この記事は2022年10月3日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「宿泊旅行統計調査2022年8月~8月は日本人延べ宿泊者数の2019年同月比のマイナス幅が6ヵ月ぶりに拡大」を一部編集し、転載したものです。

宿泊旅行統計調査
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目次

  1. 日本人延べ宿泊者数の2019年同月比のマイナス幅が拡大
  2. 第7波の宿泊旅行への影響は限定的だが、回復はまだ遠い

日本人延べ宿泊者数の2019年同月比のマイナス幅が拡大

観光庁が9月30日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2022年8月の延べ宿泊者数は4,672万人泊となった。前年同月比は49.3%となったが、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、▲26.1(7月:同▲23.1%)と6ヵ月ぶりにマイナス幅が拡大した。

2022年8月の日本人延べ宿泊者数は4,595万人泊となり、2019年同月比は▲14.5%(7月:同▲4.5%)とマイナス幅が拡大した。

日本人延べ宿泊者数の2019年同月比は、3月21日にまん延防止等重点措置が全面解除されてから、マイナス幅の縮小が続いていたが、8月には6ヵ月ぶりにマイナス幅が拡大した。8月にはお盆休みがあり、日本人の宿泊旅行が活発になる時期だが、7月から新型コロナウイルスの感染が急拡大したために、宿泊旅行を自粛した日本人が多かったとみられる。

2022年8月の外国人延べ宿泊者数は77万人泊となった。2019年同月比は、2020年4月以降、▲90%台で推移を続けており、8月は▲91.9%(7月:同▲93.6%)となった。

宿泊旅行統計調
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2022年8月の客室稼働率は全体で50.1%となった。2019年同月差では▲19.3%(7月:同▲15.5%)と2ヵ月連続でマイナス幅が拡大した。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は40.6%、2019年同月差:▲9.8%(7月:同▲5.6%)、リゾートホテルは54.9%、2019年同月差:▲16.0%(7月:同▲13.3%)、ビジネスホテルは58.0%、2019年同月差:▲21.6%(7月:同▲18.1%)、シティホテルは49.8%、2019年同月差:▲33.2%(7月:同▲31.9%)、簡易宿所は27.7%、2019年同月差:▲17.3%(7月:同▲13.5%)であった。2019年同月差では、全てのタイプの宿泊施設ではマイナス幅は拡大している。

第7波の宿泊旅行への影響は限定的だが、回復はまだ遠い

7月から新型コロナウイルスの感染が急拡大したことで、8月の日本人延べ宿泊者数は前年同月比では49.8%となったものの、2019年比は6ヵ月ぶりにマイナス幅が拡大し、客室稼働率の2019年同月差は2ヵ月連続でマイナス幅が拡大した。第7波では、特別な行動制限が課されなかったものの、感染拡大を受けて、宿泊旅行を自粛した人が多かったことが予想される。

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観光庁は9月26日に全国旅行支援を実施することを発表した。対象期間は10月11日から12月下旬までである。また、現在実施中の県民割支援の実施期間を10月10日宿泊分(10月11日チェックアウト分)まで延長することも合わせて発表された。県民割は地域ブロック内の旅行に限定した支援だったが、全国旅行支援は対象範囲が全国に拡大される。

これにより、今まで以上に都道府県を超えた宿泊旅行が促される。さらに「平日にもう一泊」キャンペーンの開始も同日に発表された。これは全国旅行支援の旅行需要を、平日にも分散させる狙いがあり、平日向けの旅行商品を製造・展開し、平日旅行の普及啓発に取り組むものである。実施期間は令和4年の10月11日から令和5年度末までを予定している。

宿泊旅行統計調
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国内の宿泊旅行の推進だけでなく、海外からの新規入国条件も緩和される。9月26日に政府は水際対策に係る新たな措置を発表した。10月11日以降、現在の制度が3点変更される。

1点目はこれまで外国人の新規入国は、日本にいる受け入れ責任者の事前申請が必要かつ、観光客については、個人旅行は認められていなかったが、事前申請は必要なくなり、個人旅行も認められるようになったことだ。

2点目は入国者数の上限の撤廃である。現在は一日あたりの入国者数の上限が5万人となっているが、10月11日以降は、上限がなくなる。

3点目は短期滞在のビザ免除再開である。ただし、有効なワクチン接種証明書がなければ、出国前検査での陰性証明は引き続き必要である。これらの条件緩和によって、外国人旅行者の増加が見込まれる。

ここにきてようやく国内旅行者への支援、海外旅行者への訪日条件の緩和が進められることが決定した。10月以降、延べ宿泊者数の増加、客室稼働率の上昇が見込まれる。また、観光業にとっては現在の円安は追い風になるため、うまく海外旅行者の需要を取り込むができれば、外国人宿泊者数は回復していくだろう。


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安田拓斗(やすだ たくと)
ニッセイ基礎研究所経済研究部 研究員

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