本記事は、長岡健氏の著書『みんなのアンラーニング論 組織に縛られずに働く、生きる、学ぶ』(翔泳社)の中から一部を抜粋・編集しています

新しいワークスタイルを切り開く先駆者

先駆者
(画像=adam121/PIXTA)

アンラーニングする人たち「アンラーニングしながら働き、生きる」とは、どういうことか。無味乾燥な用語の定義や箇条書きしたノウハウより、もっと鮮明なイメージを共有することから〝知的探索の旅〞を始めましょう。

このテーマへの関心が芽生えてから15年、多くの実践者に出会い、アンラーニングをめぐる味わい深いストーリーを聞いてきました。その中から、今の日本社会で躍動するロールモデル的存在として、私が特に注目する〝ワークスタイルの先駆者〞を紹介します。

●組織に縛られない〝心の自由さ〟

彼/彼女らに共通するのは、大企業に属さず、独自の価値観やビジョンに基づいて行動し、自己実現に進んでいくワークスタイルです。有名な組織に所属し、組織が決めた目標やルールに従い、成果を上げ、出世することが、従来型キャリアの王道でした。それが職業人としての成長を促し、人生を正しい方向に導くと信じられてきました。ところが、これから紹介する先駆者たちは〝王道〞とはまったく異なる道を歩んでいます。

世間が信じるアタリマエにとらわれず、独自の見方や判断を大事にしながら、道なき道をかき分けるようにキャリアを歩んでいく。しかも、楽しそうに、イキイキと。きっちり整備された道路や案内板で表示される進路を時には外れ、でこぼこ道をあちこち探索しては、独自の地図をつくる。そんな旅路そのものを、本当に楽しそうに語るのです。

先駆者たちの中には、かつて大企業の社員だった人もいますが、現在は雇用されない働き方を選び、私生活と調和の取れたワークスタイルを実現しています。まさに、自由な働き方。その自由さとは、雇用されていないという形式ではなく、行動を組織に縛られず、判断を組織に依存しない〝心の自由さ〞です。

今の社会規範を前提にして、その中で「上手く生きよう」とするのではなく、目指すべき社会の未来像を自分自身で描き、社会を構成する個人として「今、何をすべきか」を常に考えながら実践活動に取り組んでいる人たちです。

このように説明すると、誤解をされることがあります。「ちょっと浮世離れした人たちなんでしょう?」

違います。彼/彼女らは決して世捨て人ではないし、趣味の世界に没頭する人たちでもありません。むしろ、強く社会とつながろうとし、社会にとって意味のある価値を生み出すことに喜びを感じている人たちです。古い慣習にとらわれない新しい社会のあり方を考え、その可能性を信じて、公益性の高い仕事にもチャレンジしていく。先駆者たちの行動には、利他的な精神を感じます。

かといって、慎ましく清貧を尊ぶ人たちかというと、その印象とも異なります。彼/彼女らは理想主義者ではありません。継続的に価値を生み出し続けるには、経済合理性も重要であることを知っていて、ちゃんとお金が回る仕組みを考える。大企業には属していないけれど、大企業とも積極的に協業する。そして、社会にとっても、企業にとっても価値の高い仕事を推進していく。現代の資本主義社会の真ん中に生きながら新たなワークスタイルを切り開いている先駆者として、存在感を放っているのです。

みんなのアンラーニング論 組織に縛られずに働く、生きる、学ぶ
長岡健(ながおか・たける)
法政大学経営学部教授。東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、英国ランカスター大学大学院・博士課程修了(Ph.D.)。専攻は組織社会学、経営学習論。組織論、社会論、コミュニケーション論、学習論の視点から、多様なステークホールダーが織りなす関係の諸相を読み解き、創造的な活動としての「学習」を再構成していく研究活動に取り組んでいる。現在、アンラーニング、サードプレイス、ワークショップ、エスノグラフィーといった概念を手掛かりとして、「創造的なコラボレーション」の新たな意味と可能性を探るプロジェクトを展開中。共著に『企業内人材育成入門』『ダイアローグ 対話する組織』(ともにダイヤモンド社)、『越境する対話と学び』(新曜社)などがある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)