高い利回りを期待できる「ソーシャルレンディング」への投資に興味を持っている人は多いだろう。ソーシャルレンディングとは、資産運用をしたい人と、お金を借りたい企業をつなぐウェブサービスで、クラウドファンディングの一種だ。一定のリスクがあり、必ず利益が出る方法は存在しないが、よくある失敗パターンや特徴を理解することで、運用の成功確率を上げることができるはずだ。
今回は、その失敗パターン、失敗する人の特徴、失敗を避ける方法、利回りとリスクの考え方について解説する。
目次
1. ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、資産運用をしたい人(投資家)と、お金を借りたい企業(借り手)をインターネットでつなぐウェブサービスだ。「貸付型クラウドファンディング」や「融資型クラウドファンディング」と呼ばれることもある。
基本的な流れとしては、投資家はソーシャルレンディング業者(ファンド業者)に出資し、ソーシャルレンディング業者が借り手にその資金を貸し付ける。借り手はソーシャルレンディング業者に返済していき、投資家はソーシャルレンディング業者から分配金や償還金を受け取る。
株式投資が企業への投資であるのに対して、ソーシャルレンディングはソーシャルレンディング業者(ファンド業者)への投資になる。また、運用の期限が設定されているのも特徴のひとつだ。
▽ソーシャルレンディングのイメージ(ファンド業者)が匿名営業者である場合)
2. ソーシャルレンディングの失敗パターン6選
ソーシャルレンディングは分配金や元本が保証されている運用方法ではない。そもそも金融商品において「必ず利益がでる方法」は存在しないが、よくある失敗パターンを知っていれば今後の運用に活かしていけるはずだ。そこで、ここからはソーシャルレンディングの失敗パターンを見ていこう。主に6つが考えられる。順に解説していこう。
2.1. ソーシャルレンディングの失敗パターン1:貸し倒れが発生して資金を失う
前述のように、ソーシャルレンディングは元本が保証されている運用方法ではない。借り手が倒産するなど何かしらの要因で投資元本が回収できず、貸し倒れが発生する可能性はある。貸し倒れが発生してもソーシャルレンディング業者は元本を保証してくれないため、最悪の場合、投資元本がまったく返ってこない投資元本全損の可能性がある。
2.2. ソーシャルレンディングの失敗パターン2:返済遅延が発生して資金が返ってこない
投資資金はソーシャルレンディング業者を介して借り手に貸し付けるわけだが、必ず約束通りの期日に返済されるとは限らない。返済遅延が発生して資金が返ってこない可能性がある。
「返済遅延が発生しても、貸し倒れまではいかずに、約束の期日を過ぎてから資金が返済される」という可能性はあるものの、パターン1の一歩手前の状態といえるだろう。なお、ソーシャルレンディング業者のホームページでは返済遅延などに関する情報が公開されていることがある。
2.3. ソーシャルレンディングの失敗パターン3:外貨案件で為替差損が発生する
海外企業への投資など、外貨で投資をする際は為替リスクが発生する。円を外貨に交換したときよりも円高に進んだ場合、その時点で外貨から円に戻すと為替差損が発生する。発生してしまっても、分配金を含めたトータルリターンはプラスで終了できるケースはあるが、累計の分配金以上の為替差損が発生してしまった場合は、トータルリターンでもマイナスになってしまう。
2.4. ソーシャルレンディングの失敗パターン4:期限により早期償還される
現状以上の資金が必要ではなくなったり、別のいい融資先を見つけたりといった、借り手の事情によって、早期償還がなされる可能性がある。その場合、投資元本は手元に戻ってくるが運用は終了してしまう。その資金で運用を続けたい場合は、新しい投資先を探す必要がでてくる。
早期償還された案件の利回りによっては、償還後に同程度の利回りを確保できない可能性がある。損失が発生していない分、パターン1、2、3よりはマシだが、「想定していた運用ができなくなる」という意味で把握しておきたい。
2.5. ソーシャルレンディングの失敗パターン5:相対的に他の運用商品のほうが高パフォーマンス
「他の運用商品に資金を投じていれば、もっとパフォーマンスが高かったのに」と後悔するパターン。たとえば「利回り5%で運用期間5年」というソーシャルレンディング案件に投資をしている間に、日経平均株価が2倍になったとしたら、相対的に他の運用商品(この場合は日経平均株価への連動を目指すインデックス商品)のほうが高パフォーマンスだったといえる。
ただし、リスクや期待リターンが大きく違うソーシャルレンディングと日経平均株価のインデックス商品を同じ土俵で比べるのは、ややアンフェアかもしれない。
また、「あるソーシャルレンディング案件に投資した後、明らかにもっといい条件の案件は出たが、資金不足で投資できなかった」という想定もできる。いずれにせよ、これらは「たられば」を多分に含んだ話であり、そこまで気にすべきパターンではないだろう。
2.6. ソーシャルレンディングの失敗パターン6:資金が必要になったが、途中解約ができない
ソーシャルレンディングのなかには、途中解約および売却ができないものがある。何かしらの理由でまとまったお金が必要になったとしても、そのような案件に投資している場合は、そこから手当てすることができない。流動性の低さに注意を払いたい。
3. ソーシャルレンディングで失敗する人の特徴
ソーシャルレンディングで失敗する人にはどのような特徴があるのだろうか。具体的な例を上げて解説していこう。
3.1. ソーシャルレンディングで失敗する人の特徴1:利回り重視でリスク管理が甘い
投資である以上、利回りを追求すること自体は悪いことではない。日本は長らくゼロ金利政策が続いており、銀行預金に預けていてもほとんど資産は増えないため、高い利回りの案件を目にすると「有望な投資先だ」と思ってしまう人はいるだろう。しかし、利回りを何よりも重視していると、上記した貸し倒れなどのリスクの把握や管理が甘くなり、思わぬ失敗をすることがある。
3.2. ソーシャルレンディングで失敗する人の特徴2:限られた案件に集中投資している
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資格言があるように、資産運用の原則は分散投資だ。これを実践することで、資産運用に伴う価格変動リスクを低減させて好リターンを目指すことができるといわれている。反対に、集中投資をしていると、その投資先にトラブルが発生したときに、一度に大きなダメージを受けてしまうことがある。
3.3. ソーシャルレンディングで失敗する人の特徴3:投資先のことをよく調べていない
ソーシャルレンディングでは、ソーシャルレンディング業者が一定の審査を行ったうえで、投資家に案件を公開している。だからといって、「ソーシャルレンディング業者の審査を通っているのだから、自分であまり調べなくても大丈夫だろう」と考える人は、運用に失敗しやすい。
ソーシャルレンディングに限らず、投資先のことを自分で調べて、本当に投資するに値するか自己判断することは資産運用の基本だ。
3.4. ソーシャルレンディングで失敗する人の特徴4:他の資産との流動性の兼ね合いを考えていない
資産全体のバランスを考えず、ソーシャルレンディング単体の投資妙味だけを考えてしまう人は失敗しやすい。前述のように、ソーシャルレンディングのなかには、途中解約および売却ができないものがある。そのような案件に投資する場合は、他の資産との流動性の兼ね合いを考えることが重要だ。
流動性が低い資産をたくさん抱えている場合は、資産全体の流動性を保つことを意識しよう。ソーシャルレンディングで、良さそうな案件が追加で見つかったとしても、その投資は見送る判断が必要になることもあるだろう。
4.ソーシャルレンディングで失敗を避ける方法
それでは、ソーシャルレンディングで失敗を避ける方法には、どのようなものがあるだろうか。ここからは、その方法について解説していこう。以下の4つが挙げられる。
4.1. ソーシャルレンディングで失敗を避ける方法1:案件、期間、業者を分散して投資する
「資産運用の原則は分散投資だ」と述べた。ソーシャルレンディングにおいても分散投資を実践することで、失敗のリスクを大きく下げることができる。「分散投資」と一口にいっても、いくつかポイントがある。
▽分散投資のポイント
・案件の分散
・運用期間の分散
・ソーシャルレンディング業者の分散
・投資するタイミングをずらす
順に説明していこう。
まず、案件の分散だ。たとえば1,000万円の運用資金があるとして、その全額をひとつの案件に投資するのではなく、異なる10案件に100万円ずつ投資するといった具合だ。その際は、融資先の業界や業種、ビジネスモデルなどがなるべく異なる案件に分散しよう。限られた範囲に集中投資することで生じるリスクを避けられる可能性が高くなり、より効果的だ。
案件だけではなく運用期間もできるだけ分散するといい。失敗しないことを何より重視するなら、運用期間が短い案件ばかりを選ぶこともひとつのアイディアだ。運用期間が短いということは「トラブルが生じる可能性がある期間も短い」といえる。
ソーシャルレンディング業者の信用リスクもソーシャルレンディング投資の成功の可否に関わる。入金やパスワード管理など多少の手間は増えるが、ソーシャルレンディング業者はできる限り分散したい。
また、「投資するタイミング」をずらすことも分散投資の方法のひとつだ。たとえば1,000万円の運用資金があるとして、一度に全額を投資するのではなく、1ヵ月に250万円ずつ4回に分けて投資するといった具合だ。金利水準や経済環境は随時変化するため、購入タイミングの分散も一定のリスク低減に繋がる。
4.2. ソーシャルレンディングで失敗を避ける方法2:案件について情報開示性を重視する
ソーシャルレンディングでは、案件によって情報の開示性に大きな差がある。虚偽の情報を載せられてしまうと見破ることは難しいが、正しいことが書いているという前提で考えると、ソーシャルレンディングで失敗を避けるためには、できるだけ情報を開示している案件へ優先的に投資するといいだろう。もちろん、開示内容を自分で確認し、自らの判断で投資実行を決断することが重要だ。
4.3. ソーシャルレンディングで失敗を避ける方法3:案件の保証や担保の有無を確認する
案件によっては、一定の担保や保証を付けていることがある。ただし、返済順位が劣後していたり、担保資産の価格変動によってその価値が債務を下回ってしまったり、保証をしている事業者がデフォルトしたりする可能性があるため、担保や保証を付けていても、元本や分配金が100%約束されるわけではない。
それでも担保や保証がない案件よりは、いくぶんリスクは低いといえるだろう。ソーシャルレンディングで失敗を避けるためには、そのような案件への優先的な投資を検討したい。
4.4. ソーシャルレンディングで失敗を避ける方法4:信頼できるソーシャルレンディング業者を利用する
近年、ソーシャルレンディング業者のトラブル(行政処分)がいくつか起こっている。ソーシャルレンディングは資産運用の一種として認知度が高まってまだ日が浅いため、法整備や業界の自主規制が他の金融商品に比べて整っていない部分はあるだろう。だからこそ、投資家自身が自己防衛することが重要だ。
ソーシャルレンディングに投資するときは、できるだけ信頼性が高い業者を利用するようにしたい。「業者の信用度を深く調査すること(デューデリジェンス)」の難易度は高いが、それでも「運営会社はどのような会社で財務状態は良好なのか」「過去の実績はどうなのか」「本当に認可や免許を持って運営しているか」「利用者の評判はどうなのか」などを確認するようにしたい。
5. ソーシャルレンディングの利回りとリスクの考え方
あまりにも高い利回りの案件の場合は注意をしてほしい。大前提として理解しておきたいことは、リスクとリターンは相関関係にあるということだ。原則として、ローリスクの運用はローリターンであるし、ハイリターンを狙うにはハイリスクを覚悟する必要がある。
「ローリスク・ハイリターンの運用方法はない」と肝に銘じるべきだ。もし、そのような勧誘を受けたのであれば、詐欺を疑うくらいの慎重さを心がけたい。
5.1. ソーシャルレンディングの利回りは比較的高い
そのうえで理解しておきたいことは、ソーシャルレンディングの利回りはインカムゲイン型商品のなかで比較的高いということだ。案件にもよるが、ソーシャルレンディングには利回り5%を超えるものも多い。なかには10%近いものがある。
一方、「世界で最もポピュラーで安全(必ず利益がでるという意味ではない)なインカムゲイン型商品」といわれている米国10年国債の利回りは、足元で1.7%だ(2022年1月14日現在)。ソーシャルレンディングの一般的な利回りを5〜7%とすると、その利回り差(イールドスプレッド)は約5%になる。
▽ソーシャルレンディングでの利回りの例
ソーシャルレンディングが「その利回り差(イールドスプレッド)に見合った運用法であるかどうか」は別途議論が必要だが、資産運用の世界において、利回り5%の差は比較的大きい。
5.2. ソーシャルレンディングはリスクを考えることが重要
高い利回りのソーシャルレンディングは、そのぶんリスクがある運用方法といえる。利回りを追求すること自体は大切だが「その利回りの裏にはどれくらいのリスクがあるのだろうか」「その利回りはそのリスクを負うに値する数値だろうか」ということを考えることが重要だ。
まとめ:ソーシャルレンディングの失敗例を理解して、資産運用に活かそう
ここまで、改めてソーシャルレンディングとは何かを説明したうえで、ソーシャルレンディングの失敗パターン、失敗する人の特徴、失敗を避ける方法などを解説してきた。
ソーシャルレンディングは比較的高い利回りを期待できる新興の運用方法だ。新興ゆえに、法整備や業界の自主規制が他の金融商品に比べて整っていない部分がある。ソーシャルレンディングの失敗パターンや失敗する人の特徴を理解して、自分の資産運用に活かしていこう。
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