この記事は2022年10月3日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「世界各国の市場動向・金融政策(2022年9月)-9月も全面的なドル高・株安」を一部編集し、転載したものです。

世界各国の市場動向・金融政策
(画像=akiyoko/stock.adobe.com)

目次

  1. 概要:9月は全面的なドル高、株安
  2. ロシアの金融市場と商品価格
  3. 株価(MSCI)・為替レートの動き
  4. 金融政策:利上げサイクルの終わりが視野に入る新興国も

概要:9月は全面的なドル高、株安

22年9月の各国(*1)の株価・為替の動きは以下の通り。

【株価・対ドル為替レートの動き】
・・9月は世界的に金融引き締めが進む中、多くの国でドル高・株安が進んだ。通貨や株価の下落幅も大幅だった国が多かった(図表1)。

世界各国の市場動向・金融政策
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*1:本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する47か国・地域について確認する。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。本文中の先進市場と新興市場の区分についてはMSCIの分類に基づく。


ロシアの金融市場と商品価格

まず、ロシアのウクライナ侵攻後に大きく変動したロシアの金融市場や商品価格について概観しておきたい(*2)。

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9月のルーブル相場は、8月に続き1ドル60ルーブル前後での安定した推移が続いている。一方、株価指数は8月以降には持ち直しの動きが続いていたが、20日以降に大きく下落した。20日はロシア・ウクライナ戦争に関連して、脱走や徴兵忌避などの違反に対する罰則を強化する法案が承認されており、これが株安の材料となった。また、翌21日にはプーチン大統領が部分的な動員令に署名しており、株価はさらに下落している(図表4)。長期金利も同時期には10%を超える上昇を見せ、市場の動きが大きくなっている(図表5)。

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次にロシアが主要な供給源となっている商品の動向を追うと、金属(アルミ、ニッケル)価格はやや上下に動く局面もあったが総じて横ばい推移となった(図表6)。一方、農作物価格はロシア・ウクライナ戦争の緊迫化により供給が混乱するとの思惑もあり、特に小麦で上昇傾向が強くなっている(*3)(図表7)。

9月のエネルギー価格(石炭、原油、天然ガス)は、石炭が横ばい圏で推移、原油がゆるやかに下落、欧州の天然ガス価格が大きく下落した(図表8)。

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天然ガス価格の下落は欧州のガス在庫蓄積の進展や、EUによる価格安定策への期待などが背景にあるものと見られる。ただし、ガス価格水準は依然としてかなり高く、9月下旬にはノルドストリームの損傷が発見され(*4)、また10月1日にはオーストラリア経由のイタリア向けガス供給が止まるなど、供給不安も引き続き高まっている(*5)。


*2:ロシアのウクライナ侵攻と経済・金融制裁を受けて、3月にロシアはMSCI ACWIから除外されているが、世界の金融市場に大きな影響を及ぼしたその後の状況を確認するため、本節で概観する。
*3:プーチン大統領は9月7日にウクライナからの穀物輸出先を制限するようにトルコのエルドアン大統領と協議旨の発言をしている。例えば、Bloomberg(日本語版)「小麦先物が一時7%近く上昇、ウクライナ産穀物巡るプーチン氏発言で」2022年9月8日(22年10月3日アクセス)。トルコは黒海経由でのウクライナ産穀物輸出の合意に関してウクライナとロシアを仲介していた。なお、この合意の有効期限は120日となっている。
*4:例えば、日本経済新聞「ノルドストリーム停止長期化も 23年から需給逼迫の懸念」2022年9月28日(22年10月3日アクセス)
*5:例えば、日本経済新聞「ガスプロム、イタリアへのガス供給停止」2022年10月2日(22年10月3日アクセス)


株価(MSCI)・為替レートの動き

MSCI ACWIの月間騰落率は、全体では前月比▲9.7%、先進国が前月比▲9.5%、新興国が前月比▲11.9%となり大きく下落した。(前掲図表2)。

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国別の株価の動きを見ると、9月は対象国の47か国中、上昇した国はインドネシアとブラジルの2か国のみだった。一方、残りの45か国は前月比で下落(図表9)、先進国、新興国のいずれでも大幅に下落した国が多い(図表10)。

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株価については、米国での金融引き締め積極化観測が根強いことに加え、英国では23日にトラス政権が大規模な財政緩和策を発表したことで長期金利への上昇圧力が強まり、金融市場のボラティリティが大きく上昇した(これにより英国では為替の売り圧力も強まっている)。

通貨の騰落率を見ると、ドルの27カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Narrow)が前月比▲4.1%、60カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Broad)が前月比▲3.4%となり8月に引き続きドル高が大幅に進む形となった6(前掲図表3)。

MSCI ACWIの構成通貨別に見ると、36通貨中対ドルで上昇(ドル安)したのは4通貨(ただし、ペッグ通貨含めていずれの通貨もほぼ横ばいで推移)、下落(ドル高)したのは32通貨となった(図表11)。

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為替相場も8月に引き続きFRBのタカ派姿勢により積極的な利上げが続くとの見方からドルが全面高となっている(図表12)。なお、日本では急激に円安が進んだことを受けて22日に約24年ぶり2.8兆円規模の円買い・ドル売り介入を実施した。

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*6:ただし、名目実効為替レートは8月29日時点の前月末比で算出。


金融政策:利上げサイクルの終わりが視野に入る新興国も

最後に、主要地域の金融政策を見ていく(図表13)。

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9月はG7を含め、多くの国で金融政策を決定する会合が開かれた。

G7の国では、日本銀行が現行政策の維持(資金繰り支援特別プログラムは延長)を決定する一方で、米国、英国、ユーロ圏、カナダは利上げに踏み切っている。このうちFRB、カナダ銀行、ECBは0.75%ポイントの利上げ、イングランド銀行は0.50%の利上げとなった。なお、イングランド銀行は金利の急上昇に対応するため、28日に国債の緊急購入することを決定したほか(10月14日まで)、予定していた保有国債売却も10月末まで延期した。

G7以外の国でも多くの国で利上げを決定している国が多いが、チェコが9会合連続利上げの後、前回に続き2会合連続で金利据え置きを決定したほか、ブラジルも今回の会合で据え置きを決めている(ブラジルはこれまで12会合連続で利上げ)。これまで積極利上げをしてきた新興国の一部では利上げサイクルの終了が視野に入っていると見られる。

また、9月はロシアとトルコで利下げが決定されている。ロシアは6会合連続、トルコは2会合連続での利下げとなる。ロシアはウクライナ侵攻後の経済・金融制裁とインフレ圧力の高まりに対抗するために20%まで政策金利を引き上げてきたが、段階的に7.5%まで引き下げたことを受けて、中銀は利下げサイクルの終了を示唆している。トルコは消費者物価上昇率が80.2%(8月)とかなり高いが、エルドアン大統領の意向を受けた低金利政策が講じられている状況にある。


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高山 武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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