男性ふたり
マネーフォワード Money Forward Home Company カンパニー執行役員/カンパニーCOO 木村友彦氏(左)、ツクルバ 執行役員 cowcamoサプライサイド事業部 事業部長 山田悠太郎氏(右)

資産管理・家計管理ツールなどを提供するマネーフォワードと中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を展開するツクルバは2022年4月11日、業務提携を通じて「マネーフォワード 住まい」のサービスを開始すると発表した。同サービスによってユーザーは、所有する居住用不動産価格の可視化や住宅ローン残債を踏まえた売却時期の検討が行えるようになる。業務提携の背景や狙いについて、マネーフォワード Money Forward Home Company カンパニー執行役員/カンパニーCOO 木村友彦氏、ツクルバ 執行役員 cowcamoサプライサイド事業部 事業部長 山田悠太郎氏に話を聞いた。

専門分野に強いプレーヤーとの提携でサービスを拡充 ―― マネーフォワード

不動産領域における今回の業務提携の話が前に進み始めたのはおよそ1年半前。マネーフォワード、ツクルバ両社の経営層の間でカジュアルに行われていた情報交換が不動産領域での業務提携に発展した。

もともと両社は「マネーフォワード 住まい」で実現したサービスのユーザーニーズを事前に把握してはいた。

マネーフォワードは家計簿アプリ「マネーフォワード ME」を通じて、2016年にネクストが提供する「HOME’Sプライスマップ」とデータ連携を開始、ユーザーは所有不動産の参考価格データを自身の資産を構成する一部(不動産)として把握し、管理することができた。ただ、不動産に関しては資産価格の可視化からさらに踏み込んだニーズがユーザーの中に存在することが徐々に明らかになっていった。

同社が運営する「くらしの経済メディア MONEY PLUS」の人気記事の動向や読者から寄せられる意見を分析すると、ユーザーのライフイベントとして、不動産売買は非常に大きな位置づけを占めていることがうかがえた。しかし、不動産売買手続きは未経験者にとっては非常に煩雑な作業である。このような状況を打開する道として、同社ではまず、所有不動産の現在価値を把握できる状態を作ること、さらには必要な時にスムーズに売却や住み替えに繋げられるサービスの実装を検討しはじめた。

「ライフスタイルにおけるお金の問題を解決し、ユーザーの人生を前に進めることがマネーフォワードのミッション。お金に関わる領域は多岐にわたるが、それぞれの領域で専門の知識やノウハウが必要になる。そのため、専門分野に強いプレーヤーとの提携がサービス規模の拡大、クォリティの拡充を図る上で重要な選択肢になる」とマネーフォワード Money Forward Home Company カンパニー執行役員/カンパニーCOO 木村友彦氏は話す。

マネーフォワード Money Forward Home Company カンパニー執行役員/カンパニーCOO 木村友彦氏
マネーフォワード Money Forward Home Company カンパニー執行役員/カンパニーCOO 木村友彦氏

これまで同社は、保険分野ではライフネット生命保険、自動資産運用の分野ではSUSTEN(追加出資を実施し、持分法適用会社化した)との業務提携を通じて、新しいサービスの開発を行ってきた。ツクルバとの業務提携も同社がこれまで展開してきた提携戦略の一環と位置づけられる。

ライフスタイル重視の時代、「住まい」という切り口で人生を豊かに ―― ツクルバ

ツクルバによると、中古住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」で持ち家の売却を依頼するユーザーのおよそ6割は実際、購入後5年以内に持ち家を売却しているという(2021年8月〜2022年1月:ツクルバで媒介契約を結んだユーザー)。

日本人の持ち家に対する考え方は数十年前とはかなり変わってきている。それはたとえば「ライフスタイルに合わせて持ち家を住み替える(=住み替えを前提に家を買う)」というように表現される。もちろん、転勤、転職、結婚、離婚、相続などの大きなライフイベントが住まい売却の主なきっかけであることは現在でもそれほど変わりはないであろうし、住宅購入/売却が人生の一大事であることもまた間違いはないだろう。ただ、そこによりカジュアルな理由が加わりつつあるというわけだ。持ち家が日々の暮らしの満足度向上や、人々が思い描く暮らしの実現に寄与するものとして、その存在感を強めてきたということでもある。

「『住まい』という切り口で人生を豊かにする」(ツクルバ 執行役員 cowcamoサプライサイド事業部 事業部長 山田悠太郎氏)をモットーに前出の中古住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」や売出し前中古不動産のマッチングプラットフォーム「ウルカモ」などを展開するツクルバにとって、『マネーフォワード ME』の1,200万超(2021年4月。2022年4月現在は約1,280万)のユーザーを擁するマネーフォワードとの業務提携は、その企業ビジョンの実現と拡大を推進する上では重要なものだったに違いない。「カウカモ」の登録会員数は33万人強(2022年1月時点)、「ウルカモ」の登録会員数はおよそ1,000人である。「マネーフォワード 住まい」を通じてユーザーは、持ち家売却のモチベーションが高まった段階でツクルバが提供する持ち家の売却・住み替え相談サービスを受けることができるわけで、同社にとっては不動産所有者のユーザー基盤の強化につながることになる。

ツクルバ 執行役員 cowcamoサプライサイド事業部 事業部長 山田悠太郎氏
ツクルバ 執行役員 cowcamoサプライサイド事業部 事業部長 山田悠太郎氏

今後、両社は「マネーフォワード 住まい」ユーザーを対象に月1回程度の定期ヒアリングを実施しながら、機能の充実を目指す予定。なお、同サービスの持ち家の売却・住み替え相談については、ツクルバ以外の企業の追加も検討中。ツクルバの強みは都心のマンション(特にリノベマンション)の売買仲介だが、今後、「マネーフォワード 住まい」への郊外マンション(現在は一都三県のみ対象)、戸建て、築浅マンションの登録増加が見込まれることから、これらの物件の売買仲介を得意とする仲介業者の追加を進めていくとしている。

「マネーフォワード 住まい」機能面の特徴

「マネーフォワード 住まい」の画面

(1)名前や電話番号の登録が不要で、不動産事業者を介すことなく、所有する不動産の売却額の査定がオンラインで受けられる。マンション情報を登録するとAI査定で部屋の相場価格を即座に確認でき、写真など任意の情報を登録すると内装査定も受けられる。

(2)査定額と「マネーフォワード ME」に登録したローン情報を組み合わせることで、今売却したらいくら手元に残るか、または残らないのかを確認することができる。将来の売却シミュレーションも可能。

(3)査定額の把握や売却シミュレーションを行った上で、売却相談に進みたい場合、「マネーフォワード 住まい」から直接、仲介業者に依頼を出せる。現在は「マネーフォワード 住まいエージェント」への相談と、ツクルバへの売却相談の2種類の売却相談を選ぶことができる。