サラリーマンを卒業し、個人事業主として独立したいと思っている人もいるだろう。そのような人は、「今後どのように売上をあげていこうか」「事業に関する経費はどれくらいかかるだろうか」といったことは十分考えているはずだ。
しかし、健康保険料は意外と見落とされやすい。サラリーマンだと、原則として企業が保険料の一定割合を負担してくれるが、個人事業主は全額自己負担となる。
今回は「個人事業主として独立したい」と思っている人に向けて、健康保険について解説する。
国民皆保険制度とは
現在の日本の医療保険制度は、すべての国民が何かしらの公的医療保険に加入し、お互いを支え合う「国民皆保険制度」だ。保険証があれば原則として3割負担で、どの医療機関でも受診できることを当たり前と思っている人は多い。しかし海外に目を向けると、先進国でも民間保険中心の国もあり、無保険の国民を多く抱える国もある。
1955年頃までは、日本でも農業や自営業者、零細企業従業員を中心に国民の約3分の1に当たる約3,000万人が無保険者だった。そこで1958年に国民健康保険法が制定され、1961年に全国の市町村で国民健康保険事業が始まり、「誰でも」「どこでも」「いつでも」保険医療を受けられるようになった。
個人事業主はどうすれば良いのか
前述のとおり、すべての日本国民は何かしらの公的医療保険に加入しなければならない。会社員や公務員の場合は、健保組合や協会けんぽ、共済組合などに加入することになる。また、75歳以上の人は後期高齢者医療制度に加入する。
しかし、75歳未満の個人事業主は上記の保険には加入できず、自分で加入できる保険を探し、自分で加入手続きをしなければならない。ここでは、個人事業主の4つの選択肢について解説する。
(1) 任意継続する
退職する会社で加入していた健康保険を継続する方法だ。申請は、自宅の住所を管轄する全国健康保険協会の都道府県支部で行う。ただし、「資格喪失日の前日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること」「資格喪失日から20日以内に申請すること (20日目が営業日でない場合は翌営業日まで) 」という条件がある。
被保険者期間は任意継続被保険者となった日から2年間で、任意でやめることはできない。また、正当な理由なく納付期日までに保険料を納めない場合は、納付期日の翌日で資格を喪失する。在職中は保険料の一定割合を会社が負担してくれるが、退職後は全額を自分で払う必要があるため注意が必要だ。
(2) 家族の扶養に入る
健康保険は被保険者だけでなく、被保険者に扶養されている家族にも保険給付を行う。この家族を「被扶養者」と呼び、親や配偶者など健康保険が定める条件を満たすと、家族の扶養に入ることができる。
被扶養者は原則として保険料が不要だが、年間収入が130万円未満という条件があるため、独立後の準備期間 (収入が低い期間) が必要な場合の選択肢と言えるだろう。年収以外にも細かい基準があるので、扶養に入ることを検討している場合は被保険者の扶養認定条件をよく確認しよう。加入方法は各保険で定められており、所定の書類を提出する必要がある。
(3) 国民健康保険に加入する
国民健康保険は、自営業 (個人事業主) の人や会社を退職した人などが、病気やケガをしたときなどに必要な保険給付を行い、生活の安定を図ることを目的とした制度だ。保険者は、都道府県と市町村である。
国民健康保険に加入する場合は、退職後14日以内に世帯主が加入の届出を行う。その際、「本人確認書類」と「個人番号確認書類」が必要になる。健保組合や協会けんぽと比べて保険料が高くなりやすく、扶養制度がないことがデメリットだ。
(4) 国民健康保険組合に加入する
「個人事業主は国民健康保険にしか加入できない」と思っている人は多いが、職種によっては国民健康保険組合に加入できる。例えば、歯科医師は歯科医師専用の国民健康保険組合、税理士は税理士専用の国民健康保険組合に加入できる (条件あり) 。独立後に営む事業によっては、こちらも選択肢に入るだろう。
事前に保険料を確認して、計画的に資金を用意しよう
日本は国民皆保険制度を採用しているので、個人事業主は何かしらの保険に入らなければならない。手続きは自分で行う必要があるので、自分の選択肢をよく理解して、最も適した保険に加入しよう。
また、サラリーマンのときは会社が一定の割合を負担してくれていた保険料も、個人事業主になれば全額自己負担だ。多くの人にとって、年間の保険料は軽視できない金額だろう。個人事業主になる場合は、事前に保険料を確認して計画的に資金を準備したい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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