本記事は、伊庭正康氏の著書『できる営業は、「これ」しかやらない 短時間で成果を出す「トップセールス」の習慣』(PHP研究所)の中から一部を抜粋・編集しています
「お客様マニア」になれているか?
100冊の本を読むだけでは、トップセールスにはなれない。お客様を知り、提案に活かすべく100冊読めば、トップセールスへの門は開く。
●お客様に興味を持てないのは致命的
「お客様のことに興味が持てない」といった悩みを聞くことがあります。
私は営業する上で、これは致命的だと感じます。
「患者」に興味を持てない「医者」、 「生徒」に興味を持てない「先生」、 「従業員」に興味を持てない「社長」、 そして、「顧客」に興味を持てない「営業」。
興味を持てないと、いくら知識をつけてもうまく活かせないでしょう。
いくら100冊の本を読んで、知識はバッチリだとしても、お客様のことに興味が持てない営業だとしたら、お客様は満足しません。
では、お客様に関心が持てないときはどうすればよいでしょうか。
簡単です。もっとお客様のことを知ることです。
ここでは、お客様に関して知るべき「3つの観点」について紹介をします。
●「人マニア」になる
個人営業はもちろん、法人営業においても、お客様の「人として」の面に興味を持つことは絶対に必要です。
次の観点で知ると、“人となり”が見えてきます。
・お客様の「過去」を知る(どんな経験をされてきたのか) ・お客様の「現在」を知る(どんなことに注力されているのか) ・お客様の「未来」を知る(やってみたいこと、ありたい状態)
私も経験があります。
ぶっきらぼうで怖い社長のお客様がいらっしゃいました。
少し雑談ができそうな雰囲気になったので、聞いてみました。
「社長はどうして、今のご商売を始められたのですか?」(過去)
すると、「もともとは暴走族で、その後、営業マンをしていた」とのこと。俄然、興味津々になり、「どうして、そこからここまで?」と経緯をうかがうことに。
その流れで、社長の今の趣味がクラシックの音楽鑑賞であることや、ゴルフを始めたけれどスコアの平均が130でセンスがないといった隠れた一面も知りました(現在)。
さらに、「今後は会社をもっと大きくしていきたい」(未来)という夢をうかがってからは、社長をただの「顧客」としてではなく、「人」として興味を持つようになったことを思い出します。
すべてのはじまりは、知ることでしかありません。
●「商品マニア」になる
お客様が「どんな商品」を「どんな思い」で使っているのか、について詳しく聞いてみるといいでしょう。次のことを聞いてみてください。
・「どんな商品」を使い、どんな「評価」をしているのか? ・「3つの不(不便なこと、不満なこと、不安なこと)」はないのか? ・「もっとこうなると嬉しい」と思っていることはないのか?
現在の私は営業を受ける立場ですが、これらの質問を受けたことはほとんどありません。営業をしてきたからということもあるのでしょうが、私はこう判断します。
「この人は売ることに興味はあるけど、顧客には関心がないのだな…」と。
それでも、10人に1人ぐらいは関心を持ってくれる人がいます。
そのような人にはプロ意識を感じますし、やはり良い仕事をしてくださるので、私は紹介もしますし、惜しみなく発注もします。
さて、確認です。あなたは、すべてのお客様に進んで「不」を聞いているでしょうか。
実は、案外、そのことを聞くのに勇気がいるのも事実。
でも、そこを怖がっていてはいけないのです。ぜひ聞くようにしてみてください。
●「会社・事業マニア」になる(法人営業の場合)
法人営業の場合は、「会社」についても知る必要があります。
その会社の従業員になったレベルで、その会社のことを知ろうとし、愛着を持つことにトライをしてみてください。トップセールスの多くはそうしています。
具体的には、次の内容を教えていただくといいでしょう。・設立年、創業のいきさつ
・過去の主力商品、現在の主力商品、これから伸ばそうとしている商品 ・消費者の変化(年齢、嗜好など) ・ライバル企業の動き、新規参入の兆きざしはないのか ・今、課題とされていること(事業レベル、マネジメントレベル、業務レベル)
ホームページにほとんどのことが載っていますので、まずは確認しておきましょう。その上で、あとは実際の状況をお客様に教えてもらうのです。
こちらが興味を持つと、いろいろなことを教えてくださいます。
営業マン時代、こんなことがありました。あるレストランチェーンのお客様でした。
創業の地は都会の一等地。それは、創業者のお母様の唯一のアドバイスによるものでした。なけなしのお金で、一等地に4畳半の狭小なお店を開業。すると、大繁盛。
その後、店舗を増やし、その時期に今の幹部の皆様が入社。
様々なぶつかりあいもあったものの、決めたことがあると言います。
「たとえ薄利になっても、食材の原価は落とさない。味の追求への気概にブレはなく」
そのこだわりが圧倒的な競争優位性につながり、今では100店舗の会社に…。
そうしたお話をうかがって、すっかりファンになりました。
営業はお客様のファンにならないと務まらないと感じます。
ビジネス知識の勉強も大事です。でも、お客様のことを好きになることが先。
興味を持てないと、まず良い仕事はできません。
【Point】 お客様のことを知らずして、他の知識を蓄えても、それはしょせん机上の学習でしかない。
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