースがある

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(画像=promolink/stock.adobe.com)

上場株式の確定申告は、申告不要制度を利用すれば原則として不要です。多くの方は証券会社の取引口座を「特定口座(源泉徴収あり)」としていることでしょう。この場合には申告不要制度が適用され、配当金は所得税と復興特別所得税、および住民税が源泉徴収されたうえで支払われます。「面倒な確定申告はしたくない」と思う方は、この「特定口座(源泉徴収あり)」を利用すれば何もしないでOKです。

ただし、総合課税あるいは申告分離課税を選択して確定申告すると、以下のとおり節税となるケースがあります。

・総合課税での確定申告 …課税所得が900万円以下の場合は所得税が節税になる
・申告分離課税での確定申告 …株式の売却損との損益通算・向こう3年間の損失繰越ができる

このそれぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。

配当金の確定申告をしないケース(源泉徴収あり)

「特定口座(源泉徴収あり)」を利用している場合には、配当金が支払われる時点で所得税と復興特別所得税で15.315%、住民税5%、合計20.315%の税金が源泉徴収されています。したがって、確定申告は不要です。「確定申告は面倒」と思う場合は、これを利用するのが良いでしょう。

総合課税で確定申告すると節税になるケース

総合課税とは、配当所得のほか給与所得や事業所得、不動産所得など、すべての所得を合計したうえで所得税額を計算するものです。総合課税を選択して確定申告することで、以下の2つのケースで節税になります。

1. 基礎控除の範囲内しか所得がない場合

所得の合計額が基礎控除の範囲内しかない場合には、確定申告をすれば源泉徴収された所得税、住民税がともに還付されます。

2. 所得が900万円以下の場合

所得の合計額が900万円以下の場合には、所得税のみを総合課税で確定申告し、住民税については申告不要とすることで節税できます。なぜならば、総合課税では「配当控除」が受けられるため、所得税については900万円までは税率が低くなるからです。

配当控除の税率は、所得税・住民税のそれぞれにおいて以下のとおりとなっています。

・課税総所得が1,000万円以下 …所得税:10%、住民税:2.8%
・課税総所得の1,000万円を超える部分 …所得税:5%、住民税:1.4%

この配当控除の税率を、所得税と住民税のそれぞれの税率と一緒に見てみましょう。

【所得税の場合】

課税総所得額所得税率配当控除正味税率源泉徴収税率
195万円以下5%10%0%15%
195万円超~330万円以下10%10%0%15%
330万円超~695万円以下20%10%10%15%
695万円超~900万円以下23%10%13%15%
900万円超~1,000万円以下33%10%23%15%
1,000万円超~1,800万円以下33%5%28%15%
1,800万円超~4,000万円以下40%5%35%15%
4,000万円超45%5%40%15%

※所得税・源泉徴収税の税率はいずれも復興特別税は含めていません。

上の表をみるとわかるとおり、課税総所得額が900万円以下までは、所得税率から配当控除を差し引いた正味税率が、源泉徴収税率より低くなっています。それにたいして、1,000万円超の場合は源泉徴収税率のほうが高くなっています。

したがって、課税総所得が900万円以下の場合は、所得税に関しては、総合課税で確定申告したほうが節税になります。

【住民税の場合】

課税総所得額住民税率</td>配当控除正味税率源泉徴収税率
1,000万円以下10%2.8%7.2%5%
1,000万円超10%1.4%8.6%5%

住民税の税率は、課税総所得額によらず、道府県民税4%と市区町村民税6%を合わせて10%です。ここから配当控除を差し引いても、1,000万円以下の場合も1,000万円超の場合も、上表のとおり源泉徴収税率より高くなります。

したがって、住民税については総合課税にせず、申告不要制度を利用して源泉徴収するほうが節税になります。

申告分離課税で確定申告すると節税になるケース

申告分離課税とは、総合課税のように他の所得と合計せず、配当所得のみを分離して確定申告することです。申告分離課税による確定申告が節税になるのは、株式の売却損が出ている場合です。

申告分離課税で確定申告することにより、売却損と配当所得の損益通算が可能となります。また、損益通算しても売却損が相殺しきれなかった場合には、向こう3年にわたって、売却損を繰り越すこともできます。

「特定口座(源泉徴収あり)」でも、口座内での損益通算はしてくれます。しかし、他の口座との損益通算はできません。また、損失を翌年以降に繰り越すこともできません。

したがって、以下の場合には、申告分離制度を選択して確定申告すると節税になるのです。

・複数口座を利用している場合に、そのどれかの口座で売却損が出た
・売却損を翌年以降に繰り越す必要がある

配当金の確定申告方法はケースバイケースで決めよう

配当金の確定申告は、「特定口座(源泉徴収あり)」を利用している場合には原則として不要です。しかし、課税総所得が900万円以下の場合や、売却損が出ている場合は、確定申告したほうが節税になるケースがあります。確定申告するかしないか、およびその方法は、ケースバイケースで慎重に決定しましょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。(提供:Wealth Road