本記事は、楠本和矢氏の著書『トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口』(イースト・プレス)の中から一部を抜粋・編集しています。

デザイン
(画像=PIXTA)

それとわかるデザイン

商品やそれに付随するものに、明らかにそれとわかる「シンボリックな特徴」を持たせることで、商品自体に広告塔の役割を果たさせる方法

事例

▼コードレスイヤホン

Bluetooth機能を使ったあるコードレスイヤホンは、いたずらに小型化/デザイン性だけを追い求めるのではなく、麺類が耳から出ているような、個性的(見方によっては奇異)なデザインを採用。他の何物でもない、明らかにそれとわかる商品デザインが、一種の「広告塔」となり、ユーザーが外で着用することが、商品認知に貢献していく構図をつくった。

▼長距離ランニングに特化したシューズ

ソールに新素材を使い、反発力を高めたランニングシューズが、駅伝等の長距離アスリートに広く浸透。このシューズの色は、アスリートがそれを履いていることが一目瞭然となる、特徴的な1色のみ。ある大型大会で、8割近くの選手が「明らかにそれとわかる靴」を履いていたことで極端に目立ち、さらにメディアが取り上げるという結果につながった。

解説

この方法は前述の「1. ユーザーを広告塔に」と趣旨は似ています。多くの人がその商品を装着/携行しているのを見て、「あれは何だろう?」と気になってしまう心理を活用したものです。

そのような効果を発揮するためには、単純ですが、一目でそれとわかる個性を有し、そして周囲に対して「目立つ」デザインや形状であることが必要になります。また、前述の事例のような、装着/携行型の商品でなかったとしても、周囲に目立つ方法で「そのユーザーであること」自体を示してもらう方法もあります。

ベースにある理論

▼バンドワゴン効果

人気を多く集めていることがわかると、元々関心がなかったにもかかわらず、興味を示してしまう傾向のこと。

本アプローチでは、「1. ユーザーを広告塔に」と同様に、明らかにそれとわかるデザインで「多くの人が使っていて、気になる」という好感認知を生み出すことを狙います。

▼ヴェブレン効果

それを購入した自分をアピールしたいという欲求が働き、高額な商品を購入したいと考える傾向のこと。

本アプローチでは、明らかにそれとわかるシンボリックなデザインで、その心理をさらに喚起することを狙います。「高額なもの」を買う心理の活用が当該理論の原義ですが、個性的なもの、先進的なものを選んでいる自分をアピールしたい、という心理も加味しています。

適用条件

▼装着/携行することができる商品であること

携行/着用型の商品であれば活用法をイメージしやすいでしょう。その商品/サービスのユーザーであることを示すためのアイコンをバランス良くデザインするという高難度なクリエイティブ作業が伴います。

必然的に万人から受け入れられるようなデザインから離れてしまう可能性があるため、エッジの効いたデザインにも納得感を持てるような、高い商品価値があることは前提です。

また、携行できなくても、そのユーザーであることを目立つように示せる方法があれば、検討の余地はあります。

活用イメージ

▼テーマ:「新しく開局したFM放送局」の認知度を高めたい

そのFM局の存在を広く知らしめることが最優先課題ですが、すでに多くのリスナーに支持され始めているという事実も、上手く伝えていきたいと考えています。しかし、FMというのは電波であり、それ自体を可視化することはできません。認知を獲得しながら、人気を可視化するという狙いを達成するために、どのような方法が考えられるでしょう?

▼活用例

FMを聞く場面の多くは、車の運転中でしょう。そこで車を「多くの人の目に付く情報接点」として位置付けてみます。例えば、希望するリスナーに、そのFM局の名前と周波数が目立つ、デザイン性の高い小さなステッカーをプレゼントし、それを車のリアガラスに貼ってもらうという方法はいかがでしょうか。後ろを走るドライバーからは、前走する車のドライバーが、そのFM局のリスナーであるということがわかります。それを頻繁に見かけることで、「今流行っているFM局を自分も聞いてみよう」という気にさせることを狙います。

実はこのキャンペーン、ずっと昔、ある新しいFM局が実際に展開した取組みなのです。実際、本当に多くの車にそのステッカーが貼られていました。当時私は中学生でしたが、マーケティングなど何も知らないながらに「非常に秀逸なキャンペーンだな」と思ったものです。

トトリガー 人を動かす行動経済学26の切り口
楠本和矢
マーケティング戦略アドバイザー。プロフェッショナルファシリテーター/作家
大阪府立茨木高校、神戸大学経営学部卒。 新卒で総合商社の丸紅に入社。新人の年に、自身が提案した新規事業開発担当となり、国内初の某領域ビジネス立ち上げに成功するも、事業推進における「マーケティング」の重要性を痛感し、その世界へ転身。その後、某コンサルティング企業のトップコンサルタントとして最前線にて活躍。顧客との「垣根を越えたパートナーシップ」をポリシーに掲げ、数々のプロジェクトを成功に導く。
クライアントPM、プロジェクトメンバーとの対話を通じて実効性のある戦略を引き出し、メンバーを効率良く動かしていく「ファシリテーション型」の進行を得意とする。現在は、当該領域におけるクライアント内製化を目的に、人材開発や組織開発に関連する取組みにも注力。
企業内研修講師としては、直近3年で、300回以上の企業内研修やセミナー、講演等を実施し、平均満足度は98%を超えるなど、数多くの企業から熱い支持を受けている。その先にある、作りあげたいものとは、「一人一人の知恵や経験が存分に引き出され、存分に活用されている社会」。それを自身のミッションとして捉え、日々邁進している。

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