本記事は、大澤希氏の著書『先代は教えてくれない 二代目社長の生き残り戦略: 今あるものを「捨てる」覚悟 「守る」使命』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています

二代目社長の本当にやりたいことの見つけ方

孫社長のYESを10秒で連発した 瞬速プレゼン
(画像=PIXTA)

受け継いだ会社をリソースと捉えて自分がやりたいことをやるといっても、何をやったらいいかわからない、という二代目社長も多いと思います。

二代目社長の多くは意欲的で勉強熱心。ですから、やりたいことを見つけようとする時、新しいことを学ぼう、新しいものを取り入れよう、新しい何かをつけ加えようという視点になるのではないでしょうか。よくあるのは資格を取ったり、新しいスキルを身につけたりと、外に何かを求めがちなことです。

しかし、新しいものをつけ加えたからといって、物事がうまくいくわけではありません。もちろん、資格取得や勉強が無駄とは言いませんし、必要がないということではありません。しかし、資格を取ったからといって、それだけで、新しいビジネスが大きく動き出すというケースは、そう多くはありません。

本当にやりたいこと、自分が目指したいビジョンやミッションは、自分の外にあるわけではないのです。すでに自分の中にあるのです

私はそのことを、エグゼクティブ・メンタルトレーナーと呼ばれる秋山ジョー賢司さんのコーチングを受けて痛感しました。秋山さんは、企業の経営者などにコーチングを行っています。

私が受けたのは、CMP(コアミッションプログラム)というものです。まず、自分の過去の経験を洗い出し、成功体験も失敗体験もすべて崩し、自分が思い込んでいたこと(ビリーフ)を書き換えていきながら、「何のために生きるのか」「どこに向かうのか」といった人生の核となるコアビジョンやコアミッションを言語化していきます。

もちろん、私自身、こういったテーマは、これまでにも学んだり、考えたりしたので、ビジョンやミッションをもっていなかったわけではありません。しかし、秋山さんのコーチングを受けて、きちんと自分と向き合ったり、今までとは違った視点で経験を振り返ったりするためには、専門家の力を借りたほうが効果的だと実感したのです。

欧米の経営者は、コーチングのプロをつけているケースが珍しくありません。ところが日本では欧米ほど一般的ではありません。決して金額は安くはありませんが、コーチングに投資する価値は極めて大きいと思います。

私は、コーチングを受けたあと、「顔つきが変わった」とまわりに言われたくらい自分自身が変わりました。そして、今でも私の経営の伴走者として、秋山さんにはおつき合いいただいています。経営者にはこうしたメンターの存在が必要です

いくつかのコーチングサービスを試してみたり、プロのコーチではなくても、信頼できる経営者に定期的に時間をとってもらい、自分の振り返りやフィードバックなどのサポートをお願いしたりするなど、自分に合う人をメンターにもつことをおすすめします。

変化へ適応できる二代目だけが会社を伸ばす

あなたのまわりにも、先代から受け継いだ会社をつぶしてしまった二代目社長がいるのではないでしょうか。会社を伸ばす二代目。会社をダメにする二代目。この違いはいったい何でしょうか。

私は「適応」だと思います。環境に適応できるかどうかが、最大のカギを握っているのです。環境とは、法令や規制、制度、ルールなど、会社を取り巻く様々な条件です。

例えば、近年、わが国は、国を挙げて「働き方改革」を進めています。有給休暇の5日間の取得が義務化されたり、残業時間の上限が原則月45時間になったりしました。

しかし、中小企業の社長には「そんなことをやったら会社がつぶれちゃうよ」「中小企業がそんなこと、できるわけないだろ」と吐き捨てる人が多いのです。私の父もそういうタイプでした。時代の変化にあらがう経営者の企業は、地球の気候変動に適応できずに滅びた恐竜と一緒です。環境は変わっていきます。これはどうしようもありません。

働き方改革と逆行して、「有休は取らせるべきではない」「残業を増やせ」という方向に世の中が進むでしょうか。まずありえません。環境は、間違いなく働きやすい職場づくり、いや、より少ない時間でより大きな成果を出せる働き方へのシフトが進んでいきます。この変化する環境にどう対応するのか。これを考えなければならないのです。

そこにあらがっていては滅びるだけ。順応するしかありません。「新しい環境でやるんだ」と決断できない社長が会社をつぶすのです。

有給休暇の取得も残業削減も、やると決めれば、意外とできてしまいます。ですから、私は社員に「有休を100%消化しよう」と言っています。パートさんにも、あらかじめ有休をシフトに組み入れることで計画的かつ確実に取得するよう伝えています。

わが社は、有給休暇の一斉取得という国の法改正に備え、3年前から5日間の有給休暇一斉取得を設定しています。さらに今年からは有給休暇とは別に、誕生日休暇、結婚記念日休暇、恋人や家族など大切な人とともに過ごすためのロマンス休暇を付与しています。

まだ有休消化率が100%にはなりませんが、環境の変化に適応すると決めれば、何とかなるものです。

2020年4月にコロナウイルスの感染拡大防止のため、緊急事態宣言が発令されました。人との接触を避けるため、様々な業種が休業し、多くの企業は在宅勤務という措置を取りました。これによって、オンラインでの会議や商談が珍しくないものとなりました。

そんな中、いまだにオンラインよりも直接会うことが良いという視点から物事を見ている経営者もいます。もちろん、直接会ったほうが商談でもコミュニケーションでも良い面は多いですし、オンラインでのやり取りが難しい業種もあります。

しかし、時代が変わり、オンラインでも良い、オンラインでもできるということに社会全体が気づいてしまいました。

そのような前提のもと、やり方を変えていく決定ができる社長と、今までの古き良きやり方にこだわりすぎる社長とでは、経営戦略に大きな差がつくようになるでしょう。

お客様も、市場も、そして時代も、わが社の都合を待ってはくれないのです。生き残るためには、環境の変化に適応すると決めて、手を打つしかありません。

先代は「大企業じゃないんだから、そんなのムリ」と言うかもしれません。そうした古い考えをそのまま受け継ぐか、環境に適応するか。これが会社を伸ばすか、ダメにするかの分かれ目になるのです。

先代は教えてくれない 二代目社長の生き残り戦略: 今あるものを「捨てる」覚悟 「守る」使命
大澤希(おおさわ・けい)
株式会社フィールドプロテクト代表取締役社長。1971年生まれ。埼玉県狭山市出身。中学、高校と野球に熱中し、高校3年時の夏の甲子園大会に捕手として出場。明治大学に進学し、六大学野球を経験。卒業後も東芝府中で社会人野球の選手として活躍。1996年、株式会社フィールドプロテクトに入社し、古紙の回収業務やビルメンテナンスなど、現場の仕事を覚えることからスタート。父で先代社長である譲司氏の片腕として会社を支える傍ら、地域活動にも精力的に取り組む。2007年には狭山青年会議所理事長として、子どもたちの生きる力を育む「むさし100km徒歩の旅」を立ち上げ、青少年育成に11年間取り組む。2009年には青年会議所の埼玉ブロック協議会会長、2010年からは青年会議所の国際資格であるJCIトレーナーとして地域の経営者のリーダーシップなどの研修活動を行う。2016年4月、現職の代表取締役に就任。アソシエイトの資格をもつ「エマジェネティックスⓇ」や研修経験を生かし、人材育成と仕組み化に取り組み、多角的経営にチャレンジしている。普段の自分が通用しない世界で自分をコントロールする力を学べることから3年前よりスキューバダイビングを始める。座右の銘は自身のモットーである「今の自分で勝負する」に通じる「This is me!」。愛読書は小説の『イリュージョン』。

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