本記事は、安田正氏の著書『超一流の強運力』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています
「どこに向かって歩くのか」を決める
「夢」を持つことは「強運」に欠かせません。
ここでの夢とは、私たちが歩くときの「目的地」のようなものです。たとえば、朝、仕事へ行くために「駅」に行く、夜、仕事から戻るために「家」に帰る、あるいは買い物のために「スーパー」へ行くなどです。
歩くプロセスが目的の散歩であってもそうです。散歩にも「目的地」があります。思いのままプラプラ歩いたとしても、最終的には必ず「家」に戻るでしょう。
このように、人が歩くときには必ず「目的地」があります。
もし、人が全く「目的地」なく、最終的に「家」に戻るつもりもなければ、途中で「一体私はどこへ行きたくて歩いているのだろう」と思って、きっと歩くことをやめてしまうでしょう。
この点が「強運」へ向かって歩く場合も同じです。
「強運」になるには、 「目的」―何のために「強み」を活かすのか、または、 何ができたら自分は「強運」だと確信できるのか― が明確でなければなりません。
そしてその「目的地」へ向かって強みを活かしながら歩いていくことが、「強運」への道なのです。
強運の人はみんな「夢」を持っている
ここで、先人の例を見てみましょう。やはり、運が強かった人たちはみな、「夢」を持つことから、強運への道を歩き始めたことがわかります。
たとえば、冒頭でも例として挙げた松下幸之助さんは、「日本中の母親を家事から解放してあげたい……」、そんな思いからパナソニック(旧・松下電器産業)を興しました。これが強運になるための「夢」です。
最初は身近な母親への思いでしたが、やがて日本中の母親への思いへと広がっていきました。そして、何十年もかけて壮大な夢を実現していったのです。
ソニーの創業者の一人である盛田昭夫さんの「夢」は何だったでしょうか?有名なエピソードとして、こんなことがあります。
まだソニーがトランジスタラジオしか作っていなかった頃、その商品をアメリカに持っていくと、「OEM(オーイーエム)だったら売ってあげます」という返事だったそうです。
つまり下請けとなり、ソニーの名前を伏せてアメリカの会社の商品として売るということです。あの当時、日本の多くのメーカーがそうしていました。
しかし、そんな決断を迫られた盛田さんの返事は「NO」でした。
そして、ソニーの名前で、自ら売り出したのです。
といっても当時はまだ無名の、商品といえばトランジスタラジオしかない中小企業です。売上は伸びず、苦戦を強いられたことは想像に難くありません。
それでも、盛田さんは踏ん張り、工夫に工夫を重ねて売り続けました。決断を迫られたとき「OEMでいいです」と返事をしていたら、それほどの苦労はなかったでしょう。
しかし、そうしていたら世界に名だたるあのソニーは生まれなかったかもしれません。
私から見ると、盛田さんは目先の売上より、「この会社を世界一にして、ソニーの名を世界に知らしめる」、そんな「夢」を選んだということだと思うのです。
そのとき、うまくいくという確信があったかといえば、決してそうではなかったでしょう。しかし「夢」に向かって、独自に歩く道を選択し、努力をしたことが、「運が強い」ということになったのです。
おそらく、多くのオリンピック金メダリストもそうでしょう。「オリンピックで金メダルを獲る」という夢を掲げ、まずは、日本一の選手になることを目指します。そのために、地域や地区大会で優勝→都道府県大会で優勝→全国大会で優勝、と昇り詰めていく。
そんな発展のプロセスをたどりながら、何年もかけて、膨大な練習量を積み重ね、金メダリストになっていくのです。
こうして、夢に向かって努力をし、階段を上っていくことが「強運」につな がっていきます。逆にいえば、夢がない人はこの強運の物語の主人公にはなれ ません。
ですから、まずはあなたの「夢」を決めることから始めましょう。
それは壮大でなくても、身近なことでも大丈夫です。
「夢」のスケールは、今あなたが置かれている立場、経験値、実績、また好きなことや幸せだと感じることによりますから、他人と比較する必要は一切ありません。むしろ、他人の目は気にすることなく、自分自身を見つめ、本当に望んでいること、本音を洗い出しましょう。
いずれにしても、「夢」がないと、いったい何に向かって「運」を強めていったらよいのか、また、自分の「運」が強まっているのか、それとも弱まっているのかも、わかりようがありません。
「夢」があってこその「強運」なのです。
強運ポイント
「強運」になるための第一条件は、明確な「夢」を決めること。
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