新型コロナウイルスの感染再拡大により、景気回復期待が後退しつつある東京株式市場は、一進一退の取引が続いています。

ただ、株価の動きが鈍い現在のような局面こそ、狙いを定めていた投資テーマや銘柄への投資チャンスと言えるかもしれません。折しも、4/15(木)に台湾に拠点を置く世界最大の半導体メーカーであるTSMC(台湾積体電路製造)が好決算を発表し、設備投資計画を上方修正しました。

半導体市場は好不況を繰り返すシリコンサイクルに翻弄されてきましたが、成長が持続する“スーパーサイクル”に入ってきた可能性が膨らんでいます。そこで、今回は、新年度の株式市場で中核的な相場テーマとして浮上が期待される半導体関連株を取り上げました。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん

世界最大の半導体メーカーTSMCが設備投資計画を増額で、世界的な半導体需要の増加

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

台湾の半導体メーカーTSMCは“世界最大の半導体ファウンドリー”です。

半導体メーカーには、設計や開発に特化するファブレスメーカーが多く存在していますが、同社はそうしたファブレスメーカーの多くから製造を受託することに特化している会社です。

顧客はアップル、クアルコム、エヌビディアや、ソニーなど世界の電子機器、半導体メーカーとなります。

TSMCの設備投資動向は、世界の電子機器や半導体メーカーの生産計画を反映しているとされ、TSMCが設備投資を増やす時は、世界的な半導体需要の増加が見込まれます。

当初、TSMCは2021年の設備投資計画を250~280億ドルと見込んでいましたが、4/1(木)に3年で1,000億ドルを投資する計画を明らかにしました。さらに、4/15(木)には好決算を発表するとともに、本年の投資額を300億ドル上方修正することを発表しています。

すでに韓国のサムスン電子が2021年に280億ドル規模の設備投資を表明し、米国でもインテルが今後数年間で200億ドルを投じ、新工場を建設し、ファウンドリー事業に参入することを明らかにしています。

半導体メーカーが大規模な設備投資をするということは、クリーンルームを含め、製造装置などの需要増加を意味します。

日本には世界的な競争力を有する半導体の製造装置や素材などの関連銘柄が複数存在します。

そこで今回は、そんな関連銘柄を以下のスクリーニング項目で絞り込み、抽出しました。

(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額1,000億円以上の銘柄であること。
(3)事業内容や取引先から「半導体」関連銘柄として妥当であると考えられること。
(4)アナリスト3名以上がカバーし、業績予想を公表している銘柄であること。
(5)3年後(再来期)の予想純利益(市場予想)で計算された予想PERが20倍未満であること。

上記のすべての条件を満たす銘柄について、「3年成長率」の高い順に掲載したものが図表2となります。

図表1 増加を続ける世界半導体売上高と半導体株価指数

増加を続ける世界半導体売上高と半導体株価指数

期間:1998/1/31~2021/3/31(月次)
※Bloombergデータ、WSTS(世界半導体統計)データをもとにSBI証券が作成。

ナリストが中期的に高い利益成長を予想している半導体関連銘柄
(画像=SBI証券)

図表2 アナリストが中期的に高い利益成長を予想している半導体関連銘柄
コード / 銘柄 / 株価(2021/4/14) / 営業利益(百万円)前期 / 営業利益(百万円)再来期 / 3年成長率 / 3年後予想PER
<6967> / 新光電気工業 / 3,460 / 3,227 / 35,666 / 1005.2% / 18.8
<6902> / デンソー / 7,059 / 61,078 / 514,336 / 742.1% / 13.8
<5301> / 東海カーボン / 1,771 / 7,858 / 52,500 / 568.1% / 12.3
<7735> / SCREENホールディングス / 11,300 / 12,561 / 42,835 / 241.0% / 19.4
<6407> / CKD / 2,527 / 5,230 / 14,509 / 177.4% / 16.6
<3436> / SUMCO / 2,688 / 37,897 / 85,450 / 125.5% / 13.1
<4004> / 昭和電工 / 3,455 / -19,449 / 103,245 / ※95.3% / 11.9

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「3年成長率」は再来期の予想営業利益(市場コンセンサス)前期営業利益で割って計算しました。
※「営業利益」の「再来年度」はBloomberg集計の市場コンセンサス。 ※昭和電工は前期営業利益が赤字のため、今期予想営業利益52,859百万円から再来期の103,245百万円までの成長率を「3年成長率」として掲載しています。

掲載銘柄の投資ポイント

ここでは図表2に掲載した銘柄について、投資ポイントをご紹介します。

新光電気工業(6967) パッケージ技術でインテルを支援。当面高成長が続く予想。

半導体パッケージメーカーです。

イビデン(4062)と共に、インテルなど半導体メーカーを主要顧客としています。

半導体メーカーは競争力向上をめざし、回路の線幅をいかに狭くするかなど、微細化でしのぎを削っています。例えば、複数のダイを1つのパッケージに収める“チップレット”も重要な技術の1つとされており、高い技術力を有する日本企業の存在意義が高まっています。

営業利益は2020/3期32億円から、2021/3期214億円、2022/3期289億円、2023/3期は356億円と増益基調が続く予想(市場コンセンサス)です。

新光電気工業(6967)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

デンソー(6902) 自動車のEV化・電動化を半導体でリード。

トヨタ自動車が24%、豊田自動織機が8.8%の株式を占めるトヨタ系の自動車部品最大手。グループ外への販売も拡大傾向にあります。

バイデン米大統領が環境政策重視へ舵を切ったこともあり、世界で自動車のEV化や電動化への流れが加速。同社の電動化システムや、ADAS(先進運転支援システム)への注目度も高まりつつあります。

昨年、同社が51%、トヨタ自動車が49%を出資し、次世代車載半導体の研究を行う合弁会社が始動。EVやHVなどの燃費性能を左右する「パワー半導体」が得意分野です。

市場予想営業利益は2020/3期610億円(実績)に対し、2021/3期は1,707億円、2022/3期は4,261億円、2023/3期は5,143億円と予想されています。

足元進行中の円安も追い風になりそうです。

デンソー(6902)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

東海カーボン(5301) 世界シェア80%の半導体製造向け材料の成長に期待。

国内では、昭和電工(4004)に次ぐ、黒鉛電極の大手企業です。

鉄鋼(電炉)の主要材料で、世界経済の減速と鉄鋼の需要減で2020年12月期は営業赤字になりました。なお、タイヤの補助剤で国内トップシェアのカーボンブラック事業もこの期は減益でした。

シリコンウエハの回路を形成する際、不要な酸化膜を除去する炭化ケイ素に使用する材料(ソリッドSiC)は世界シェア80%を有します。こうした半導体向け材料は成長期待分野であり、東京エレクトロンやサムスン電子などを顧客としています。

2020年12月期の営業利益は78億円でした。市場では、黒鉛電極やカーボンブラックの回復により、2021年12月期は225億円へ増益となる予想で、2022年12月期は461億円、2023年12月期は525億円を見込みます。

東海カーボン(5301)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

SCREENホールディングス(7735) 枚葉式半導体洗浄装置で世界シェア45%、微細化対応もリード。

写真を形成する無数の細かい点を作り出す部材(スクリーン)が社名の由来とされています。

CTP(印刷用刷版出力)装置で世界シェア33%、枚葉式半導体洗浄装置で同45%、ディスプレイ製造用コータデベロッパーで同61%など、主力事業以外にも市場シェアの高い製品を有していることが強みです。

半導体製造における前工程の30%は洗浄です。そのため、半導体製造において洗浄装置(推定1台1億円~10億円)は重要な設備の1つです。

この製造過程で必要とされる回路の幅は7ナノ、5ナノが量産レベルとされる中、同社はさらに微細化した3ナノの開発をほぼ終えている状況です。

営業利益は2020年3月期が125億円で、市場では2021年3月期225億円、2022年3月期352億円、2023年3月期428億円と予想。会社中計では2024年3月期売上高4,000億円、営業利益率15%(600億円)を想定しています。

SCREENホールディングス(7735)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

CKD(6407) 自動化装置が祖業。流体製造装置等が半導体製造向けに拡大期待。

真空管や蛍光灯の製造装置からはじまり、およそ50万アイテムにも及ぶ自動化装置が祖業です。CKDの製品の多くは、薬品や食品の包装機械や寿司のにぎり機など、生活の裏側で幅広く活躍しているものばかりです。

半導体や液晶ディスプレイ、太陽電池など、多くの製造工程において、液体やガスを正確に制御し、量を調節する技術を必要とします。半導体需要の高まりによって、これら技術の成長が期待されており、同社は8月までに生産能力を25%増やす計画です。

また、半導体メモリの領域で、3D-NANDの記憶容量を増やすべく、多層化が進むとみられ、CKDが関連する装置の設置台数が増えることも期待されています。

2020年3月期の営業利益は52億円。市場では2021年3月期66億円、2022年3月期112億円、2023年3月期145億円と予想しています。

CKD(6407)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

SUMCO(3436) 半導体品需要の拡大・品不足の継続と業界の寡占化進展が追い風か。

半導体の最も重要な材料といえるシリコンウエハを生産しています。

半導体用ウエハの世界シェアは信越化学(4063)に次ぐ、第2位です。

なお、第3位の台湾グローバルウェーハズが、第4位の独シルトロニックを買収手続きのため、年内にはSUMCOを抜き、第2位に浮上する見込みです。

合併後の上位3社の世界シェアは計9割近くとなり、むしろ寡占化の進展からウエハメーカーの値上げ要請が容易になりそうです。

同社はSBI証券 企業調査部がカバレッジしており、営業利益は2020年12月期378億円から、2021年12月期は460億円、2022年690億円、2023年12月期930億円の予想(3/1時点)です。

主力の300ミリウエハはロジック半導体向けで供給不足が続くほか、200ミリウエハは車載品や民生品向けが急回復しており、2022年頃まで品不足が続きそうです。

SUMCO(3436)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

昭和電工(4004) 買収した半導体封止材大手の日立化成(旧)がフル寄与へ。

黒鉛電極の国内最大手企業です。

黒鉛電極は鉄鋼(電炉)の主要材料で、世界経済の減速と鉄鋼の需要減少により、2020年12月期は価格が大幅に下落しました。

2021年12月期も原料価格とのスプレッドの面では厳しさが残りますが、販売数量改善などにより、採算は回復傾向が想定されます。

半導体チップを覆う封止材大手の日立化成を買収し、2020年7月以降「昭和電工マテリアルズ」として連結化。のれん償却費(344億円)の影響を除けば、2021年12月期は半導体関連中心の機能材料事業で実質400億円を稼ぎ出すことが期待されます。

同社につきましても、SBI証券 企業調査部がカバレッジしており、営業損益は2020年12月期の194億円赤字から、2021年12月期500億円の利益、2022年12月期770億円、2023年12月期920億円の予想(3/4時点)です。

昭和電工(4004)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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