要旨
2021年のこれまでの市場を振り返ると、日本株は一進一退が続いて総じて上値の重い展開となり、ドル円は大幅な円安ドル高となった。米経済が順調に回復し、インフレが進む一方で日本の景気回復が遅れ、物価低迷が続いたことが如実に反映された形だ。
この先2022年の市場にとって最大の注目材料は引き続き「コロナ禍の行方」だが、これに加えて、米国の利上げと中間選挙、日本の参議院選の行方も大きな注目材料となる。コロナ禍に関しては最近発覚したオミクロン株にまだ不明な点が多く予断を許さないが、現時点で既存のワクチンや実用化の迫る経口薬が無効化されると見なすだけの強い理由はない。また、各国のコロナへの対応力も上がっていると考えられるため、現段階のメインシナリオとしては、米国や国内でコロナの感染は制御され、強い行動制限の導入は回避される(もしくは導入されたとしても長期化しない)と想定している。この場合、FRBは来年前半にテーパリングを終了し、9月には利上げに踏み切ると見ている。一方、米中間選挙ではねじれが発生する可能性が高い。
日本株については既に割高感が解消していることから、景気回復と業績改善が株価の上昇に繋がると見ている。ただし、来年後半にはFRBの利上げや米中間選挙におけるねじれ発生が上値の抑制要因になる。現時点では、来年末の日経平均株価を30000円強と予想している。
ドル円については、年内はまだドル高の余地があるものの、市場はインフレ加速に伴う利上げを織り込みすぎているとみられるため、来年前半には利上げ観測がやや後退して一旦ドル安へ振れる可能性が高い。その後は米利上げ開始にカウントダウンに入ってくることで、米金利の上昇と連動する形で再び円安ドル高基調に入ると見ている。この結果、来年末時点の水準は現在より若干ドル高の1ドル114円台と予想している。
ただし、日本株もドル円も下振れリスクが高い点は否めない。理由はコロナ情勢、特にオミクロン株など新しい変異株の影響に関して不透明感が強いためだ。変異株によって日米などで強い行動規制が導入されれば、株価は下落する可能性が高い。また、来年、米国の金融緩和が終了して引き締めに転じるにあたって、株式市場が想定していたよりも大きく悲観に傾く可能性も否定できない。株価が下落する場合には、質への逃避で米国債が買われて米金利が低下するうえ、リスク回避的な円買いも入ることで、円高ドル安が進むことになるだろう。