この記事は2022年7月26日(火)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田 アンダースロー(日本経済の新しい見方)『財政再建優先主義は自民党の中で完全に支持を失ったようだ』」を一部編集し、転載したものです。


財政再建
(画像=PIXTA)

目次

  1. 要旨
  2. 2023年度の政府予算編成の骨太の方針
  3. マーケットでは、未だにキシダノミクスが理解されていない
  4. 自民党の中では、キシダノミクスへの理解が深くなってきている
  5. アンケートの結果
  6. 骨太の方針と新しい資本主義の実行計画に沿った財政運営がなされるのかに注目

要旨

  • 今回の参議院選挙の自民党の当選者の中で、財政再建を優先する議員は、財務省と関係が深いとみられる2人しかいなかった。ほとんどの議員(回答者の93%)が財政再建ではなく、景気を支えるための財政出動を優先すべきと考えているようだ。財政再建優先主義は、自民党の中で、完全に支持を失ったようだ。岸田政権が、積極財政とアベノミクスが融合されたキシダノミクスを推進していく方針を示しているから当然の結果かもしれない。

  • 骨太の方針では、重要な政策を妨げるものではないが、これまでの財政再建計画はまだ生きているとされている。これまでの財政再建計画に基づいて、概算要求に概算要求に厳しいシーリング、または新たな政策を実施する場合にはこれまでの支出を削るような条件を設ける、重要な政策の選択肢を狭めるような動きとなれば、自民党の中で、骨太の方針と新しい資本主義の実行計画に反するものだと、強い反発が起こる可能性がある。これから、自民党の政務調査会を中心に議論が進むことになるが、骨太の方針と新しい資本主義の実行計画に沿った財政運営がなされるのかに注目だ。

2023年度の政府予算編成の骨太の方針

2023年度の政府予算編成の骨太の方針では、2つの明確な方向性が示された。

1つめは、プライマリーバランス黒字化目標の年限が明示されず、検証中の扱いで、マクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならないとされ、事実上無効化されたことだ。

2つめは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組み、即ちアベノミクスの形を堅持することだ。

新しい資本主義の実行計画でも、アベノミクスの堅持が明言されている。実行計画の成長投資を中心とする積極財政とアベノミクスの融合は新しい資本主義型アベノミクス(キシダノミクス)として推進されていくことになる。

マーケットでは、未だにキシダノミクスが理解されていない

マーケットでは、未だにキシダノミクスが理解されていないようだ。

岸田首相は財政再建派だから、参議院選挙後の国政選挙のない3年間で緊縮財政に転じるだとか、アベノミクスの大胆な金融緩和の継続に懐疑的だから、金融政策の正常化に向けて圧力をかけるだとか、骨太の方針と新しい資本主義の実行計画に反するような見方が多い。

積極財政とアベノミクスなしでは、新しい資本主義は稼働できず、岸田内閣の求心力が弱体化するリスクになることは認識する必要がある。

アベノミクスから離れることも、アベノミクスを主導していた勢力(安倍派=総理、菅グループ=官房長官、二階派=自民党幹事長、部分的に麻生派=副総理)を自民党の中での非主流派であるというレッテルを貼ることになる。

安定的な政権運営の逆風となるリスクを岸田首相は犯さないだろう。

自民党の中では、キシダノミクスへの理解が深くなってきている

自民党の中では、キシダノミクスへの理解が深くなってきている。

読売新聞は、今回の参議院選挙の候補者にアンケートを行っている。「政府の経済政策について、財政出動と財政再建のどちらを優先すべきと考えますか」という質問があった。

回答の選択肢は、1.財政出動を優先し、景気を支えるべきだ、2.どちらかといえば財政出動を優先し、景気を支えるべきだ、3.どちらかといえば財政再建を優先し、国の借金を減らすべきだ、4.財政再建を優先し、国の借金を減らすべきだ、の4つであった。

参議院選挙の自民党の当選者の63名の内、58名がアンケートに回答していた。

アンケートの結果

アンケートの結果では、自民党の中で、キシダノミクスへの理解が深くなってきていることが分かった。

財政出動を優先(1または2)と回答した議員は54名となった。ほとんどの議員(回答者の93%)が財政再建ではなく、景気を支えるための財政出動を優先すべきと考えているようだ。2名がこの質問に無回答となっている。そして、財政再建を優先(3または4)と回答した議員は、わずかに2名しかいなかった。

財政再建を優先する議員は、自民党税制調査会長の宮沢洋一議員と元財務副大臣の大家敏志議員の、財務省と関係が深いとみられる議員のみであった。財政再建優先主義は、自民党の中で、完全に支持を失ったようだ。

岸田政権が、積極財政とアベノミクスが融合されたキシダノミクスを推進していく方針を示しているから当然の結果かもしれない。

▽自民党の参議院選挙当選者の財政政策の考え方

自民党の参議院選挙当選者の財政政策の考え方
(画像=出所:読売新聞、作成:岡三証券)

骨太の方針と新しい資本主義の実行計画に沿った財政運営がなされるのかに注目

2022年8月に政府の2023年度予算の概算要求が行われる。骨太の方針では、この方針と新しい資本主義の実行計画に示されている重要な政策は、これまでの財政再建計画に妨げられずに、予算が付けられることになっている。

防衛費の増額に加え、新しい資本主義の実行計画で掲げた「人への投資」、「科学技術」、「スタートアップ」、「脱炭素・デジタル化」の4分野に関わる概算要求がどれだけ拡大するのかが注目される。

一方、骨太の方針では、重要な政策を妨げるものではないが、これまでの財政再建計画はまだ生きているとされている。

財政再建計画に基づいて、概算要求に厳しいシーリング、または新たな政策を実施する場合にはこれまでの支出を削るような条件を設ける、重要な政策の選択肢を狭めるような動きとなれば、自民党の中で、骨太の方針と新しい資本主義の実行計画に反するものだと、強い反発が起こる可能性がある。

これから、自民党の政務調査会を中心に議論が進むことになるが、骨太の方針と新しい資本主義の実行計画に沿った財政運営がなされるのかに注目だ。

会田 卓司
岡三証券 チーフエコノミスト
田 未来
岡三証券 エコノミスト
松本 賢
岡三証券 エコノミスト

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