この記事は2022年6月17日にSBI証券で公開された《参院選》で市場が注目?「岸田(新しい資本主義)関連銘柄」は!?を一部編集し、転載したものです。


参院選,関連銘柄
(画像=キャプテンフック/stock.adobe.com)

目次

  1. 《参院選》で市場が注目?「岸田(新しい資本主義)関連銘柄」は!?
  2. 抽出銘柄のご紹介
    1. インソース(6200)~社会人向け教育サービスで着実に成長
    2. IHI (7013)~防衛関連株のコア的存在か?
    3. ソースネクスト (4344)~ポケトークの増収効果で下期から黒字も

東京株式市場が不安定な動きとなっています。2022年6月3日(金)~6月9日(木)に5連騰したかと思えば、2022年6月10日(金)~6月15日(水)に4営業日続落し、直前の上昇分をすべて打ち消してしまいました。インフレ・金利上昇への懸念が再燃し、米国株市場が大荒れとなったことが主因とみられます。2022年6月17日(金)には、日経平均株価が取引開始直後から2万6,000円台を割り込む展開となりました。

そのような中で政府は2022年6月15日(水)、参議院選挙を2022年6月22日(水)に公示し、2022年7月10日(日)に投開票日とするスケジュールを決定しました。平成元年以降11回の参議院選挙を振り返ると、公示日から投開票の10日後(休日含む)までの日経平均株価騰落率は平均0.2%の上昇と、ほぼ横ばいであり、「選挙だから様子見」と、決め込む必要はないと考えられます。

ただ、参議院選挙を通して、固まったばかりの岸田政権の政策方針が争点になる可能性は大きいとみられます。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、改めて岸田政権の経済政策について吟味し、関連銘柄をチェックしてみようと思います。

《参院選》で市場が注目?「岸田(新しい資本主義)関連銘柄」は!?

岸田首相は2022年6月7日(火)、「骨太の方針」(新たな経済財政運営と改革の基本方針)と、「新しい資本主義」(日本の成長戦略)の実行計画を閣議決定しました。「新しい資本主義」も含む「骨太の方針」の概略(第5章含め一部省略)は以下の通りです。番号は筆者が通し番号でつけたものです。

(出典:内閣府HP 「経済財政運営と改革の基本方針2022について 」より筆者抜粋)

【第1章 我が国を取り巻く環境変化と日本経済】

(1)新型コロナウイルス、ロシアのウクライナ侵攻、資源価格高騰(海外への所得流出)、人口減・少子高齢化等の現状認識。

(2)「新しい資本主義」を起動し、「成長と分配の好循環」を実現する。

【第2章 新しい資本主義に向けた改革】

(3)2024年度までの3年間で4,000億円規模の予算を組み、「人への投資」を実行。

(4)非財務情報の開示ルール策定。四半期開示の見直し。

(5)自然科学(理系)分野の学問を専攻する学生の割合(現在35%程度)を5割程度に高める。

(6)早期に最低賃金1,000円(全国加重平均・時給)以上を目指す。

(7)「NISA」の拡充、「iDeCo」の改革を進め、「貯蓄から投資」へのシフトを推進。「資産所得倍増プラン」を年末に作成。

(8)国益に直結する科学分野(量子、AI、バイオものづくり、再生・細胞医療・遺伝子 治療等のバイオテクノロジー・医療分野)で国家戦略を明示。

(9)IPOプロセスを見直し、スタートアップの資金調達の困難さを解消。

(10)脱炭素の推進……2050年にカーボンニュートラルを実現する為、「GX経済移行債(仮称)」等で資金調達し、今後10年間に150兆円超の投資の検討。

(11)少子化への対応……不妊症・不育症支援や妊産婦支援・産後ケアの推進、出産育児一時金増額等の検討。

(12)男女間の賃金格差解消に向け、格差の開示を義務化。

(13)「デジタル田園都市構想」の実現。

【第3章 内外の環境変化への対応】

(14)防衛力を5年以内に抜本的に強化する。

(15)半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品等を始めとする重要な物資の安定供給を確保する。

(16)エネルギーの安定的かつ安価な供給を確保。同時に脱炭素を進める……省エネを推進。再生可能エネルギー、原子力等の活用。

(17)日本の投資先としての魅力を高める。対日直接投資残高を2030年に80兆円。

【第4章 中長期の経済財政運営】

(18)コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、「かかりつけ医」機能が発揮される制度整備の推進。

(19)保険証の原則廃止を目指す。

(20)生涯を通じた歯科検診(いわゆる国民皆歯科検診)の具体的な検討。

下の図表は、各種資料、報道等を参考に岸田首相の「新資本主義」に関連すると思われる銘柄を例示したものです。2022年6月16日時点での時価総額500億円以上で、今期予想営業損益が黒字の上場銘柄に絞りました。カッコ内の数字は、上記のどの政策と関連性が深いかを示しています。

岸田(新しい資本主義)関連銘柄 岸田(新しい資本主義)関連銘柄 岸田(新しい資本主義)関連銘柄
(画像=SBI証券)

抽出銘柄のご紹介

こちらでは、図表でご紹介した「新しい資本主義(岸田)関連銘柄」の一部について、内容や投資ポイント等をご紹介します。

インソース(6200)~社会人向け教育サービスで着実に成長

■講師派遣型研修事業が主力

当社は、研修を中心に社会人向けに教育サービスを提供する会社となっています。

講師派遣型研修事業(2022年9月期・上半期の売上構成比は47.1%)は、組織に講師を派遣するオーダーメイド型研修となっています。公開講座事業(同21.8%)では、1名から参加できるオープンセミナー型研修を提供しています。

さらにITサービス事業(同15.2%)では、教育管理ができ、コスト的にも低いLMS(学習管理システム)を提供しており、その利用者数は、LMSサービスとして日本最大級を誇っています。

■業績は順調に拡大傾向

業績は順調に拡大してきましたが、新型コロナウイルスで、講師派遣が滞った2020年9月期は減収・減益となりました。しかし、その後は増収・増益に転じ、2021年9月期は過去最高の売上高・営業利益を計上しています。

2022年9月期の会社計画では売上高89億円(前期比18.6%増)、営業利益26億円(同8.1%増)と最高益更新が続く見通しです。そうした中、2022年5月9日(月)発表の上半期決算では、売上高45.1億円(前年同期比22.8%増)、営業利益16.7億円(同33.2%増)と順調に推移しています。市場では今期30億円程度の営業利益を見込んでいます。

今期会社予想EPSである41.53円を基準に、2022年6月16日(木)終値1,995円で計算された予想PERは48.03倍で、市場ではある程度評価された株価であると考えられます。

ただ、業績が堅調に推移していることに加え、「人への投資」という国策にも乗っており、今後は見直し買いが増える可能性もありそうです。

▽週足チャート(過去3年)

インソース(6200)
(画像=SBI証券)

▽連結業績(百万円)

インソース(6200)
(画像=SBI証券)

IHI (7013)~防衛関連株のコア的存在か?

■総合重機の大手企業

当社は総合重機の大手企業です。旧社名は石川島播磨重工業で、航空・宇宙分野に強みを持っています。ジェットエンジン製造では日本国内のシェアトップで、防衛省が使用する航空機のほとんどのエンジンの主契約者になっています。

第二次世界大戦末期に開発された国産初のターボ・ジェットエンジン「ネ20」は同社製品です。戦後は日本の宇宙開発に当初から参画し、ロケットエンジンの心臓部となるターボポンプ、ガスジェット装置の開発・生産の推進役でもあります。

売上構成比(2022年3月期)は、ボイラやプロセスプラントなどの「資源・エネルギー・環境」が29.0%、橋梁・水門、都市開発、F-LNG・海洋構造物などの「社会基盤・海洋」が14.5%、物流・産業システム、パーキング・システム、シールド掘進機、ターボチャージャーなどの「産業システム・汎用機械」が32.7%、航空エンジン、ロケットシステム、防衛機器システムなどの「航空・宇宙・防衛」が23.0%となっています。

■好業績を追い風に株価も堅調

2022年3月期の連結業績(IFRS)は、売上収益1兆1,729億円(前期比5.4%増)、営業利益814億円(同217.3%増)と、増収増益でした。

主力事業である民間向け航空エンジンは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けており、長距離国際線では、一部地域において入国制限の緩和が進むものの、旅客需要の回復が遅れました。

一方、国内線および短距離国際線の旅客需要は回復に向かっており、それに伴いスペアパーツ販売の増加傾向が続きました。車両過給機においては、自動車産業における生産調整が長引いており、販売台数は伸び悩みました。

2023年3月期の連結業績は、売上収益1兆3,000億円(前期比10.8%増)、営業利益750億円(同8.0%減)を予想しています。配当は、中間期40円(前期実績30円)、期末40円(同40円)の合計80円(同70円)に増額する見込みです。

前提となる為替レートは、1ドル115円となっており、現状は前提為替レートを大きく上回って円安・ドル高が進んでいます。1ドル1円の円安・ドル高は営業利益を12億円押し上げる効果が想定され(会社予想)、その分は業績の上積みが期待できそうです。

2022年6月15日(水)日経新聞では、次世代燃料として期待されているアンモニアを気化せずそのまま燃焼させる発電用小型タービンを開発したことが報じられています。

防衛関連としてのみならず、環境関連としても注目される可能性もありそうです。

▽週足チャート(過去3年)

IHI (7013)
(画像=SBI証券)

▽連結業績(百万円)

IHI (7013)
(画像=SBI証券)

なお、当社については、SBI証券企業調査部もレポートを作成しています。詳細は以下のレポートをご参考ください。

2022年5月17日付 「旅客需要の回復および固定費削減の進捗に注目」

山崎アナリスト 投資判断「中立」

目標株価4,700円→5,500円

▽週足チャート(過去3年)

西日本旅客鉄道(9021)
(画像=SBI証券)

*データは2022年6月10日(週足) 13:30 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

▽連結業績(百万円)

ソースネクスト連結業績
(画像=SBI証券)

ソースネクスト (4344)~ポケトークの増収効果で下期から黒字も

ソースネクスト(4344)~ポケトークの増収効果で下期から黒字も

■「ポケトーク」のラインナップ拡充に注力

当社は、パソコン用ソフト、スマホ用アプリ、IoT製品の開発・販売を手掛けています。

期待されているのは、AI通訳機「ポケトーク」の存在です。当社は、同製品のラインナップ拡充に注力しています。2021年末には、翻訳結果をPC画面に字幕表示できる、ソフト版「ポケトーク字幕」を投入しました。

さらに、非対面機能を投入し、拡大するリモート会議需要の取り込みを狙っています。2022年4月には、若年層需要開拓を狙い、スマホアプリ版のポケトークも投入しています。ソフトバンク(9434)等とも連携し、これらの製品の販促を推進する方針です。

■海外需要が急伸。下期から黒字化へ

2022年3月は、売上高103.07億円(前年比19.8%減)、営業損失22.59億円(前年は5.4億円の利益)でした。事前の会社予想に対し、製品群見直しに伴う評価損計上等で、利益が下回る結果となりました。

2023年3月期の会社予想は、売上高127.95億円(前年比24.1%増)、営業損失8.5億円となっています。グローバル展開を狙うポケトークの販促強化などもあり、上期は営業損失12.25億円を見込んでいますが、下期は増収効果で3.75億円の営業利益に回復する計画になっています。

なお、主力のポケトークは、国内市場で低迷が続いていますが、当社では海外展開を推進しています。これにより、欧米などの海外需要が急伸しています。今期会社予想では、ポケトークの3割強を海外で販売する計画です。同社では、この海外販売の寄与や、国内需要の回復により、今期4Qのポケトーク販売台数は8万台程度(コロナ前の四半期販売台数の約8割)に回復する予想としています。

この足元の販売状況を考慮して、SBI証券・企業調査部では業績予想を修正しています。予想の前提となるポケトークの販売台数は2023年3月期がコロナ前の2020年3月期に対し41%(従来は64%)、2024年3月期が同93%(従来は約87%)、2025年3月期が同121%の水準になるとしました。

*詳細は以下のレポートをご参考ください。

2022年5月26日付 「ポケトークなどの増収効果で、今期下期より黒字に転換へ」

森行アナリスト 投資判断「中立」→「買い」

目標株価250円→330円

▽週足チャート(過去3年)

ソースネクスト (4344)
(画像=SBI証券)

*データは2022年6月10日(週足) 14:30 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

▽連結業績(百万円)

西日本旅客鉄道連結業績
(画像=SBI証券)

▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝られます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数