本記事は、渡邉哲也の著書『世界と日本経済大予測2022-23』(PHP研究所)の中から一部を抜粋・編集しています
GAFAの限界:サーバーの各国配置が命取りになる
GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)は、関連企業や周辺企業を巻き込む形で拡大し続けてきた。ライバルとなりうる企業を吸収して大きくなり、シェアを拡大することによって市場占有率を高める。
同時に関連業態にも力を入れる。グーグルならアンドロイド、YouTube、グーグルペイのようなサービスがあり、これらのサービスをリンクさせることで顧客の抱え込みを実現し利益を得るというのがビジネスモデルだ。
いまの時代、アマゾンをたんなる物流企業と捉える人はいない。アマゾンプライムを擁(よう)する総合エンターテインメント企業であり、さらにクラウドなどのネットサービスまで抱えている。このような状態は独禁法違反ではないかとアメリカ国内でも問題視されてきており、将来的に会社が分割される可能性が大きい。
トランプ政権時代に続きバイデン政権下でも、超巨大企業による市場の寡占を認めない方針であり、独禁法違反、反トラスト法違反での捜査が進むのは間違いない。
脱法行為は許されない
GAFAの脅威はアメリカ以外にも及ぶ。日本を含めた西側諸国では、GAFAによって国内の同業他社が拡大しにくい状況に追い込まれ、苦戦を強(し)いられている。
だがそんなGAFAにも不安要素がある。
GDPR(EU一般データ保護規則、EUではすでに導入済み(※1 ))が、各国で導入され始めれば、GAFAのクラウドなども、各国に置かなくてはならなくなる。
現在は電力の安い地域に置いたサーバーをグローバルに使ってコストを低減しているが、たとえば日本国内にサーバーを置くとなると、GAFAにとってメリットは失われてくる。国際的に一番安いところでモノを作り、電力が安いところにクラウドを置くから、結果的に売り勝ちする。サーバーの各国配置は利益を圧迫する要素になるかもしれない。
もう一つの不安点は、BEPS(税源浸食と利益移転)だ。BEPSに関しては一気に規制が進んでおり、国際的な最終課税15%で合意された。このミニマム課税15%によって、GAFAが使ってきたこれまでの租税回避地(タックスヘイブン)に本社や知的財産権を持つ部門を置き、そこに利益を集中させて各国に税金を払わない体制は壊れていく。
BEPSは2010年ころから大きな問題になっており、約10年かけた議論の末に一応の決着を見た。これと同じように、GAFAの脱法行為に対する規制も租税回避と並行して進んでいくのは間違いない。
以上のような経緯を見渡すとGAFAがこれ以上大きくなるのは難しいだろう。国やエリア別の営業展開を求められていく傾向はこれまで以上に強くなり、これまでのやり方が通用しなくなってくるのは確実だ。
(※1)GDPR……欧州議会・欧州理事会および欧州委員会が、EU内のすべての個人のために、データ保護の強化・統合を意図している規則。EU域外への個人情報の輸出も対象としている。
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