この記事は2022年7月29日にSBI証券で公開されたFOMC通過!金利上昇局面で活躍期待の銘柄は?を一部編集し、転載したものです。

金利上昇局面で活躍期待の銘柄
(画像=PIXTA)

目次

  1. FOMC通過!金利上昇局面で活躍期待の銘柄は?
  2. 抽出銘柄のご紹介
    1. ネクソン(3659)~キャッシュリッチな世界的ゲーム会社
    2. ファナック(6954)~高シェアと高収益体質に変化なし?

FOMC通過!金利上昇局面で活躍期待の銘柄は?

米国では、現地時間2022年7月27日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表され、政策金利が0.75%引き上げられることになりました。2022年6月の会合に続き0.75%という大幅な利上げとなりました。

これによって、米政策金利は2.5%という2018年12月~2019年7月以来の高水準となりました。なお、年内に米政策金利は3.25~3.50%程度まで上昇するというのが、現時点での市場の中心的な考え方になっています。政策金利が3.0%台となれば、2008年3月以来ということになります。

米政策金利の水準が上がることで、株式市場で物色される銘柄にも変化が出てきそうです。日本では、日銀による緩和的金融政策が継続していますが、海外からの金利引き上げ圧力が強まることは避けられないでしょう。

そこで、今回の「日本株投資戦略」では、高金利環境下でも、安定した経営の継続が期待でき、しかも稼ぐ力が強いとみられる活躍期待銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証プライム市場上場
(2)時価総額1,000億円超
(3)長短借入金がゼロ
(4)流動比率(資産/流動負債)が200%超
(5)現預金200億円超
(6)予想EPSを公表するアナリストが2名以上
(7)今期・来期とも、市場予想(Bloombergコンセンサス)営業利益が増益
(8)予想ROE(市場予想純利益/前期純資産)が10%超
(9)市場予想今期PERが30倍未満

図表の銘柄は、上記の条件をすべて満たし、(4)の流動比率の高い順に並べています。

流動比率とは、換金しやすい資産が短期で返済義務のある債務をどの程度上回っているかを示す指標です。
この数字が高ければ高いほど、財務が安定的といえます。

金利上昇局面で活躍期待の銘柄は? 金利上昇局面で活躍期待の銘柄は?
(画像=SBI証券)

抽出銘柄のご紹介

こちらでは、図表でご紹介した銘柄の一部について、詳細をご紹介します。

ネクソン(3659)~キャッシュリッチな世界的ゲーム会社

■韓国発ゲーム会社。代表作は「アラド戦記」、「メイプルストーリー」

韓国で創業され、日本に本社を置くゲーム会社大手です。売上高の約97%が海外であるため、日本ではあまり著名ではないかもしれませんが、時価総額(2022年7月28日時点)はバンダイナムコ(7832)を上回り、日経平均採用銘柄のひとつでもあります。

従来のゲームビジネスというと、ゲーム機本体やソフト販売等の切り売り型ビジネスをイメージすることが多いかと思います。それに対して当社は、主にオンラインゲームに特化しています。ユーザーに入口無料の仮想世界体験をゲームコンテンツとして提供し、いわゆる"課金アイテム"から収益を得るビジネスモデルとなっています。よって、切り売り型ゲームビジネスと異なり、より持続的な収益構造を有しています。

代表的な作品には、『アラド戦記』と『メイプルストーリー』が挙げられます。

『アラド戦記』は全世界登録ユーザー数8億5,000万人超、累計収益は200億ドル超で、この額は「スターウォーズ」及び「ハリーポッター」シリーズを数十億ドル上回る程であり、娯楽コンテンツとしての規模の大きさを物語っています。

日本でも有名な『メイプルストーリー』は、全世界における登録ユーザー数が1億8000万人超・当社売上高の過半数(2022年12月期1Q時点)を占める韓国においての登録ユーザー数は人口の約45%相当と国民的ゲームとなっています。

両コンテンツは共に2000年代にリリースされ、現在に至るまでプレイされているロングランタイトルになっています。

事業成長の要として期待されているのが、モバイルタイトル(スマートフォン端末でのゲーム)です。

当社は高度な仮想世界体験を売りにしているため、機器の性能上、プラットフォーム別構成比はPCが約4分の3で、残りがモバイル(2022年12月期1Q時点)となっています。

ただ、近年のモバイル端末の高性能化に伴い、当社ゲームコンテンツがスマートフォンでも展開可能となりました。前四半期(2022年12月期1Q)決算発表において、2022年度上半期モバイル事業の営業利益は韓国『アラド戦記モバイル』がけん引する形で107億円の増収を見込んでいます。モバイルで獲得可能な市場規模をPCの10倍と想定していることも示しており、今後の成長拡大の鍵となるでしょう。

なお、上半期となる2022年12月期2Q(4~6月期・2022年8月9日発表予定)では、市場予想ベースで前年同期比55%の増収、74%の営業増益を見込んでいます。

■流動比率は任天堂以上。キャッシュリッチ企業で円安も恩恵期待

ゲーム事業はパンデミックによる行動規制が業績拡大に寄与し、新型コロナ感染症拡大以降、株価は急上昇していました。

その後、かつて売上割合首位であった中国でのゲーム規制強化による減益や、ビットコイン急落等を材料に売られ下落していました。ウクライナでの戦争勃発後は、ゲーム事業が地政学リスク悪化の影響を受けづらいことや原油価格の急騰でオイルマネーと思わしき資金が流入し、株価は反発基調でした。

ビットコインが近年の高値圏に位置していた2021年4月、当社は1億ドル(当時の為替レートで約111億円)相当を購入し、話題となりました。その為か近頃でも度々ビットコインに連れ安する値動きが見受けられます。

しかしながら、当社はキャッシュリッチ企業の一角で、現金及び現金同等物は第1四半期末時点で3,760億円、流動資産合計は6,435億円であり、ビットコインの割合は現金及び現金同等物の数%以下にとどまっている計算です。さらに、流動比率の高さは任天堂をも上回る水準です。

2022年3月期末ベースで比較しても任天堂の393.2%に対し、同社は1,113.4%と圧倒的高さを誇ります。

2022年12月期2Qの想定為替レートは1ドル=126.58円、100ウォン=10.22円、1人民元=19.6円としています。当社は上記レートに対し、韓国ウォンと人民元が米国ドルと連動して推移する傾向を前提として、1ドル1円、円安(円高)方向に変動した場合2Q期間は売上収益が約6.6億円、営業利益は約2.2億円増加(減少)するものとしています。

特に、売上の53%を占める韓国(2022年12月期1Q時点)では、韓国銀行が3回連続で利上げを行い直近決算発表予定(2022年8月9日予定)の期中である2022年4~6月期に急速な円安が進んでいました。また、人民元や米ドルに関しても2022年4~6月期で円安が進行しており、こちらも追い風となりそうです。

▽週足チャート(過去3年)

ネクソン(3659)
(画像=SBI証券)

データは2022年7月29日(週足) 9:30 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

▽連結業績(百万円)

ネクソン(3659)
(画像=SBI証券)

*当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

ファナック(6954)~高シェアと高収益体質に変化なし?

■FA(生産工程の自動化)、ロボットなどで高シェア~生産・研究開発は国内集約

当社は富士通(6702)内に設置(1955年)された、制御装置のプロジェクトチームを源流とし、日本の民間企業としては初めて、NC(数値制御装置)とサーボモータ(位置や速度を制御するモータ)の開発に成功(1956年)しました。

1972年に富士通からスピンオフする形で「富士通ファナック」として設立され、2009年に富士通との資本関係を解消しています。

部門別売上高構成比(2022年3月期)は、(1)FA(生産工程の自動化)が30.9%、(2)ロボットが36.6%、(3)ロボマシンが19.7%、(4)サービスが12.8%等となっています。

事業領域を「工場の自動化」に絞ることにより、主力製品は世界シェア首位を獲得しています。(1)の台数シェア(2019年)は、世界4~5割、国内は6~7割と高く、(2)についても世界シェア(2020年、台数)は23%と首位で、特に米国では推定61%のシェアを有しています。

高シェアを背景に利益率は高く、売上高営業利益率は2015/3期の40.8%から下がったとはいえ、2022年3月期も25.0%と高水準を維持し、市場予想ROEも12.4%となっています。

地域別売上高(同期)で日本は15.2%に過ぎず、米州20.4%、欧州16.5%、中国31.1%、アジア(中国を除く)16.1%と、広く世界に販売されています。ただ、本社、研究所、主力工場、研修施設等はすべて国内(山梨県南都留郡忍野村)に集約されているのが特徴です。

■2023年3月期の予想営業利益は小幅上方修正

2022年7月27日(水)発表の決算発表では、2023年3月期・第1四半期の売上高が2,115億円(前年同期比14.2%増)、営業利益497億円(同4.4%減)、経常利益595億円(同2.7%増)となりました。

売上高としては過去最高で、欧米の省人化投資需要や、EV市場拡大を背景とするリチウムイオン電池組立て工場の自動化等の需要を取り込みました。中国は、ロックダウンの影響等で供給は減ったものの、需要の強さに変化はない模様です。原材料費や物流費の高騰で営業減益にはなりましたが、中国合弁工場の持ち分法投資損益が計上され、経常増益をキープしました。

2023年3月期・通期の営業利益は1,973億円→1,984億円と小幅に上方修正されました。

決算発表翌日(2022年7月28日)の株価は堅調に推移しました。省力化投資が堅調で、業績の先行指標となる四半期受注が前年同期比4%増と伸びたこと、FA関連の競合他社に比べ、中国ロックダウンの影響が小さいとみられることが好感されているようです。チャート的には底放れの様相を呈しており、株価上昇に期待したいところです。

なお、当社についてはSBI証券企業調査部から2022年7月5日付でレポートが作成されています。カバレッジ開始に伴い詳細なレポートになっていますので、ご参考頂ければ幸いです。

2022年7月5日付 『高シェアと高収益体質は不変も、業績見通しは“黄色信号”』 投資判断「中立」 目標株価23,000円

▽週足チャート(過去3年)

ファナック(6954)
(画像=SBI証券)

データは2022年7月29日(週足) 9:30 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

▽連結業績(百万円)

ファナック(6954)
(画像=SBI証券)

*当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝られます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数