米国経済の懸念材料…1番はエボラ出血熱問題?
米国で15日に発表された小売売上高の前月比が予想の-0.1%より低い数値-0.3%だったことから、個人消費の減速が懸念され、15日の株式市場は、NYダウは、173ドル45セント安の16,141ドル74セント、NASDAQ は、11.854ポイント安の4,215.317ポイントと大幅安の展開となった。アメリカのGDPの約7割を占めている個人消費の動向は、投資家が非常に注目していることから、投資家心理を冷やし、安全資産へシフトしたのである。この米国の株安を受けて、欧州、アジア各国も株価が下落し、このような動きを捉えて、「世界景気先行き悪化の懸念」が原因と報じられた。その背景には、イスラム国の台頭やウクライナ問題、欧州景気の悪化、中国バブルなど様々な要因が重なっている。
一転して24日の米国株式相場は上昇した。NYダウは216.58ドル高の16677.90、ナスダックは69.94ポイント高の4452.79と大幅高で終了した。ただ、米国内では、エボラウイルスの二次感染も発生し、世界的規模でウイルスが拡散する懸念があり、パンデミックとなれば、経済活動は停止する可能性もあることから、米経済への先行きに対する不透明要因として、エボラ出血熱問題への懸念は依然残ったままだ。
また、世界景気の先行きを考える上で、欧州経済悪化については今月に開催されたG20でも議論されており、世界が注視していることは間違いない。しかし、欧州景気の悪化は今に始まったことではなく、2009年の債務危機から脱したとは言え、実体経済に比して通貨高が続いており、EUの牽引役であるドイツも景気後退がささやかれている状態なので、これをもって世界景気の悪化とは言えない。
では、世界景気先行き悪化の一番の理由は何なのか。経済はグローバルに繋がっているため、ある国で問題が起これば、たちまち世界経済に波及する。特に、世界経済の中心であるアメリカの影響は大きく、今回のアメリカの株安のようにアメリカの景気が減速すると一気に他国の経済も影響を受ける。
FRB資産購入の終了は大きな懸念材料ではない
そして、アメリカで懸念材料の1つとして挙げられているのが、FRBの資産購入の終了である。FRB(Federal Reserve Board)とは、米国の連邦準備制度理事会のことで、日本でいう日本銀行のような役割を担っているところである。2008年9月のリーマンショック以降、FRBは金融緩和を積極的に行ってきた。それが今月開催されるFOMC(米国連邦公開市場委員会)で資産購入プログラムが終了しようとしているのである。
しかし、資産購入の縮小は、2014年1月から段階的に行ってきており、9月時点で既に150億ドルになっている。また、資産購入終了後も政策金利を相当な期間0.00%〜0.25%の範囲で維持するとしており、世界景気先行き悪化の一要因とは言えても、一番の理由とまでは言えない。
結局、景気の動向や株式の動きというのは、人の不安感や期待感によって上下するものである。よって、原因が明らかなことはむしろ少ない。もし、その理由が明らかな場合には、その理由が示される。一方、原因が明らかでない場合には、抽象的に「世界景気先行き悪化」というような表現をするのである。しかし、これはある意味真実を示しているのであり、間違っていることではない。
15日に小売売上高の指標により大幅に下落した米国の株価は、24日には大幅に反発している。その原因は17日発表の住宅着工件数が前月比で増加したからだ。このように、15日には、暴落の理由を「世界景気先行き悪化を懸念」としていたのに、その数日後には米国景気の先行きに対する懸念が和らいだため反発したと理由づけする。
マスメディアとしては、株価等の変化についてその原因を書かなければならないので、具体的原因がわかっていればそれを書くし、わからなければ抽象的に「先行き懸念」というような表現をするのである。
したがって、投資家として重要なのは、経済記事を見たときにその内容に一喜一憂するのではなく、その事象から様々なリスクファクターを想定し、投資対象がどのような影響を受けるかを判断することである。景気後退局面であっても、株であれば信用取引等いくらでも収益を上げる手段はあるので、既存の資産を減らすことなく、うまく相場の波に乗ることが肝要である。
(ZUU online)
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