この記事は2022年7月1日にSBI証券で公開された意外な「猛暑」関連銘柄を一部編集し、転載したものです。
東京株式市場は、いまだ海外株式や海外株式先物に連れ安するなど、世界各国でインフレに伴う景気後退懸念が深刻化する中、不安定な側面を残しています。その為、個別の要因で好パフォーマンスが期待できそうな投資テーマや銘柄に投資をするのも1つの手であると考えます。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、「猛暑」や「熱中症(への対応)」などをキーワードに、銘柄を選んでみました。2022年6月29日(水)付の「新興株ウィークリー」では、関連する中小型銘柄をご紹介しましたが、今回はプライム銘柄が対象です。他の多くの投資情報やレポート、雑誌等ですでに紹介されていない、意外な銘柄の抽出に心がけてみました。
意外な「猛暑」関連銘柄とは!?
気象庁は2022年6月27日(月)、関東甲信や東海などで梅雨明けしたとみられると発表しました。2022年6月28日(火)も近畿、中国、四国、九州北部、北陸と広い範囲で梅雨明けしたとみられる発表がありました。6月の梅雨明けは観測史上最速とみられます。
現在「ラニーニャ現象」が発生し、その影響で太平洋西部の水温は高くなりやすくなっています。偏西風の影響もあり、太平洋高気圧が歴史的な強さとなり、梅雨が早期に明けたことで、暑さの厳しい「猛暑」が到来する可能性が強まっています。一方で、猛暑による熱中症の増加や、渇水被害、台風の増加も心配されます。特に台風は強大化する可能性もあるので、今から防災対策を心がけたいところです。
2022年6月29日(水)付の「新興株ウィークリー」では、「猛暑」や「熱中症(への対応)」等をキーワードに、関連する中小型銘柄をご紹介しました。
今回の「日本株投資戦略」では、以下の条件をもとに、掲載銘柄を選んでみました。
(1)東証プライム市場に上場
(2)各種報道等、または「猛暑」や「熱中症」、「台風」、「サマーストック」等のキーワードで検索し、導き出される
(3)「継続企業の前提」に疑義が生じていない
(4)今期会社予想営業損益が黒字
図表の銘柄は、これらの条件をすべて満たしており、銘柄コード順に掲載しています。
ちなみに、これらの銘柄を一瞥し、違和感を覚えた投資家も多いと思います。「猛暑」や「熱中症」、「サマーストック」といえば、たとえば
・クーラー関連株・・・ダイキン工業(6367)、富士通ゼネラル(6755)
・ビール関連株・・・・サッポロホールディングス(2501)、アサヒグループホールディングス(2502)、キリンホールディングス(2503)
・アイスクリーム・飲料・・・・コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(2579)、B-Rサーティワン アイスクリーム(2268)、伊藤園(2593)
上記のような銘柄群が「王道」であるかもしれません。しかし、これらの銘柄はすでに他の多くの投資情報やレポート、雑誌等で紹介されている可能性が大きく、すでに株価が上昇している銘柄もあるとみられます。したがって、今回これらの銘柄は除きました。
今回の「日本株投資戦略」では、まだ市場の織り込みが進んでいない、意外な銘柄をご紹介すべく、銘柄を選んでみました。
単純に「猛暑」や「サマーストック」の前向きな側面だけ捉えるのでなく、「熱中症」、「台風」等の注意すべき要因もチェックし、それに対応できる銘柄も抽出してみました。
もちろん、これらの銘柄についても「一例」に過ぎませんが、市場での織り込みが徐々に進み、今後株価の上昇が期待できる銘柄一覧となれば、幸甚であると考えます。
抽出銘柄のご紹介
こちらでは、図表でご紹介した銘柄の一部について、詳細をご紹介します。
小林製薬(4967)
■ニッチ分野のユニークな製品の開発に定評
当社は医薬品、医薬部外品、芳香剤、衛生材料などの家庭用品を製造・販売しています。トイレタンククリーナの「ブルーレット」、額用冷却シートの「熱さまシート」など、ニッチ分野のユニークな製品を提供しており、消費者によく知られた企業です。
前期(2021年12月期)の売上高は1,552億円(前期比3.1%増)で、売上構成比は国内事業(インバウンド消費を含む)が74.7%、米国・中国等へ販売する国際事業が19.2%、通販事業が5.8%となりました。
国内事業の売上高は、2020年に新型コロナの感染拡大で除菌・衛生用品の需要が急増した反動や、インバウンド需要の減少が響き減少しました。一方、海外経済の回復で国際需要が増えた為、全体としては売上増(前期比3.1%増)になりました。
2021年12月期は営業利益260億円(前期比0.5%増)、純利益197億円(同2.7%増)と増収増益をキープしました。純利益ベースでは24期連続増益を、配当は23期連続を達成しました。
■猛暑、インバウンド消費回復も追い風に?
前述したように、当社の特徴は「小さな池の大きな魚」を目指すニッチ戦略で、「あったらいいな」と思われる、消費者の悩みや困り事を解決する製品を提供しているところです。新製品の企画案も全社員から毎月募っています。
しかし、連結売上高の74.7%(前期ベース)を占める国内事業は人口減少で大きな成長が難しく、課題は新たな定番商品をいかにつくり続けるかにあると言えます。近年、下落傾向の新製品寄与率を上げることも重要とみられます。
2022年12月期は売上高1,620億円(前期比4.3%増)、営業利益270億円(同3.6%増)が会社計画ですが、第1四半期の営業利益は前年同期比3.3%増とまずまずの出足となりました。
猛暑で、主力商品の一角である「熱さまシート」の売上増が期待されるところです。海外からの観光客がようやく入国可能となり、インバウンド需要の回復にも期待したいところです。
▽週足チャート(過去3年)
*データは2022年6月30日(週足) 11:08 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽連結業績(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
東京都競馬(9672)
■インターネット投票で売上拡大続く。10期連続増収&営業増益!
当社は、「大井競馬場」や「伊勢崎オートレース場」等の、地方競馬やオートレースの公営競技施設を所有しており、それらを地方公共団体に賃貸する独自事業を中心とした会社です。
勝馬投票券(=馬券)の4.5%を原則、賃貸料として受け取っています。
地方競馬は1990年代以降、業績悪化で冬の時代が長く続きました。 業績悪化の救世主となったのが「SPAT4」という、地方競馬インターネット投票システムです。SPAT4導入以降、売上高を順調に伸ばし、2021年12月期まで、10期連続で増収と営業増益を達成しています。
コロナ禍でインターネット投票 システムが売上高の伸びを加速させたことや、規制強化が進むパチスロ等から顧客の流入が見込まれることもあり、今後の成長性も期待されています。
■猛暑で東京サマーランドの需要大か
(コロナによる来園者数制限あり)
インターネット投票システムによって好業績を達成する中、更なる株価上昇の要因として、期待されるのが唯一の赤字セグメントである遊園地事業の業績回復です。
東京を代表するプール施設、「東京サマーランド」も当社が運営している、遊園地事業の一角です。
猛暑日が続くことで、プール需要の伸びも期待されます。
重要な注意点としては、新型コロナウイルスの影響で事前予約が必須で、来園者数の制限がなされていることです。したがって、急激な来園者数の増加は難しいかもしれませんが、安定的な来園者数の確保にはつながりそうです。
2021年12月期の東京サマーランド及び各施設の入場人員は52万人(前期比16.5%増)、遊園地事業の売上 高は17.5億円(同29.8%増)となりました。 コロナによる行動規制の緩和と共に赤字も徐々に改善傾向にあります。セグメント損失は4.2億円であり、前期は9.8億円の損失であったことからすると、大きく赤字幅を縮小しています。
東京サマーランドにおける、外部との提携などによる新たな再建策は、2022年3月7日付・企業調査部のレポート「SPAT4 の成長は不変、株価の割安感強い」でカタリストとして触れられています。 当社についての詳細を知りたい方はぜひこちらのレポートをご一読していただくことを推奨します。
▽週足チャート(過去3年)
*データは2022年6月30日(週足) 13:00 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽連結業績(百万円)
*当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。