本記事は、伊庭正康氏の著書『できる営業は、「これ」しかやらない 短時間で成果を出す「トップセールス」の習慣』(PHP研究所)の中から一部を抜粋・編集しています

トップセールスは、なぜ「完璧」を狙わないのか?

70%
(画像=japanachai/PIXTA)

「必死になってつくったギャグより、とっさに出たギャグのほうがウケたりします」
芸歴40年、村上ショージの言葉。(※②)

※②zakzak by 夕刊フジ「【村上ショージ】芸歴40周年『僕の今があるのはさんまさんのおかげ』」(2016年12月2日)

●万全の準備より大事なこと

営業に出かける前に、失敗がないよう万全を期して、あれこれ資料を準備する──。

そんな営業マンを見て、トップセールスはこう思います。

「時間をかけるのはそこではない」と。

トップセールスは、準備に時間をかけすぎることを“悪”とします。

準備は70点程度でいい。30点は「軌道修正力」で乗り越えるしかない、と考えます。

もちろん、しっかり仮説を立て、準備はします。

でも、70点程度でよいと考えるのです。

というのも、商談は「なまもの(生もの)」だから。

先週うかがった話が今週には変わっていた…なんてことは当たり前のようにありませんか。

「大丈夫と思っていた上長の稟議が下りなかった」
「社長に稟議を上げてもらおうと思っていたら、社長が緊急で海外に出張に行ってしまった」

いくら準備をしていても、思うようにならないのが営業です。

それは自然災害のようなもので、必ず想定外は起こるのです。

だからこそトップセールスは、準備は70点で十分と考えます。

残りの30点はその場の対応で乗り切るもの、と割り切っているわけです。

●スピードには3つの種類がある

SAQという、「速さ」を表す概念があります。

Sは、スピード(Speed:速さ)…歩く、タイピングなど、動作の速さのこと。
Aは、アジリティ(Agility:敏捷さ)…想定外の状況に対応する俊敏さ。
Qは、クイックネス(Quickness:反応速度)…返事を速くするなど、対応の速さ。

もちろん、営業はすべてを兼ね備えておきたいところですが、トップセールスになるために特に必要なのは、Aのアジリティです。

「大丈夫と思っていた上長の稟議が下りなかった」と言われてしまった場面で考えてみましょう。

トップセールスたちは、その場ですぐに他の対応を考え、提案します。

「ということでしたら、来期にまたぐ納品にするのはいかがですか?」と。

その言葉が出るまでに、3つ程度の代替策が頭に浮かんでいたりもします。

「来期にまたがる納品にすると、費用は半々で済む」ことを伝えようか、
「他の部署と同時購入にしていただいたら、費用は折半で済む」ことを伝えようか、
「今月にご契約をいただけたら、特別な特典を付けられる」ことを伝えようか…と。

この流れで、せっかくの商談をムダにせず、契約のチャンスにつなげるのです。

準備を万全にするより、アジリティの高さが現場ではモノをいうことがよくわかるでしょう。

●アジリティを高めるために、やっておくべきこと

では、どうすれば、アジリティを高められるのでしょう。

条件があります。それが次の3つ。

【アジリティを高める条件】
・顧客の特性、課題を理解していること
・交渉力を身につけておくこと(「ハーバード流交渉術」などを学んでおく)
・「裁量」を持つこと(値引きだけではない)

この3つが揃ったとき、“あの手この手”を繰り広げることができるようになります。

ではここで、この本で初めて触れることになる、「裁量」を持つことについて、説明します。

イチイチ上司におうかがいをたてて、その返事に2日もかけてしまっていたら、チャンスを失います。

そもそも、お客様は、ある程度の裁量を持つ営業と付き合いたいと考えています。

もちろん、「値引き」だけが裁量ではありません。

上司や社内の関係部門を動かすことであったり、
商品を特別仕様にすることであったり、

できる範囲のことで構いません。それも裁量に含まれます。

だからこそ、普段からやっておいていただきたいことがあるのです。

案件ごとではなく、「ここまでは常に自己判断でOK」というように、上司に「裁量」を預けてもらうようにしてみてはいかがでしょう。

私も営業時代はやっていました。

前職の求人広告の営業では、会社のルールで絶対に値引きはできませんでしたので(社長ですら値引くことはできない)、お店の宣伝を編集ページで取り上げることや、別の商品のモニターキャンペーンのご案内など、できる範囲で裁量をもらうようにしていました。これだけでもずいぶんと効果があります。

営業マンがイチイチ上司におうかがいをたてる姿は、お客様から見たとき、頼りない印象を与えます。「ハズレの営業マン…」と思われても仕方がありません。

裁量を持つ営業と取引したい、と考えるのがお客様です。

ぜひトライしてみてください。

時短になることはもちろん、あなたの信頼度が増すこと間違いなしです。

【Point】
完璧を狙うより、アジリティを高める努力をするのが正解!

できる営業は、「これ」しかやらない 短時間で成果を出す「トップセールス」の習慣
伊庭正康(いば・まさやす)
株式会社らしさラボ代表取締役。1991年、リクルートグループ入社。求人事業の営業に配属。営業としては致命的となる人見知りを、4万件を超える訪問活動を通じ克服。年間を通じての全国トップ表彰を、プレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で4回受賞。社内表彰は累計40回以上。その後、営業部長、関連会社の代表取締役を歴任。2011年、研修会社「らしさラボ」を設立。営業力強化、リーダーシップ、フォロワーシップ、タイムマネジメント、ストレス対策などの研修・講演・コーチングを実施。特に、その人「らしさ」を活かし、営業マンや営業リーダーのパフォーマンスを飛躍的に向上させる手法が評判を呼び、年間約200回の企業研修を行っており、そのリピート率は9割を超える。また、誰もが受講でき、世界5,000万人が受講するWebラーニング「Udemy」でも、営業をはじめとしたコンテンツを提供。ベストセラーコンテンツとして紹介されている。著書に、『できるリーダーは、「これ」しかやらない』『トップ3%の人は、「これ」を必ずやっている』(ともにPHP研究所)、『目標達成するリーダーが絶対やらないチームの動かし方』(日本実業出版社)、『結果を出す人がやっている! 仕事を「楽しくする」方法』(明日香出版社)ほか多数。日本経済新聞、ビジネス誌から女性誌まで、幅広くマスコミでも紹介されている。※無料メールセミナー(全8回)「らしさラボ無料メールセミナー」、YouTube:研修トレーナー伊庭正康の「ビジネスメソッド」も好評。

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