本記事は、小次郎講師の著書『小次郎講師式 世界一わかりやすい投資の勝ち方 ~チャートメンタルズ分析~』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています

ファンダメンタルズ分析とチャート分析

チャート分析
(画像=PIXTA)

皆さん、株価がどうやって決まるかをご存知ですか。それは、まず「この価格であれば買う」「この価格であれば売る」という需要と供給のバランスが取れたところで決定します。そして、決まった直後には「その価格をどう判断するか」という需要と供給のバランスが再び取られて価格が決まり、その連続で上昇したり下降したりします。

その価格決定メカニズムの背景には、現在の株価と本来の価値との比較が行われています。割安だと判断されれば需要が増加し、割高だと供給が増加します。では、その判断や分析はどのように行われているのでしょうか。

株式市場における株価分析の手法は、大きく分けて「ファンダメンタルズ分析」と「チャート分析(テクニカル分析)」に分けられます。まずは、この2つの手法の違いを理解するところから始めます。ファンダメンタルズ分析とは何か、チャート分析とは何か、まずはここから見ていきましょう。

●ファンダメンタルズ分析

ファンダメンタルズ分析は、景気動向や企業の財務や業績見通しなど、様々な価格変動要因を分析します。実際には、分析内容が多岐にわたります。また、金融政策に伴うマネーサプライや為替、金利、コモディティ(プラチナ、小麦、銅など、商品取引所で取引される商品)などからの分析もそうです。

これらを総合的に分析して将来の株価を予測します。昨今では、世界の経済情勢や政治情勢なども考慮して多角的なデータに基づいて分析し、そこから今の株価が割安なのか、それとも割高なのかを判断して投資の材料とします。

その予測価格の中心は「需要」と「供給」の関係になります。売り手と買い手の力関係は、概ね取引の70%が需給、20%がトレンド、10%が人気や思惑によって決まります。ファンダメンタルズ分析はその70%を占める需給を分析するわけですから、やはり一番の基本であり重要な分析手法となります(図1-1)。

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(画像=『小次郎講師式 世界一わかりやすい投資の勝ち方 ~チャートメンタルズ分析~』より)

●チャート分析

チャート分析とはチャート(株価や出来高を図示したもの)を使って相場の現状を分析する手法です。市場の動きやファンダメンタルズの内容が、チャートにすべて織り込まれているという考えに基づいています。そして、チャート分析は将来を予測する手法というよりは現状を分析するほうに重要性があり、その現状分析の中でエッジ(優位性)がある状態を探し出すことがチャート分析の基本なのです(図1-2)。

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(画像=『小次郎講師式 世界一わかりやすい投資の勝ち方 ~チャートメンタルズ分析~』より)

なぜチャート分析か?

ヘッジファンド(複数の金融商品に分散化して高い運用収益を得ようとする代替投資の1つ)や機関投資家[個人投資家らの拠出した資金を有価証券(株式・債券)などで運用・管理する社団や法人、保険会社、投資信託会社など]などのプロトレーダーは、すでに世界中にネットワークを作り上げていて、最新かつ膨大な情報を集めています。それと同様の情報を一個人トレーダーが収集することは不可能です。

つまり、プロと情報戦を戦っても質・量ともにかなうわけがありません。我々個人トレーダーに情報が入ってきたときには、既にその情報はマーケットに織り込まれています。また、ファンダメンタルズ分析を基にトレードルールを構築するにしても株式価値が不透明で、業績予測は困難を極めます。

将来性も見通せない状況下で、「どのような条件になったら買う」「売る」「利食いする」「損切りする」あるいは「様子を見る」などの決め事を構築することは、非常に難しい作業です。

一流のトレーダーなら誰もが独自のルールを持っています。しかし、ファンダメンタルズ分析を基にルール化することが難しいということは、仮に今年上手くいったとしても毎年安定的に上手くいくかはわからないのです。

一方で、チャート分析はチャートを使って分析します。そのチャートは価格形成の軌跡によって出来上がります。価格は売り手と買い手、つまりそれぞれの需給バランスで決まります。価格が決まった時点では、売りと買いのバランスが取れているということです。その価格が上がるだろうと考えているトレーダーと、下がるだろうと考えているトレーダーのバランスが取れているということになります。

ところが、抵抗線や支持線といった多くの人が意識する価格帯を超えたとき、またはそのバランスが崩れたときに、「買い方優勢」「売り方優勢」という状況が一時的に発生します。それを買い(または売り)にエッジがある状態といいます。

チャート分析では買いシグナル、売りシグナルが明確に出ます。故にトレードルールの構築はファンダメンタルズよりも簡単にできます。また、内部関係者などしか知らない情報があったとしても、チャートを見れば何かが起きていることがわかるのです。ここにチャート分析の大きなメリットがあり、なぜチャート分析かという答えが出ています。

将来の値動きを完璧に予測できるチャート分析の手法はありません。チャート分析にもデメリットはあります。チャート分析による買いシグナル、売りシグナルにはしばしば「ダマシ」(上昇シグナルが上手く機能しない、下落シグナルが上手く機能しないというように、シグナルと実際の動きが一致しないこと)があります。

またチャート分析は種類が多く、どれを使ったらいいのかがわかりずらいということもあります。チャート分析で買いシグナルや売りシグナルが出たら、ファンダメンタルズにどういう変化が起こったのかを確認しましょう。なぜならファンダメンタルズ分析では、企業の業績もさることながら、経済発表などそれぞれの変化が数字で確認できるからです。それが正しければ、チャートの中に必ずその影響が表れるはずです。

チャートの中に何も兆候が出てこない場合は、それは大した材料ではなかったということです。もしチャート分析とファンダメンタルズ分析に逆のシグナルが出た場合は、トレードするにあたり細心の注意が必要となってきます。トレードを仕掛けないか、すぐに市場から逃げる準備をして仕掛けるかです。

このように、ファンダメンタルズ分析もチャート分析にもそれぞれ、メリットとデメリットがあることを理解しましょう。ただ、トレードルールの構築においては圧倒的にチャート分析が有利であることを認識しましょう。そして、このようにチャート分析とファンダメンタルズ分析の両面を分析する手法を、私は「チャートメンタルズ分析」と名づけ、両方を確認することで精度の高い分析を行っています。

小次郎講師式 世界一わかりやすい投資の勝ち方 ~チャートメンタルズ分析~
小次郎講師(こじろうこうし)
株式会社手塚宏二事務所代表/小次郎講師投資塾々長チャート分析研究/トレード手法研究家/トレードコーチ日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト1954年岡山市生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。約30年の外務員経験後にIT会社へ転身、チャートソフトの開発や投資家教育に取り組む。2015年独立。タートルズのトレード手法をベースとした独自の分析法を駆使し、チャート分析の第一人者として、セミナーや書籍などを通じて個人向けの投資教育活動を展開。2000人を超える門下生からは専業トレーダーも多数輩出している。ライフワークは「日本に正しい投資教育を根付かせること」「勝てる投資家を一人でも多く育てること」。著書に、『小次郎講師流 テクニカル指標を計算式から学び、その本質に迫る 真・チャート分析大全 ――安定投資家になるためのエッジの見つけ方』(パンローリング株式会社)、『儲かる! 相場の教科書 移動平均線 究極の読み方・使い方』(日本実業出版社)、『数字オンチあやちゃんと学ぶ 稼げるチャート分析の授業』(総合法令出版)などがある。

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