収入・財産が増えると、途端に税の負担も大きくなります。そのため海外に資産を移したい、タックスヘイブンと呼ばれる税金の安い国に移住したいと考える富裕層もいることでしょう。ところが近年、資産を海外に移したり、財産を持ち出して海外に移住したりしようとしても、うまくいかないことも多いようです。それはなぜなのでしょうか。ここでは、タックスヘイブンへの移住や、海外口座への資金移動の注意点についてお伝えします。
海外に資産を移す方法 節税対策はタックスヘイブンでは難しい
日本では、所得の多い人がたくさんの税を支払う累進課税制度がとられています。現在、日本の所得税の税率は、所得が4,000万円を超えると45%です。つまり、所得の多い人はその半分近くを所得税として国に納めなければなりません。
なんとか税の負担を軽くしたいと考えた時、海外に資産を移す方法としてタックスヘイブン(租税回避地:スイスなど)に資産を移動することで税の負担が軽くなるという話を思い出すかもしれませんが、それも今は昔の話です。政府は、富裕層の資産が海外に流出しないように、資産が移動されても課税できる「タックスヘイブン規制」を強化しています。
では具体的に、どのような規制が設けられているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
国外に財産を移動する場合
財産を国外に移動して、その年の12月31日時点で国外財産が5,000万円を超える場合には、国外財産調書を国税庁に提出することが義務付けられています。国外財産の種類、数量、価額などを記載した国外財産調書を、翌年の3月15日までに所轄の税務署長に提出します。
正当な理由もなくこれを拒否すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
平成27年度税制改正により、国外転出時課税制度が創設され、平成27年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。)をする一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税されることとなりました。
引用:国税庁
CRS(共通報告基準)に日本も加入
世界各国の口座情報を自動的に交換して、資産の透明化を図ることができる「CRS(共通報告基準)」に日本も加わったことにより、富裕層の海外口座の資産状況も、国税庁がはっきりと把握できるようになりました。
5,000万円を超える資産を海外に移動した時には、国税庁に指摘される前にきちんと国外財産調書を提出するようにしましょう。
平成27年度税制改正により、平成29年1月1日以後、新たに金融機関等に口座開設等を行う者等は、金融機関等へ居住地国名等を記載した届出書の提出が必要となります。
国内に所在する金融機関等は、平成30年以後、毎年4月30日までに特定の非居住者の金融口座情報を所轄税務署長に報告し、報告された金融口座情報は、租税条約等の情報交換規定に基づき、各国税務当局と自動的に交換されることとなります。
引用:国税庁
国外財産における相続税・贈与税のルールも見直し
これらのことから、富裕層とその資産を国外に移動させまいとする国の方針が見て取れます。さらに、相続税対策のために海外に移住していた富裕層にも相続税が課税されるよう、2017年には相続税・贈与税の国外財産に対する納税義務の見直しがなされています。
これまで国外財産を相続する場合、親子ともに「5年」を超えて国外に在住していれば、日本の相続税が課税されることはありませんでしたが、法改正により5年から「10年超」へと変更され、相続税・贈与税における租税回避への対策がより厳しくなりました。
相続税・贈与税の課税を避けるためにタックスヘイブンへ移住しようと考えている人は、親子ともに10年間以上移住するのは現実的なのか、よく考える必要がありそうです。
海外渡航にかかる1回1,000円の出国税
さらに2019年1月からは、出国税が課せられることになりました。正式には国際観光旅客税というもので、日本から海外に渡航する場合、1回につき1,000円を国に納める必要があります。出国税は国籍に関係なく、外国人にも課せられるもので、基本的には旅行代金や航空券に上乗せする形で徴収されます。
タックスヘイブンへ移住した後、日本と海外を行き来する生活をしようと考えている人は、出国税という形で多くの税を支払う可能性があります。
税制についてよく理解してから移住を考えよう
このように、日本では富裕層の資産の流出と租税回避を防ぐため、次々と新しい対策が取れられています。海外に行けば税がかからないと思いきや、結局多額の税を支払う羽目になってしまったということにならないよう、各種規制や税制についてよく理解してから海外移住を考えてみましょう。
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